短歌連作十首『Heliotrope』

碧乃そら

『Heliotrope』


たおやかなしらうおの指が前髪にふれる刹那、愛がうまれる


朝焼けの海にたたずむ心地して紫立ちたるに星の影


うつくしきその手で目隠しされたならいばらの呪いさえも怖くない


ひとつ、ふたつ、大事なものが増えていく ミルフィーユパイの層を重ねる


恋いわたるひとを抱き寄せればトレゾァのミドルノートがふわり咲き香る


溺れている自覚のないままくちづけを深くしてゆく濃紫こむらさきの夜


ラズベリーソースをたっぷりかけましょう 溶けて、絡めて、まじわりあって、


クリームを舐め取るように匂やかに 穢すための白なのだと知る


しんしんと降りつむ夜に撫でているしなやかにつよき天使の脊骨せぼね


余韻めく朝にココアを渡す手がふれて陽のひかり、あなたが愛しい

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短歌連作十首『Heliotrope』 碧乃そら @hane_ao22

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