エピローグ:永遠の調べ

 それから数十年後、真理とサラは老境に差し掛かっていた。しかし、二人の目に宿る光は、若い頃と変わらず輝いていた。


 人類は、宇宙開発を大きく進展させていた。月や火星だけでなく、木星の衛星にまで居住地を広げていた。そして、地球外知的生命体との接触も現実のものとなっていた。


 ある夜、二人は自宅の庭で星空を見上げていた。


「ねえ、サラ」


 真理が静かに言った。


「私たちの人生、素晴らしいものだったわね」


 サラは真理の手を優しく握り、頷いた。


「ええ、最高の人生だったわ。あなたと一緒に過ごせて、本当に幸せだった」


 その時、夜空に見慣れない星の輝きが現れた。


「あれは……」


 二人は顔を見合わせ、笑みを交わした。言葉は必要なかった。あの「声」が、再び彼女たちを呼んでいることが分かったのだ。


 真理とサラは、手を取り合い、静かに目を閉じた。二人の意識は、再び宇宙の広大さの中へと溶け込んでいった。


 そこには、無限の可能性と永遠の愛が待っていた。二人の魂は、量子の海原を漂いながら、新たな冒険へと旅立っていった。


 その瞬間、地球上の全ての量子コンピュータが、美しい調べを奏で始めた。それは、真理とサラの愛と探求心が織りなす、永遠の交響曲だった。


 人類は、この調べを聴きながら、さらなる進化と調和への道を歩み始めた。真理とサラが蒔いた種は、今や壮大な宇宙樹となり、その枝を無限に広げていったのだ。


 こうして、「神の方程式」は解かれ、同時に新たな謎が生まれ続けた。それこそが、生命の真の姿なのかもしれない。


 終わりなき物語は、ここからまた始まる。


(了)

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【SF短編小説】神の方程式 藍埜佑(あいのたすく) @shirosagi_kurousagi

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