七夕の奇跡

暗黒神ゼブラ

七夕の奇跡

私、十六夜叶奈(いざよいかな)には今日やらねばならぬことがある。

それは……幼馴染の夕凪七香(ゆうなぎななか)に告白をすることだ。

私の両親が七夕の時に結婚したから……その私は七夕の奇跡なんてものがあるんじゃないか……みたいなことを考えたわけですよ。

本当は分かってるんですよ、そんなものないって……まあいいじゃないですか一回ぐらい信じたってバチが当たるわけじゃないし……はあ、こう言い聞かせないとどうして私は動けないんだろう。

昨日家族にバレないように七香に書いたラブレター……本当に書く時ドキドキして、こうでいいかな……でもこの言葉の方が……字をもっと綺麗にしないと……って何度も何度も書き直してさ、今までは私がラブレターを書くなんて思ってなかったから……結局描ききれたけど、内容が上手く出来なかった。

それで書き直すか悩んでたら……今日七月七日になっていた。

それで早めに家を出て誰よりも早く学校に着いたけど……いつもは少ないって思ってた四人でさえ、こんなに大勢がいるところで渡さないといけないの? 無理無理……もし断られたら……って考えたら怖くて結局給食の時間が過ぎて五時間目が始まろうとしていた。

どうしよう今このチャンスを逃せばもう二度と伝えられないかもしれない……どうして身体が動かないのよ!!

……結局私は変わってないのかな伝えられないまま……もう七年も片思い……七香のことしかいつも考えてない……だったら今渡すしかないだろ!!

そうして私は無理矢理にでも身体を動かして……手渡した。

「七香その……はい……これ読んで」

「どうしたの手紙なんて……家に帰って読むね。それでさ、叶奈今日はどこで遊ぶ?」

「そっその今日は用事があるからちょちょっと無理……かな?」

「ふふっどうして疑問形なのよ。でも分かったそれじゃあ明日遊ぼうね、約束ね叶奈」

「うん約束ね七香」

「「ゆびきりげんまん嘘ついたらハリセンボンの〜ます指きった」」

やっっっと渡せたぁぁぁこれであとは返事を待つだけ……明日が楽しみだけど……なんだか明日になってほしくないな……やっぱり断られるのが怖くて仕方ないんだな私。

そして家に帰ると両親の結婚記念日だからとケーキを食べることになった……私もこんなふうに七香となりたいな……私は明日への不安と期待でケーキの味がしなかった。

そして夜も眠れず、いつも通りに学校に登校したが時間になっても七香の姿がどこにもない。

どうしてもしかして事故に遭ったんじゃ!?

私がそう焦っていると先生が

「夕凪七香さんは家の都合で転校しました……伝えられなくてごめんね。お別れすらさせてあげられなくて……本当にごめんなさい」と

……は? なっなにを言ってるの七香がもう学校に来ないって……どっどうしたら親同士は連絡先を交換してないし……私と七香は携帯を持ってない……あれこれってもう……会え……ないの?

えっ、何かの冗談だよねこれ……返事も聞けず……もう返事なんてどうでもいい七香にただ会いたい。会えたら他にはもうなにもいらないから……せめて七香との最後の約束ぐらい守らせてよ神さま

分かってる……また会える可能性はあることくらい……でももう会えない可能性だってあるわけだし…………

私がそう考えていたらもう学校が終わっていて

家に帰ったら母さんが

「おかえり叶奈……どっどうしたの目が死んでるわよ!! 学校で何かあったの!?」

私は親に私が七香のことを好きなことを秘密にしている。

「……大丈夫だよ。なにもないから……そうなにもね」

「……そう、なにかあったら相談してね叶奈(あの子絶対なにかあったわね……だってあの子何かあった時は右目を閉じて首を掻く癖があるから……多分あの子も気づいてない癖ね。私たちに何か出来ることがあればいいんだけど……こういうのはあの子自身から話してもらわないといけないわよね)」

