明治時代という近代日本が舞台なのに、一級品のSFである事にとても驚かされました。それこそ作者様の才能と存じます。「浦島太郎」を下地として、(おそらく相対性理論的な)異なる時間の進み方を物語に組み込み、その上でアノ人やコノ人を登場人物として起用するストーリーには感激すら覚えました。
潜水艦などの作中では魔法の如きテクノロジーが、読者の目からは妙にアナログ感が強く、専門用語へのルビ振り表現と相まって一読者としてとてもワクワクさせられました。後半の作戦も描写力が高く、臨場感に溢れていました。
お話全体としては「海彦(主人公)の冒険譚」という形ですが、海彦とミツヒメの関係がとても微笑ましく、そういう意味でも楽しく拝読させて頂きました。総じて、和風SFとして、ボーイミーツガールモノとして、とても高次元なお話とお見受けしました。