第31話 交渉決裂

カイは光に包まれ目が眩む


まばゆい光が落ち着き目を開けると


そこには草原が広がっていて


夕焼けが草原を金に彩りまるで


金色の世界が広がる


「此処は...」


ザッ!


後ろから足音が聞こえ振り返る


「此処は私の世界

この世界にお前を引き入れた」


金狼が背伸びをさながらそう言ってきた


(敵意はない...か?)


「ねぇよ、お前と話がしたくてな」


すると至近距離まで詰められ



「なぁ、レイは元気か?」


「!?」


突然の言葉にカイは驚きを隠せない


(レイを知っている?)


そう言い放った金狼はニヤリと笑い、続けて


「名乗ってなかったな私は

 メル・ゴルディア・ギルネイル

 レイとは、まぁ幼馴染...ってやつだ

 そんな事より話があってな

 私と契約しろ」


「はぁ!?いやいや

俺もう、レイと契約してるし無理だろ」


更に金狼メルは距離を詰め抱き寄せられ


「ん?レイと契約は出来たんだろ?

なら大丈夫だろ、レイとか私は通常の3倍

つまり既にお前は3人と契約してるような

もんだから、それに触ってわかるけど

お前のキャパの底は私にもわからん」


メル曰く1人に対して契約できる

総量は決まっていて

ミラとミコトの場合(通常)

1:1の割合で釣り合うらしいのだか


レイやメルだと

3:1で契約者の方がパンクするのだとか


対してレイとカイの場合(異常)

3:???

になっており

調べないとわからないが

カイのキャパはかなり多いと予想ができる


「契約の話は一旦保留で

俺はそれよりなんで一角と隻眼と

争ってたのかって方が気になる」


頭を掻きながらメルは


「あー、なんか勘違いしてないか?

オレはお願いしてるわけじゃねぇ

コレは交渉だオレと大人しく契約するか

牛共とあの女を殺されるか」


(敵対するしかないのか?)


戦斧を構えるカイだったが


メルが背後に周り戦斧を奪っており


「無駄無駄、今のアンタじゃオレには勝てないし

逃げられもしないアンタはオレの要求を呑むか


死ぬしかない」


戦斧召喚を発動し戦斧が


カイの手元に戻る


「お前の思い通りになるのも


 死ぬのもお断りだね」


「なんだ、交渉決裂か」









カイと金狼が目の前から消えた後


隻眼はミコトを回復し安静にさせて


一角の回復に当たっていた


(王がヤツと共に消えた

このダンジョン内に王とヤツの気配はない

詠唱をし始めた時嫌な予感はしたが

別空間を作る能力があるのか....)


「ゴホッゴホッ」


咳き込みながらミコトが起き上がる


「...ねぇ、カイは?」


「金狼の能力で何処かに」


ゴトッとミコトが足に力を入れ


立ち上がろうとするも力が入らず


その場に伏せてしまう


「傷は治っているが体力が

回復する訳ではないから大人しくしておけ」


ガシッという感触が隻眼の腕にあった


「でもよ隻眼、俺もお嬢ちゃんも

王様が心配で大人かなんて出来ねぇよ」


一角が目を覚ましてフラフラと起き上がる


それに呼応する様にミコトも起き上がる


「おい、2人ともフラフラじゃないか

王が心配なのはわかるが手掛かりもない

一旦回復に専念すべきだ」


チッチと一角が指を振る


「なぁ、俺達はこの嬢ちゃんの

空間を繋げる能力で無限落下してたんだろ?

さっきまで金狼と王様がいた空間があるだろ

そこがなんの関係もないなんて事はないだろ

嬢ちゃんの能力でそこと王様がいる場所を繋げる」


「バカいうな

そんな残留思念みたいな物があっても

見えないものをどう繋げる?

完全にランダムになる上

成功するかもわからん」


「...でも、やらずに諦めるのはイヤ」


ハァと隻眼のため息を他所に


ミコトがラビットホールでカイを探し始めた


何度も何度も繋げた


その度吐血や手足の痺れが襲う


それでもミコトは辞めなかった


そして...


「...繋がった!」


ミコト達が目にした光景は...


圧倒的劣勢のカイだった


右足は折られ左の膝は骨が飛び出して


右腕は肩から外されてダランと垂れ


左手に戦斧を持ち防戦一方


(クソ何なんだよ!

