第22話 幸せ
「リーシェ」
優しい声に呼ばれて私は振り向きます。そこには私の大好きな顔があります。秘密を打ち明けられてから1ヶ月。私たちの距離は順調に縮んで行きました。彼は私に優しくしてくれて気がついたら私も惹かれていました。聖女だから人を好きになってはいけないと思っていましたが、今は聖女じゃない。そう思うと心の底から好きになれて、今がとてもしあわせです。
―――――――――
馬車の外を見るとキラキラと光る海が見えます。
「こんな近くで海を見るのは初めてです!!」
私は少し興奮気味に言いました。スレンはにこにこと私のことを見つめています。彼は今日はラフな格好をしていて、シャツの隙間から見える鎖骨がとても綺麗で.......って、私は何を見ているのでしょう!!!はしたない他ありません!!!恥ずかしすぎて、砂浜に着くまで、私は黙り込んでしまいました.......。
砂浜は思っていた以上に歩きにくかったです。足が取られそうになるし、肌に砂がくっついて少しくすぐったいです。
「スレン!見てください!!水が行ったり来たりしています!!!」
私がずっとはしゃいでいても、彼は優しい笑顔で私を見つめてくれています。私を受け入れてくれているようで嬉しいけど、彼は楽しいのかな?そう思いました。
水に触れてみたくて、私は海に近づきました。しゃがんで寄せてくる波に触れます。
「とっても冷たい.....!スレン!とっても冷たいです!!」
スレンにも見て欲しいな!そう思い勢いよく立ち上がったとき、砂浜に足を取られよろけてしまいました。転ける.......!そう思ったとき、手が握られました。
スレンが手を掴んで助けてくれたのだ、と分かりほっとしたときでした。そのままスレンも足を取られました。
「「あ.............。」」
そう思ったときにはもう遅かったです。
ばしゃん!!!
二人一緒に転けて、びしょびしょになっちゃいました...。スレンが濡れてしまった前髪を掻きあげます。普段は目にかかりそうなほど長い前髪が今はオールバックのようになっています。なんというか、綺麗なお顔がもっと見えて、かっこいいし、色気が.......!!!
じゃなくて!!!!
「ごめんなさい!!!私のせいで水に濡れてしまって!!」
全力で謝罪しました。何も言わないスレンに恐る恐る顔を上げると、
「ふっ、」
彼は耐えられないと言わんばかりに吹き出しました。
そのまま涙が出そうなほど笑っています。私もつられて笑ってしまいます。
こんな幸せな日々が続けばいいのになぁ...。
―――――――――
帰りの馬車で、リーシェは気持ちよさそうに眠っていた。水に濡れてしまったが、風邪を引いていたりはしないみたいで、少し安心した。
眠っている彼女の額に唇を落とす。
「愛してるよ、リーシェ」
彼女の口が微かに緩むのを感じる。
いつか、彼女に面と向かって想いを伝えたい。
その時、彼女も僕の気持ちを受け入れてくれると嬉しいなと思った。
そして、彼女の頬にもう一度口付けた。
「聖女」と呼ばれていた私が、「氷の令嬢」に転生してしまったので、私なりに冷たくします。 らい @ray-02
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