人殺しの夏
樹亀
一人称
しくじった。殺すんじゃなかった。
今は夏場じゃないか。夏は気候のせいで生ゴミが腐りやすい。
もう既に臭い気がする。……いや、それはコイツの体臭か。
改めて嗅ぐと、コイツ加齢臭すごいな。なんか、こう……形容し難い不快な臭いがする。
これはあれか。死ぬ前にたっぷりかいてた汗も原因か?
太ってるからなー、コイツ。
よくもまぁそんなにでっぷりと脂肪の衣を携えたもんだよ。
お前には豚みてぇに食ってくれるヤツすら居ねぇのにな。
あぁ、そうだ! 殺す前に塩酸でもかけて溶かしといた方が良かったか?
消化みたいに。ふはは、笑える。
体はこの
うっわ、マジか。ぴったりじゃん。
しくじったー。もー、まただよ。
あ、そうだ。塩酸ってただかけるよりもさ、ホントの胃液みたいにプールにして飛び込ませたらさ。
塩酸でどろどろに溶かされて、人としての形を無くして、でもホントの体内じゃないから
うわー、まだまだ改善点が思い浮かんじまう。後悔しまくりじゃん俺。だるー。
いやー、しっかし、コイツの顔マジでムカつくなー。
死に際のくせして薄ら笑いなんて浮かべやがってよー。
汗で顔面ガッビガビじゃん。ダッセー。
あとはさー。肉で目も鼻も埋もれてんだわ。ホント痩せる努力しろよー。
その吊るされた姿見てるとさ、マジでボンレスハムみてぇだぜ?
あ、それともケバブに使うあの串刺し肉みたいなやつか?
うわ、それもいいな。
ケツからぶっ刺して全身の肉を削ぎ落としまくってさー。
うっわ、改めていいなそれ。
痩せれるし、一石二鳥ってやつじゃん。よかったね。
ってもー、マジかよー。もう全部終わった後だってー。
せめてもうちょい前の肝心な時に働いてくれよ、俺の脳みそー。ダルいってー。
こんな後悔ばっかじゃ、コイツ死んでも死にきらねぇじゃん。潔く成仏しろって。
ま、でも殺してよかったっちゃよかったわなー。
俺、やっぱコイツのこと嫌いだわ。改めて。
ま、キショく生まれた罰ってやつだな。ざまぁねぇ。
ふはは、笑える。マジで。
最っ高の最期だな。めっちゃみっともねぇよ、お前。
あ、そういえばそういえば。コイツに来世はあるのかね?
あったとしたら、なんとかイケメンにはしてやって欲しいね。流石に可哀想だわ。頼むぜ、神様さんよぉ。
せめて、せめてイケメンだったなら、俺、お前のこと嫌いにはならなかったんじゃねぇかな。
あ、でも性格終わってんのか。じゃあダメだな。
ふぁっきんテメェ。ここでキッチリくたばっとけな。
あー、でもなぁ。……あれ、なんだっけ。んぁー、俺、疲れてるわ。頭、回んね──
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