私は部屋で声を殺して泣いた

そして十二年後

私はもう……二十七歳になった。

あれから十二年結局七香には会えなかった。

流星群が流れるとニュースで報道された時には必ず向かい会えるよう流星群にお願いをしたし七夕の時にも短冊に会えるように書いた。

神社でも……とにかく会える可能性が少しでも増えるならとなんでも試した。

でも結局会えず私はもう会えないと諦めていた。

そう諦めていた……時に病院に入っていく七香の面影がある人を見つけた。

私はその病院に向かって走った。

ちょうど今日は七月七日で私自身の定期検診があった日だった。

私はその面影のある人に走って向かったのはいいがどう話しかけたらいいのか分からず戸惑っていたら、その人から話しかけてくれた。

「んん〜なんかあの私をじっ〜と見ながらウロウロしてる人どこかで…………あ〜!! やっぱり叶奈じゃん!! 久しぶり…」

あぁやっと七香に会えた。

私はその嬉しさが涙として込み上げてかて、そして全身の力が抜けてしまい膝から崩れ落ちた。

「どっどうしたの叶奈!? なにかあったの?」

「……だっだって七香が中学から突然いなくなるから……もう一生会えないって思ってたから……また会えたことが嬉しくて…………」

「……あの時はごめんね、勝手にいなくなって……それであの手紙の返事書いてきた……けどそれは後で渡すから……ちょっと私の診察が終わるまで待ってて」

「……うん……いつまでも待つよ七香」

「ありがとう」

そして七香を待っている間に私の定期検診は終わり

二時間後

「……お〜い、叶〜奈終わったよ……お待たせ……それじゃいつも遊んでたあの丘に行こっか」

「うん……それじゃあ丘に行くから……その返事を聞かせてね七香」

「うんそれじゃあ行こ」

そうして私と七香は中学時代にいつも遊んでいた丘に向かった。

一時間後

「……ふ〜やっぱりここの空気はどれだけ時間が経ってもおいしい……ねえ叶奈まだあの木あるよ!! また木登りしようよ!!」

「もう、七香服が汚れるよ」

あぁ、また七香とこんな会話を出来るなんて……これが七夕の奇跡……なのかな?

「じゃあ木登りはあとにして返事伝えるね……私も叶奈のこと好きだよ……でも……ごめんね」

「えっごっごめんってどうして!? 好きなんでしょ……七香? どうして泣いてるの?」

「私ね、本当は……叶奈と恋人になりたいし……デートだってしたい……出来たら結婚だって……でもね私……死んじゃうんだって」

「……な……に……言ってるの?……七香が死ぬって言ったの?……じゃじゃあ今日七夕だしさ短冊とかでお願いして死なないようにとか出来ないの」

私は分かっていたはずだ。

どれだけ願ったとしても人の死はどうにも出来ないことを……母がそうだったように。

回想

私の母は私が十七歳の時の七夕の時……脳の血管が切れ、病院に搬送された。

私は何度も神さまに願った七夕の奇跡でもなんでもいいですから母を助けてください……七夕は願いを叶えてくれるんでしょ!?

と何度も願った

何度も何度も心臓マッサージがされて……私は気が動転していた。

母が倒れたことにも母が心臓マッサージをされ続けていることにも……それで私の叔母が医者に結果を聞くと……首を横に振っているのが見えた。

……嘘だ、嘘だ……あははなにが七夕の奇跡だ……そんなのないじゃないか!!

分かってたはず……なのになんで願ったんだろう

そう考えていたら私は母の遺体の前に連れてこられ叔母に

「これが母ちゃんと会える最後だからたくさん…………見てあげて……どうして死んじゃうの、佳奈尾が死ぬぐらいなら私が変わりに死んだ方がましだよ。私は佳奈尾が生きていられるなら何回でも私の命をあげるのに!!……うぁぁぁぁ…………」

私は母の遺体に触れた

「まだ暖かい……ねえ私どうしたらいいの母さん? ねえ返事してよいつもみたいにさ……さっき二人で話してた晩ごはん作ってよ。晩ごはんの後にはケーキも一緒に食べるんでしょ……ねえ、お願い返事して……お願いだから!!……どうして……あはは私が生まれなかったら……こんな思いしなくてすんだのに……」

なに言ってんの私……死んだ母の遺体の前で

パーン

「叶奈ちゃんこんな時になに言ってんの!!」

これはビンタされてもおかしくないよね

気が動転してたとはいえ絶対に言っちゃいけない

そして母が解剖されることになった。

叔母は反対していたが、最終的には母の遺体の解剖は止められなかった。

母の身体から薬物反応がしたらしいが、それは母が痛み止めの薬を何個も飲んでたからだろう……でも医者からは薬物をしてる人だと思われたらしい……母は身体の痛みを痛み止めの薬を飲みながら、私や家族のために仕事を頑張ってくれたんだ!!

