この風がやんだら
きっと必ずかえるから
愛しい人よどうか泣かずに待っていて
夜ごとあなたの夢をみる
夢であなたの声を聞く
素敵な詩です。これは、作中でしばしば描かれる、歌姫ルリアの歌です。
本編は、18年前の宴の席から始まる物語。
主人公メロウがまだ母親のお腹の中にいた頃、三人の父親たちは「この子が生まれたら、自分たちの息子の嫁にしたい」と約束を交わしました。そうして紡がれるのは、後に“幻の姫”と“求婚王子”として語り継がれることになる、メロウと三人の王子たち──グオン、ギルティ、アラオル──の、綿菓子のように柔らかく、甘く、不思議な青春の物語。
序盤は、メロウと三人の求婚王子たちが繰り広げる学園生活を中心に描かれます。社会見学同好会や口笛部、ヒヨコ組といったユニークな固有名詞や、物語の中で時折紡がれる歌の歌詞は、童謡のような優しさと温かみを持ち、読者の心をそっと包み込みます。
さらに、前半の核となるのは、メロウが実は男の子として生まれてきたということ。そして、それに直面しながらもメロウを守ろうと奮闘する三人の求婚王子たちの姿が印象的です。彼らはメロウを取り巻く好奇の目から守ることを誓い、マイノリティや興味本位の視線に対する問題を描きながらも、爽やかで心地よいテンポで物語が進んでいきます。
そして、読み進めると、メロウと3人の求婚王子の間に新たな問題が!?
この作品は、メロウと求婚王子たちの成長を描きつつ、誰もが抱えるアイデンティティや偏見に向き合うヒントを優しく届けてくれる良作だと思います。ストーリーの先がどうなるのか、楽しみに読みたい作品です。