14.食糧を集めよう(1)
念のため、念のため……と保険をかけまくる一方で、しかし冬に向けた村の運営はびっくりするほどに順調だった。
まず、狩猟班は十日を待たずに四頭狩りができるようになった。
多少の下振れくらいはあるかと思っていたけれど、そんな心配もなんのその。実に安定した狩猟っぷりで、毎日四頭の魔物を治めてくれていた。
採集班もまた、草原が枯れきる前に無事に大袋を集めきり、さらに追加で一袋の余裕も出た。
これで冬いっぱい使用する首狩り草は安泰。少し余剰にお茶を飲んでも余るくらいだ。
採集班は仕事を終えて解散し、男衆は狩猟班と雑用係に再配備された。
狩猟数が増えたために得られる毛皮も増えたけれど、雑用係が増員されたおかげでこちらも問題なし。外套づくりも進んで、今では外仕事の人間全員にきちんと外套がいきわたっていた。
女衆の方も、今は家事・子守り組に合流している。
元採集班の彼女たちはやはり炊事仕事も兼任しているけれど、それでも日中の人手が増えたのは大きい。おかげで掃除にも手が回るようになり、以前に比べて屋敷がぐっと清潔になった。
診療所の方は、相変わらず大きな問題が起きていない。
ときどき雪道で滑り、擦り傷や打ち身で訪れる人間がいる程度だ。
秋の病気を乗り越えた頑健な人々ばかりだからか、病気どころか風邪すら流行る様子もなく、入院患者も相変わらずゼロのままだった。
子供たちへの教育は、順調かどうかはさておいて、ヘレナが一生懸命やってくれている。
寒さに慣れない馬たちも、モーリスがよく面倒を見て不調の出ないよう気を使ってくれていた。
地下食糧庫に置いた水は数日ほどで完全に凍り付き、氷点下であることが示された。
以降は手の空いた人間を捕まえて氷を作り、食糧庫の一角に積み重ねていっている。
同時に、狩猟した魔物肉もまた積み重ねられていく。
私の計算に狂いはなく、備蓄される食糧はどんどんと増え、冬への準備が進んでいく。
問題らしい問題と言えば、『これだけあるんだから、毎日もっと食べてもいいんじゃないか?』と村人が欲を出しはじめたことだろう。
計算上ギリギリだと説明しても、なかなか全員が納得してくれはしない。炊事仕事の際、村人の一人がこっそり必要以上の肉を食糧庫から持ち出そうとしたのを見かけてからは、致し方なく食糧庫の入り口に鍵を取り付けることにした。
村人たちからは大ブーイングを喰らったものの、どうせ支持率は最初からほとんどあってないようなもの。ここで大目に見て冬場の食糧がなくなることに比べれば、村人たちから文句を言われるくらいはどうってことない。
それ以外は、本当になにもかもが好調だった。
不安要素はなにもない。人手にも余裕が出て、仕事にも余裕が出て、あとは順調に狩り進めていくばかり。私も来年のことを考えなければと、執務室や書庫の本棚をあさって農学に関する資料を探す日々だった。
そうして順調なまま日々が過ぎ、およそ一か月が過ぎたころ。
季節にして十一月の半ば。草原はとうに枯れ、雪の日はますます増え、降り積もる雪が根雪に代わった晩秋。
凍るように冷たい快晴の日に、狩猟から帰って来た狩人たちによって、村にはさらなる吉報がもたらされた。
「――――見てくれ、今日はすごいぞ! 大物ばっかり、なんと六頭も獲れたんだ!!」
…………………………は?
大草原の小さな領主 ~七歳王女の楽しいハードモード異世界開拓記~ 赤村咲 @hatarakiari
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