夢と回転寿司

紺野真

夢と回転寿司

夢を見たはずだ。

夢を見た、という実感がある。

でも夢の内容は何も覚えていない。


“夢を思い出せない時は、夢が誰かに連れて行かれちゃったんだよ”


昔母に言われた。

「ぼくのゆめ、勝手に、取るなよ」


呟くや否や、目覚まし時計が鳴った。

4歳の誕生日に貰った変な魚の目覚まし時計は、変な音で朝を告げる。

(当初は波音と一緒に「おはよう」と言ってくれていた)

なるべくやさしく音を止めてやった。




今日も、暴力的に平凡な一日を過ごすんだろう。

貴方の事を少しずつ思い出せなくなってきているのにな。



スーツを着て、河原へ行く。

なるべく平たいカラフルな石を積む。崩す。

蟻を18匹見つけたら、その後は雲を見る。

3粒の枝豆みたいな雲を発見。

母さん、ぼくが見た夢って、あの雲になったんじゃないですか


スーパーに寄って食料を買う。

牛乳、牛乳、かっぱ巻き、玉子、桃の缶詰。

「袋いらないです」は今日初めて他人に向けて喋った言葉。


帰宅して食料を仕舞う。

かっぱ巻きはすぐ食べるからカウンターの上。

カウンターの上のかっぱ巻き。


地球上にあるので、回転寿司のかっぱ巻き。

貴方はもう、回転寿司を食べられないの?

それとも、もっと豪華で愉快な、僕には到底想像もつかない回転寿司を食べているの?



今日一日分の給料の明細が僕のパソコン宛に送られてくるのを確認した。

あと何回、延命すればいいですか


あと何回、夢を見たら終わりですか


サポートセンターにメールを送る。

返信は直ぐに返ってきていつも通り、いつも通りの

その質問には答えられません

を読んでまた安心した。



回転寿司、回転寿司

貴方と雲に寿司を乗せて地球ごと回転寿司をしたいよ

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夢と回転寿司 紺野真 @konnomakoto

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