龍の勘を使っても間に合ってねぇし

デタラメな強さしやがって)


カイの額に汗が滴ると


目の前が真っ暗になる


ミコトのラビットホールが展開され


ミコトの前までカイが移動した


「隻眼!王様を早く!」


一角が金狼に突っ込んで行き


ミコトはさっきまでの

ラビットホールを酷使した事で

意識を失っている


隻眼はカイの治療を始める


「このヤロー!」


と斧を振り下ろす一角


ガシャン!!と金属のぶつかる音と共に


衝撃波が離れている隻眼の元まで届く


振り下ろされた斧をガシッと掴む


「なぁ、お前どうせアレだろ

 いつもちょこまか動くから

 速さで負けても

 力では負けないとか思ってたんだろ

 甘ぇよ、こっちは手加減ってのが苦手なんだ

 とっとと死ね」


金狼の爪が斧を粉砕し喉を裂き


心臓を潰し、首を跳ねる


「あははは!死んだ!死んだ!

弱いくせに、オレに向かってくるから」


隻眼は自分に驚いていた


おおかた自分は非情な性分だと思っていた


一角を殺された怒り、悲しみで


斧を持ち走り出している


「あ?また雑魚か」


金狼は一角の斧を持ち


首、手首足首と切り込んで


切り込んだ勢いでそのまま吹き飛ばされ


ガゴン!と近くの大岩にめり込む


辛うじて切断までいかないが


骨まで届く威力だった


隻眼が飛ばされた衝撃で


ミコトが目を覚ます


「...え?一角?隻眼?」


「無駄だよ、一角?は死んだし

 さっきの隻眼とかいうやつは

 もう死ぬ、そして貴女も」


ミコトは咄嗟にラビットホールを展開するが


展開より速く背後まで回られて


「遅いよ、さて

 どうやって殺そうか」


一角死亡、隻眼は瀕死、


絶望的な状況だった


「そうだ頭を潰そう、地面とキスは好き?」


そういうと金狼はミコトの頭を掴み


上空へと登って行く


「...イヤ...やめてっ」


ドッ


「うるせぇな、恨むなら自分の弱さを恨みな

 それとも誰かに助けを求めるか?

 誰かが助けてくれるといいなぁ!」


金狼は高笑いしながら更に空に登る


ドク


(一角も隻眼もやられちゃった

 カイの怪我は治ってない

 ...もう、ダメなのかな)


『本当にダメなのか?

 まだお前は助けを求めていない

 おれは何もしない者を助ける気はないが

 助けを求める者には手を伸ばす


 おれを...信じろ!』


ドクン


ミコトは息を大きく吸い込み


「たすけてぇぇぇぇえ!!!!」


金狼が耳を抑えるほどの


声量でミコトは助けを求めた


「うるせぇな!もういい!

 今すぐ殺す!」


ドクン!


その時カイの体が跳ねた


地面と水平に跳ね上がる


金狼の爪がミコトの心臓を狙い


突き刺す!しかし既にそこにミコトはいなかった


カイの腕の中にミコトはいた


「...えっ?カイだよね?」


ミコトの驚きも仕方ない事だった


カイの外見がガラッと変わったからだ


髪が腰まで伸び、龍の角が三本


共鳴の時とは違い目が金色になっておらず


黒目の中心が紅く光る


「カイ!一角も隻眼もやられちゃって!

 私どうしたらいいかわかんなくて...」


カイはミコトを隻眼の元へ


「王よ...遂に」


『いいから休め』


カイは隻眼に触れると隻眼は


あっという間に再生していく


ミコトも抱き抱えられている時


ある程度再生していた


「一角も隻眼も手も足も出なかった

 カイ、やられないでね」


カイはミコトの心配を他所に


『大丈夫だよ、おれは強いから』


そう言うと一角の元へ


無惨な一角の死体を見るや


カイは戦斧を取り出し


一角を吸収し


一角そっくりの幻影を作り出した


そして


『一角、改め

其方の真名は...紅蓮


力を貸してくれ、紅蓮 』


「王様の力になれるなら

 死んでよかったかもな

 そうかい、俺の真名は 

 紅蓮か、いいな」


カイの戦斧に紅蓮が戻ると


戦斧が変形していく


「...なんだこれ」

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