第51話 エピローグ 皇太子視点 踏んだり蹴ったりの休暇だった
「なんでこうなった!」
俺はキャロラインのペットに噛まれて痛む手を掴んで叫んでいた。
今回は幽霊が出るという噂のバーミリオン湖に来たのだ。
まさか本当に怪物なんか出るとは思っていなかった。
それがクラーケンなんているとは……
そもそも、ペアぎめのくじ引きからして最悪だった。
ジャルカには絶対にキャロラインとペアにしろと命じていたのに、俺のペアはなんとアロイスだったのだ。
どういうことだ?
アロイスは俺につきまとってうるさいコリンナとペアになる予定だったのだ。
キャロラインの部下のムカつく剣聖と人形遣いをペアにしてざまあみろとキャロラインを連れて行く予定が……
そんな事を画策したのがいけなかったのか?
ジャルカは調子が悪かったとかふざけたことを言っているが、絶対にキャロラインに脅されたのだ。
失敗した。何が師匠だ!
逆じゃないのか?
その後ジャルカに魔術師共の訓練をさせたが、魔術師団長から、泣きこまれた。
「頼むからジャルカ様に訓練させるのは止めてほしいのですが……このままだと魔術師が一人もいなくなります」
1日目にして訓練を受けさせた魔術師の半数が、使い物にならなくなったのだ。
大怪我をして……治療師達でも、治せないほどのけがをさせてくれて、あいつは何なのだ!
本当に役立たずだ。
それに、いざというときのために沖に準備していた軍船と騎士たちは、逆にクラーケンに襲われて全く役に立たなかった。
最後はキャロラインにクラーケンと一緒に燃やされていたが……
役立たずのお前らは燃えて湖に沈んでいろと言いたかった。
それを救助するのも大変だったのだ。
こういう時はジャルカがやっと役に立ってくれたが……
でも、治療魔術は疲れるから嫌だと言うので、帝都から慌てて治療師を呼んだりして本当に大変だった。
それにキャロラインと仲良さそうにしている剣聖は何なのだ!
我が自慢の騎士たちはボコボコにされるわ……クラーケンも一撃で倒してくれるわ……その後、クラーケンを燃やしたキャロラインの攻撃の余波を受けて真っ黒になっていたのは笑えたが……
「キャーーーー、セド、大丈夫!」
必死にセドにしがみつくキャロラインを見て、俺は自分がクラーケンに襲われれば良かったと思ったのだ。
「決着着いた後、なんでも安必要があるんだ!」
「だってクラーケンを丸焼きにしたら美味しいかなって思って」
「黒焦げにしたら食べようがないだろう!」
俺はその後、二人が喧嘩するのを見て溜飲を下げていたが……
その病院の剣聖の隣の部屋の有り様を見て俺は開いた口が塞がらなかった。
なんとそこには体中包帯だらけにした人形遣いにあの俺に散々付きまとっていたコリンナが懸命に看病していたのだ。
どうした風の吹き回しだ!
俺の前で役に立つアピールか?
「はい、エイブ様。あーん」
コリンナは病院食をスプーンにすくってエイブの口元に持っていっていた。
「いや、あの、コリンナ」
人形遣いがあのプライドの高いコリンナを呼び捨てにした!
「なんですか? エイブ様」
その人形遣いに怒り出すのではなくてコリンナはニコニコ笑っているのだ。
絶対におかしい。
「自分で食べられますから」
「何をおっしゃっておられるのですか。私を守ってエイブ様はクラーケンと戦って負傷されたのです。私がお世話するのが当然です」
「えっ?」
俺は唖然とコリンナの様子を後ろから見ていた。
「しかし、コリンナ」
人形遣いは後ろの俺を見たのだ。
「ああ、殿下が邪魔ですね」
邪魔? 俺は初めてコリンナに邪険に扱われた。
学園でもそんな事をされたのはキャロラインだけだったのに!
「さあ、殿下は出ていってください」
俺はあっさりとコリンナに追い出されたのだ。
帝国の皇太子の俺様がだ。
「はい、あーん」
「そうですよ。エイブ様。美味しいですか」
「うん」
部屋の中から二人の仲睦まじい声が聞こえてきて俺はとてもムカついたのだ。
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ここまで読んで頂いてありがとうございました。
結局皇太子は二組のカップルの成立に貢献しただけでした……
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