第4話 みにくいアヒル姫はさらわれる
「あ、あの、その……ユリウス皇帝陛下」
「なんだ、俺の可愛い可愛いルーナ、そんな他人行儀に呼ばないでいつものようにいつものようにユーリと気軽に呼んでくれ」
全裸でドヤ顔する見知らぬ人のユリウス皇帝陛下に正直ドン引きしていたけれど、なんとかかんとか決意して言葉を紡いだ。
「……あの、ユリウス皇帝陛下、私は、ユリウス皇帝陛下とははじめてお会いしたかと思うのですが……」
「いや、ルーナ。俺と可愛い可愛いルーナは何度も何度も逢瀬を繰り返してきた。俺が君の部屋を訪れる度に、君はこの部屋に俺を招き入れてハグもしたしたまにキスも……」
「ユリウス皇帝陛下、嘘をつくのはやめてください!!私はいつも可愛い可愛い妹のルーナの側に監視を置いてますが貴方が部屋に来たことなんかないです!!大体、私は、反対なんです。確かに宗主国の皇帝陛下であり、数多の属国を従える偉大な方であると認識はしてますが婚約してもいない妹に対していかがわしい妄想をしたり、断っても断っても婚約の打診を送り続けるところも本当に気持ち悪い!!」
「はん、その言葉そっくりそのまま返すぞアレン王子。お前だってルーナの部屋を毎日覗いていたなら、彼女の苦しみを、彼女のこの酷い環境を知っていながら放置していたということだろう??歪んだ愛情キショすぎだ!!俺ならすぐに愛おしい人を救い出し最高の環境を与えられる」
衝撃が大きいとただただ瞬きしかできなくなるようだ。
なんというか、ツッコミどころがたくさんあり過ぎるのもあるけれど、ずっと優しいお兄様だと思っていたアレンお兄様がなんかすごいことを言ってましたし、まるでお友達から借りた恋愛小説のヒーローみたいなカッコイイ台詞をユリウス皇帝陛下が言っていましたが全裸であるせいで恰好良さより滑稽な変態さが増してます。
(どうしよう、もうなんかこのどさくさに紛れて逃げたいな……)
結局、準備も中途半端だしなんならこのまま、建国記念パーティーに出ないですんだらいいな等、怠惰なことを考えていたその時、突然私の体が宙に浮いた。
正確にはいきなりお姫様抱っこをされたのだ。
「なっ、妹を離せ変質者!!」
アレンお兄様の声に、私がユリウス皇帝陛下にそうされているという事実に気付いた。
「ふん、何とでも言え。可愛い可愛いルーナはこれから俺と幸せもふもふエンジョイライフを送るのだ!!」
そう言うとこともあろうかユリウス皇帝陛下は、私の部屋の窓を開けてベランダに駆け出した。
いくら覇王の異名を持つ最強の皇帝陛下(全裸)でもベランダから飛び降りたら無傷ではすみません。私ごと痛い目に遭います。
「だめです、ここは……」
しかし、私の言葉が言い終わる前に窓から飛び降りた陛下に私は襲ってくるであろう衝撃に備えて目を閉じました。
(……ああ、せめて擦り傷ですみますように。無理なら気絶してしばらくで意識がもどりませんように)
想像している衝撃はこなかった。
「??」
驚いて目を開けると私は空を飛んでいました。正確には私を持った皇帝陛下が空を飛んでいるのです。
「えっえっ??」
驚いてユリウス皇帝陛下を見ると、なんとその背に漆黒の翼が生えているのです。
もうどこから突っ込むべきかなんて考えることができませんでした。
だって、全裸で漆黒の翼を生やした美しい人が空を飛んでいるのです。要素として良くない方に盛り過ぎていて何も言えません。
「可愛い可愛いルーナ。ずっと君を空の旅につれて行きたかったんだがすまない、ちょっと乗り心地が普段より悪いかもしれないな」
「あの、気にするところはそこではありません」
その日、空の青が眩しい日に、私はこの何とも言いがたいユリウス皇帝陛下により王国から攫われてしまったのでした。
みにくいアヒル姫は白鷲王にさらわれて溺愛監禁ライフを送ることになりました 雛あひる @hiyokomen
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