第52話 人形遣い視点 まさか伯爵令嬢が好いてくれるとは思ってもいませんでした。

俺は前世でも少し太っていた。


豚じゃない! 

じゃあ、子豚だって言った奴は誰だ!


だから、そんなにもてなかった。


まあ、ガンプラ命で作っていたオタクな俺が女の子に好かれるなんて思ってもいなかったのだ。


この世界では、俺は人形遣いになったからモテるだろうと思ったのに、この体格のせいでもてなかった。


女どもは俺を褒めてはくれるのだ。


俺が鼻の下を伸ばしていると、いつの間にか、隣のいけ好かない男にかっさらわれるのだ。


めいちゃんもマイちゃんそうだった。


顔だけ良くて何の能力もないガルシアという魔術師の男に、マイちゃんを横取りされた時は俺も切れた。


切れた俺は討伐でその男がピンチになってもなかなか助けなかった。


ふんっ、ざまあみろだ。


そして、男が倒れた後に、マイちゃんを助けたのだ。


今度こそ、

『エイブさん、素敵』

と俺はマイちゃんが抱きついてくれると思ったのだ。


でも、マイちゃんは俺等見向きもせずに、「ガルシア様。大丈夫ですか!」

とその体に泣きついたのだ。


おい、待て! マイちゃんを助けてやったのは俺だぞ。

それでこの扱いかよ!


俺は完全に切れた。まあ、俺が邪な考えを持ったのが悪かったかもしれないが、俺が全部悪いのか?


それ以来、女は嫌いだ。





ただ、キャロライン様は全てにおいて、別格だった。

キャロライン様は女神様だし、そのお考えは素晴らしかった。


俺はキャロライン様なら、足蹴にされようが、踏みつけられようが、耐えられた。

何をされようが、キャロライン様は俺の女神様なのだ。


しかし、そのキャロライン様は、俺のことよりも、顔の良いセドが好きみたいだったが……


どいつもこいつも顔だ!


でも、俺はセドは嫌いになれなかった。

それにこいつは古代竜にサンドバックになっていた俺を助けてくれたのだ。


こいつは良いやつだった。


だから、セドに、キャロライン様を取られても仕方がないと思っていたのだ。


こいつの剣技は俺のモバイルスーツよりもワンランク上だ。


それに、俺を豚だと言ってバカにしないし、気にしてくれる。


それに対して、キャロライン様に対しては塩対応だったが……。


俺は一度「お前は良いな。キャロライン様に好かれて」言ったことがあった。


でも、セドはとても変な顔をしたのだ。


「お前は、キャロラインの顔に騙されてはダメだぞ。あいつは天使の顔をした悪魔だ」

そう嫌そうに言うと、カジノでいい女だと騙されてこの傭兵バスターズに無理やり入らされたこと。

大聖堂を自分が壊したくせに、セドを代わりに人身御供に出してくれたことを延々愚痴ってくれた。


「あの顔と態度に騙されてはいけない」

セドは何度も俺に言ってくれたのだ。


「じゃあ、俺がキャロライン様にアタックして良いのか?」

俺が真顔で聞くと


「お前、女の数はごまんといる。何も性格が破綻しているキャロラインを狙うことはないだろう」

心からそう思っているふうだった。


俺は確かにキャロライン様と付き合いは短いが、そこまでひどい性格だとは思わない。


キャロライン様はツンデレなところもあるから、好きなセドに辛く当たることもあるのだと思っていた。


それを証拠に今回は皇太子殿下の前で、はっきりセドが彼氏だと言い切っていた。


それに対して完全に皇太子が切れているのが判った。


でも、セドは

「キャロラインは皇太子よけに俺をだしに使っているに過ぎないと思うぞ」

と全く気にしていなかった。


今回の肝試しにしても、絶対に師匠のジャルカを脅して、セドと一緒のペアにしたに違いないのだ。


セドはとても嫌がっていたが……


それに対して、俺は皇太子狙いが丸わかりの伯爵令嬢だった。


俺とのペアが決まって絶対にがっかりしていた。


俺のことをあからさまに豚とは言わないが、そんな目で見ていた。


俺はその女がなんて思うか判るのだ。


キャロライン様と一緒のセドがとても羨ましかった。


横目に見るコリンナはとてもきれいだった。


まあ、平民の俺には高嶺の花だったが……


そんな俺達にクラーケンが襲いかかってきたのだ。

コリンナに良い所を見せる千載一遇の機会が来たのだ。


俺は勇躍した。


「変身!」

叫んで機動戦士になったのだ。


今回はたかだかクラーケンだと思ったのだ。


でも、俺は油断していた。


後ろから来る風に押されて湖に突っ込んでしまったのだ。


クラーケンに固定されて湖に連れ込まれそうになった。


そうなったら終わりだ。


俺は焦った。


クラーケンの力は思ったよりも強かったのだ。


引きずり込まれたら終わりだ。


俺は焦ったのだ。


でも、その俺に駆けてくるセドが見えた。


セドは一撃でクラーケンを退治してくれたのだ。


「やっぱりセドとは力が違うな」

俺は気を失う前に思った。

せっかくコリンナ嬢の前で良い所を見せられると思ったのに!


俺は病院で気がついた時に俺のベッドの横で寝ている女がいるのに気付いて驚いた。

侍女か誰かだろうか?


「あっ、エイブ様。気付かれましたか」

なんとそれはコリンナ嬢だったのだ。


なんで皇太子狙いの彼女がここにいるのか判らなかった。皇太子に命じられたのだろうか?


「私、人形遣いの意味が判っていなかったんです。私を守ってくれたエイブ様、とても格好良かったです」

目を輝かせて言ってくれるんだけど、

「いや、でも、クラーケンを倒したのはセドだし」

「でも、エイブ様が最初に守って頂けました。私、エイブ様が私を庇ってクラーケンに立ち向かわれるお姿を見て感動したのです」

なんかこの女は他のやつと勘違いしているんじゃないかと俺は疑ったほどだった。


体中包帯だらけにした俺にコリンナはとても親切だったのだ。

甲斐甲斐しく世話をしてくれた。

俺には信じられなかった。


絶対に皇太子に対して役立つ女アピールだと思っていたのだ。


「はい、エイブ様。あーん」

コリンナは皇太子の前で病院食をスプーンにすくって俺の口元に持っていっていた。


「いや、あの、コリンナ」

「なんですか? エイブ様」

俺が思わず呼び捨てにしてもコリンナはニコニコ笑って俺を見てくれているのだ。皇太子は無視だ。


「自分で食べられますから」

流石に皇太子の前ではまずいだろう。なんか機嫌が悪いし、

「何をおっしゃっておられるのですか。私を守ってエイブ様はクラーケンと戦って負傷されたのです。私がお世話するのが当然です」

「えっ?」

本当にそう思ってくれているんだ。

俺は少し感動した。


「しかし、コリンナ」

俺は一応皇太子の方も見てみたのだ。

「ああ、殿下が邪魔ですね」

「えっ」

あれだけ皇太子にアプローチしていたコリンナはあっさりとそう言ってくれたのだ。


「さあ、殿下は出ていってください」

その上、皇太子を追い出してくれたのだ。


「はい、あーん」

唖然とした俺は口を開けていた。

その口の中にコリンナはスプーンを入れてくれた。


「エイブ様。美味しいですか?」

「うん」

俺は笑顔のコリンナを見て、夢だったら、まだ覚めないで欲しいと望んだのだ。

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ここまで読んで頂いてありがとうございました。

人形遣いに春が来た……

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傭兵バスターズ 古里@10/25第3巻『王子に婚約破棄さ @furusato6

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