回想終わり

私はこの出来事があってから願いごとが叶うわけない

と思うようになった。

でも神さまでも悪魔でも化け物でもいいならお願いしたい、七夕の奇跡をください!!

七香を助けてください……私を殺してもいいから!!

私はまだ七香に自分の口で伝えてない

「ねえ七香……私今も七香のこと好きだから付き合おう。今日七香が死ぬなんて……私信じたくない……けど七香はいつも嘘を言わなかったもんね。だから信じるよ……でもさ今日だとしてもまだ時間はあるから……いろんな場所に今から出かけようよ!!」

「……嬉しい…………ありがとう叶奈それじゃあ行こうか……どっどうしよう涙が……止まらない……」

そして私と七香は今日の残り、恋人として過ごしていた。

でも……こんな楽しい時間は長くは続かなかいことを二人とも知っていたはずなのに忘れたふりをしていた。

……そう七香が倒れた搬送されたのだ。

……私は救急車に乗ることが出来なかった。

せめて七香がどうなったかだけでも知りたい……お願いだから助かって!!

またこんなふうに楽しく過ごそうよ七香!!

私はそう思いながらここら辺の病院をまわった。

そして七香が搬送された病院にたどり着いた……でもその時には七香のお母さんが泣き崩れているのを見つけてしまい……信じたくない!!

……でも結果は私の母の時と同じだった。

私はそれから一年間なにもやる気が起きず……ずっと死ぬことばかり考えていたが死ぬ勇気もなく……家に引きこもっていた時七香のお母さんが私の家に来た。

ピンポーン

「あの……叶奈ちゃん、少しいい? 七香の最期の伝言を伝えにきたんだけど……」

七香の伝言!?

私はすぐに玄関に走った

ガチャ

「七香の伝言ですか!? 早く……早く教えて……ください」

私か泣きながらそう伝えると七香のお母さんは七香の携帯をとりだりボイスメモを開いた。

そこからは七香の声が録音されていた。

『……ごめんね……叶奈……楽しかったよ……私の……七夕の願い……叶っちゃった。……それはね……叶奈と恋人に……なってデートする……なんだよ。

もうこれはさ……七夕の奇跡だよね。私死んじゃうだろうけど……私は叶奈に幸せになって……欲しいから……それが今の願い……だから……もうお母さん泣かないで……私まで……やっぱり死にたくない……もっともっとたくさん思い出作りたかったな……ねえ叶奈私のこと忘れないで……忘れなかったら私は叶奈の中で生きてるから……』と

本当は話すことだって辛いはずなのに……こんなに……忘れるわけないよ七香のこと……何年好きだったと思ってるの。

保育園の時から今までずっとだよ……

「ありがとう……ございます。七香のお母さん……この音声……その私ももらえませんか?」

「ええ……ええ!! きっと七香も喜びますから……音声だけじゃなくて……このスマホ自体をあげます」

「でもこれは……七香の……」

「いいんですよ……私は七香が幸せになるほうがいいですから……それではありがとね叶奈ちゃん。また七香に会いにきてね」

「絶対会いに行きますから……本当にありがとうございました七香のお母さん」

「それでは帰ります」

そう言って七香のお母さんは七香のスマホを私にくれたあと帰った。

……七香……もうどうして最後まで……あぁぁぁぁ

そして私は泣き止むまで玄関から動くことが出来なかった。

そして泣き止んでから私は七香に私、十六夜叶奈が幸せになっているところを天国から見ててもらうために家から出ることにした。

「これから見ててね七香……それでさ……もし七香が幽霊としているならさ、私嬉しい……から、近くにいたら音鳴らして……な〜んて、あははいるわけな…………」

ガチャガチャ

「……なっ七香なの!!……ありがとうこれならずっと一緒だね……今日七夕だったね七香……私七香のこと忘れないからね」

私はそう思いながら玄関の外の空を見上げた。


おしまい

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