第2話 召喚の代償

 俊は召喚前にピアトより条件をつけられていた。それはこの先成長があまり見込めない今の年齢では都合が悪いとのことで、成長期の14歳まで若がえさせるというものだった。


 今までの人生で多くの失敗を経験してきた俊からすれば途中からとはいえ人生をやり直せる絶好の機会だったので断る理由もなく即決だった。


 そして異世界へと召喚された俊は14歳の姿で姿を現した。だがここである1つの問題が生じた。


 それは自分の名前と召喚した神のことは分かるがそれ以外のことがさっぱり分からなくなっていたのだ。


 どういうことかと神に尋ねようとしたところで神より事実を話された。


「あなたは新しい生を受けたのです。その際何かしらの代償をいただくのは当然ではないですか。今回はあなたの今までの記憶を消させていただきました。向こうの記憶でこちらの世界のバランスを崩されても困りますから」


 確かに神の言うことも理解はできる、しかしそういう事なら召喚前に言ってほしかった。物の名称すら分からなくなっているのではどうやって生きていけばいいのか...


「とにかく契約通り若返りをさせました。この先はあなたの好きなように過ごしてください。それでは良き新生活を」


 そう言うと神は完全にいなくなったのだろう。呼んでも返答は帰ってこず広大な草原で1人取り残されてしまった。


 自分で望んだ異世界召喚とはいえ記憶を消され何のフォローもないのではどうすればいいのか全く分からない。記憶を失う前の自分に何か言いたくなる俊だが何故か言語化できない。おそらく記憶が消されたことで簡単な言葉すら忘れてしまったようだ。


召喚前は中々崖っぷちだったが今の状況も違う意味で崖っぷち、超常の力を体感したが記憶を失う前の自分が見ればおそらくこう言っただろう。


「現実は残酷だ」と


 何も分からなくなり途方に暮れたがまずはここから動かなければ何も始まらない。まずは人のいそうなところを探そうと歩を進める俊だった。




 

 

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世界を渡る 抹茶オイシス @nonstepbus

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