聞いてよ 私のこの想いを
「デネブ、アルタイル、ベガ。3つを結んで、夏の大三角形!」
私が部屋にしていた教室は、天井にぽっかりと穴が空いてしまった。そのおかげで、満天の星空が天井の代わり!
「みんなで夜更かしして、天体観測! これぞ夏休みって感じかな?」
弾んだ声で言うと、となりに座る彼が笑ってくれた。
周りでは、みんなが思い思いの場所で空を見あげていた。
校庭では監督役のはずの七星が、望遠鏡をのぞきこんで歓声を上げている。角度や倍率を調節したりこは、うしろで得意げだ。
S組存続が決まって、壊された旧校舎も建てなおしが決まった。でも、この建物を活用しないのはもったいない! と、私が七星に提案したのが旧校舎での天体観測だ。
もう「旧校舎に近づくな!」なんてルールはない。銀ヶ島学園S組は、宇宙人たち4人のクラスとして学園のみんなが受けいれてくれたんだ。
……そう、4人のクラス。
ミハル姉はあのあと、学園を去った。
組織の命令で連れもどされたから、話もできずにいなくなってしまった。あの様子じゃあ、話をしてもしかたなかったかもしれないけど。
私はミハル姉を許せない。許せないけど……キライにはなれない。
ミハル姉にとっては「家族ごっこ」だった時間も、私にとってはまちがいなく家族の時間だった。
いつか、きちんとお話できればいいな。そう思って、また夜空を見あげる。
みんながそろって指をさしていた。数えきれない流れ星が、夜空を横切る!
また、こんなにたくさんの流れ星が! なにか、願い事……!
そう思ったとたん、流れ星は行ってしまった。あーぁ、またこれかぁ。
「……でも、いいんだ」
流れ星に向けた手を下ろして……私から、彼と手をつなぐ。
「一番の願い事は、もう叶えたから」
想いをこめた言葉に、彼はなにも言わない。その代わりに指をからめて、私の手を強くにぎりかえしてくれた。
「つくね、下りてきて! 星がくっきり見えますわ!」
「はぁーい!」
結んだ手に、ぎゅうっと力をこめて……私は彼といっしょにかけだした。
キミの知らない物語 河端夕タ @KawabatayutA
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