流れ星

屑木 夢平

流れ星


月を追いやる太陽と

星を隠した初夏の雲

したたか芽吹く朝顔と

干上がったダムに沈む町


去年より増えた雑収入と

それより増えた税金と

切り崩される年金と

傷病手当はビールに化けた


二十四度の冷房と

誰かが捨てた食べ残し

持続可能な悲しみと

替えのきかない命がひとつ


屋根裏に住むハクビシン

八畳半の引きこもり

家をなくしたコウモリと

他人の不幸に間借りする奴


叩きたがりと口下手と

責任転嫁と因果応報

正しさ問うたあの人は

フェイクニュースに背中を刺された


帰るべき場所は住所でも

家賃でも敷金でもなくて

いつも記憶のなかにある

捨てた故郷の風が呼ぶ


涙も枯れた僕の目が

ふいにとらえた流れ星

自分に期待はしないので

ただあの人の幸せ願う

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

流れ星 屑木 夢平 @m_quzuki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画