第4話
城本は出張中の課長からの電話電話を取るといきなり怒り出した。
「元気野郎って何だよ」
「え?」
「とぼけんな、お前、電話に出て早々、『元気野郎です』って言ったよな。お前、馬鹿にしてんのか」
そんなことないです、と必死に弁明したが先輩の声色はどんどん鋭くなっていく。
「認めるとはいい度胸だな、俺が帰ったとき覚えとけよ」
先輩の例だけでなく、ことあるごとにいわれのない出来事で周りから顰蹙を買うようになってしまった。
逆転性反応症が頭をよぎり、この前の医師に勧められた心療内科に行った。
「逆転性発言症ですね」
「正転性……」
「逆転性発言症、ですね。あなたが思っていることと真逆の発言をしてしまう症状です。通称、〈天邪鬼病〉と呼ばれています」
「もしかして治療法って……」
「お察しのとおりコレというものはありません。ストレスをなくすと緩和されますがそれまでは思考と逆のことを言ってしまうことを念頭に頭の中で入れ替えて発言するしかありません。あとは職場の人に自分の病気を告白して理解を得ておくか」
城本は大きなため息をついた。今度は自分が逆のことをしてしまうなんて。城本は先生に言った。
「もうこの病院に来るのはこれっきりにします」
逆転性反応症 佐々井 サイジ @sasaisaiji
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