身もフタもない恋愛詩

ヤマシタ アキヒロ

第1話

  身もフタもない恋愛詩



  desire

女性にとっては

たんなる体の成長に過ぎないものが

男性にとって

とてつもない憧れの対象となる


逆に男性にとって

わずらわしい日常の習慣が

女性にとっては

母性本能を刺激するものらしい


面倒だね 人間ってのは

幻想がないと

どうにも生きられない


  nature

しかし だからと言って

動物のように

敵に襲われないために 

三秒で済ますというのも

味気ない話だ


やはり幻想を持ちだすことで

世界は豊かになり

物語や詩が生まれ

絵画や歌が生まれる


人間の人間たるゆえんだ


と同時に

幾多の悲劇がそこから発生するのも

事実だけれど


  fire

思えば

人間が火を使い始めたのと

それは同期するかもしれない


炎―――


使い方一つで

利器にもなれば

凶器にもなる


恋愛もまた

炎の一種だとすれば

……


  future

私はいま

思春期をとうに過ぎた

みじめな敗残兵だけれども

可憐な花を思う気持ちは

誰にも負けない


たとえそれが

社会的に望ましからぬ

不道徳な願望であるとしても


見たまえ

先人たちの逸話は

比類なき励ましだ 


島崎藤村もルイスキャロルも

ピカソも三島由紀夫も

みんなみーんな

不謹慎な恋の虜だった


  declare

私は縁日で買った

安っぽい仮面をかぶり

世の中の偏見と

ひとりぼっち闘う

それに押し潰されないよう

求愛のダンスを

一生かけて踊るつもりだ


野次馬どもに糾弾されないうちに

大胆に

かつ用心深く


そこに私の生きる理由がある

と言っても過言ではない


               (了)

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身もフタもない恋愛詩 ヤマシタ アキヒロ @09063499480

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