第55話:話し合い
気絶した構成員たちが転がる『
「絶対に、ここを通すんじゃねえぞ!」
武装した構成員が立ち塞がる度に。レベッカたちが突っ込んで行って、全滅させる。
俺たちは話をしに来ただけで。一応、構成員から奪った剣の平で殴っているから。攻撃されたから、反撃したって言訳できるし。できるだけ殺さないようにしているからな。まだ話をする余地はあるだろう。
「いや、もう完全に戦ってるよね。今さらじゃない?」
クリフが呆れた顔をする。こいつは俺が考えていることが何故か解るんだよな。
「とにかく。ゾルディ・ゴーマンの居場所を探すぞ」
俺たちは建物の中を虱潰しに探したけど。『喰種連合』のボス、ゾルディ・ゴーマンらしい姿はどこにもない。
「どうなってやがる。ゾルディの奴は、いねえのか? これじゃ、完全に無駄足じゃねえか」
ギースが文句を言うけど。
「いや、下に魔力の反応がある。地下室があるみたいだな」
俺たちは地下に続く入口を捜す。建物の奥まった場所に、豪華な調度品が並ぶ部屋があった。ここがゾルディの私室か? だったら地下室の入口がある可能性が高いだろう。
俺は大抵の魔法が使えるからな。『
地下室に降りてみると、広い空間が広がっていて。構成員たちが武器を持って待ち構えていた。数は20人ほどだけど、これまでの奴らと明らかに様子が違う。
異様に膨張した筋肉。全身の血管が浮かび上がって、目を血走らせている。魔法か薬物でも使っているようで。唸り声をあげながら、襲い掛かって来る。
「おい、グレイ。こいつらは始末するしかねえだろう。早く俺の剣を寄越せ!」
「手加減できる相手じゃないから、殺すのは仕方ない」
まあ、さすがに話をするって状況じゃないな。俺は『
「やっぱり、こっちの方がしっくり来るぜ」
「もう遠慮する必要ないなら、私が勝つ」
ギースが大剣を、レベッカは双剣を手にして、構成員たちを迎え撃つ。
「シーダのことは僕とガゼルに任せて」
「ああ。おまえたちは好きに暴れて良いぜ」
クリフも『野獣の剣』のメンバーたちとの連携が上手くなったな。クリフは文句を言うけど、これも場数をこなしたお陰だろう。
「貴様たちの相手は私だ」
ライラが魔力を込めた金属の鞭で、構成員たちを次々と切り裂いて行く。ライラの実力なら、こいつらは狩られるだけの獲物だ。
こうなったら、俺も少しは仕事をしておくか。魔力を集束させて剣の形にすると、広い地下室の中を加速しながら駆け抜ける。
20人の構成員たちを全滅させるまでに、10分も掛からなかった。
さらに進んで行くと。地下室は下水のトンネルに繋がっていた。ゾルディはここを使って逃げたってことか。
トンネルは分岐して複雑に入り組んでいる。だけど俺は魔力を感知できるから、10人ほどの集団が移動している場所が解る。
「たぶんゾルディの居場所が解ったけど。俺が捕まえて来るから、みんなはここで待っていてくれ」
魔力を感知できるのは俺だけだし。みんなに合わせて移動していたら、ゾルディを逃がしてしまうかも知れないからな。
魔力の反応がある方へ、俺はトンネルの中を駆け抜ける。数分で移動中の奴らに追いついた。
「畜生、どうなっていやがる? 相手は、たかが7人だろう? どんな手段を使ったか知らねえが、200人の構成員を一瞬で倒すなんて、あり得ねえだろう!」
文句を言いながら走っているのは、ハイエナの獣人。こんなことを言っているけど、結構強いな。『獣王会』のルクレチアや『ローゼンファミリー』のガルシアと、良い勝負なんじゃないか。こいつが『喰種連合』のボス、ゾルディ・ゴーマンだろう。
「良いか。てめえらは地上に出たら、傘下の構成員全員を直ぐに掻き集めろ。これは『喰種連合』の全面戦争だからな!」
「ボス。奴らが地下室を見つけたとしても、『
「てめえは何を言っていやがる? てめえらが油断したから、こんなことになったんだろうが! 相手は何をして来るか解らない奴らだ。こっちも徹底的にやるしかねえだろう!」
「そうだな。ゾルディ、おまえの判断は間違っていないよ」
ゾルディは咄嗟に振り向くと、俺を見て唖然とする。
「てめえがグレイか……どうして、こんなところにいる?」
部下たちが一斉に武器を抜く。こいつら幹部なのか、他の構成員たちよりは強いな。俺は魔力を一瞬だけ放って、意識を狩り取る。部下たちがバタバタと一斉に倒れると。
「てめえ……いったい、何をしやがった?」
ゾルディだけは魔力を放っても、意識を保っている。だけど何かされたことだけは解ったみたいだな。
「俺は魔力を放っただけだよ。おまえたちは勘違いしているみたいだけど、俺は話をしに来ただけだから。そいつらも意識を失っているだけで、死んでいないからな」
ゾルディは俺の言葉の真偽を確かめようと、部下たちの様子を見る。息をしているから、死んでいないことは解るだろう。
「グレイ……てめえの目的は何だ?」
「だから話をしに来たって言っているだろう。ゾルディ。俺はおまえに訊きたいことがあるんだよ」
ゾルディは冷や汗を垂らしながら、俺の意図を測りかねていた。
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スミマセン。読んでくれた人には申し訳ないですが、諸事情によりこれで完結します。
次に書く作品は、もっと面白くなるように頑張ります!
竜の姿になれない出来損ないの竜人、昼も夜も無双する。 岡村豊蔵『恋愛魔法学院』2巻10月30日 @okamura-toyozou
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