番外編 不動 澄恵 愛ゆえに・・・8/8


最終話     愛ゆえに


-------------------



「ねぇにいさん、これで良かったんですか?」


私は連休になる度に、剣一君の所に泊まりにきていた


「ん?会社を君の御父さんに譲った事かい?それともこの体の事かい?」


私は、剣一君が一人でここにいる事に不安を感じていた、前みたいに急に倒れたらとか思うと毎日のメッセージのやり取りが少しでも途切れると不安で目の前が真っ暗になる


そして何か考え事をしてる剣一君の表情をみると他の女の事を考えてる様だ・・・・クズの幼馴染かクズの琴音か・・・


私の表情に気付いたのか心配ないと微笑んで答えてくれる


「まぁ全く動かせない訳じゃないからね、多少不便だけど、その気になればお手伝いさんでも雇うよ」


「だったら私、大学卒業したら、正式にお兄さんの所に住み込みで永久就職します!」



それから此処にくると恒例の陽香叔母さんへの挨拶を終え、いつもの様にご飯の用意をして二人で昼食取り庭で寛いでいる


剣一君はさっきまで読んでいた新聞を机に置くと、スマホでメッセージを確認していた


【ピコン】私にも通知がきたので確認するとあのクズの幼馴染だ


姫【今日出てくるみたい】


前に久しぶりのメッセージで近々池月のクズが出所するという連絡があったらしい、その際に色々と考えを聞いていたが、自分の中で騙された事を許せない自分と池月を愛していた自分の境目がはっきりしない不安定な様子だった


支離滅裂・・・まさに精神を病んでいるのか池月の出所というワードに錯乱しているのか何れにしても結末は見えてる・・・


黒羊【そっか、いよいよだね】


姫【黒羊ちゃん行ってくるね】


黒羊【わかったよ姫ちゃん】


姫【それじゃ、さよなら】


黒羊【さよなら】


背後に気配を感じ振り向くと剣一君にメッセージを見られていた


「ちょっとぉ~♪女子大生のスマホを覗き込むとか、もう従兄さんには責任とってもらうからぁ~♪」


「澄恵ちゃんて、SNSのアカウント【黒羊】だっけ?」


「うんん違うよこれは、ゲームで使ってるアカウント、でも今日で一緒に遊んでた人も居なくなるから、このアカウントも削除しちゃうの~♪」





多分、剣一君は気付いてるのだろう、この姫という送り主が誰なのかを、そしてこのメッセージの先に行きつく未来を

「・・・・・・」




その晩は今までで一番激しいセックスに夢中になった、不自由な剣一君も精一杯頑張ってくれて何度もお互いの体液を交換しあって朝まで愛し合った


翌朝私がベッドで目を覚ますと、横に剣一君の姿がなかった、私は言い知れぬ不安を感じ服も着ずに家を探し回る


(剣一君・・・けんいちくん・・・けん・・・)


そこには椅子に座りテレビを見ながら寝ている剣一君がいた・・・


「剣一・・【昨晩、東京湾岸の港にて黒の軽自動車が沈んでいるのを近くを通りかかった男性が発見しました、第一発見者の男性の情報によりますと中には若い男女2名の・・・・


私は背後から剣一君に近づき声をかけ・・・「ん?何これ・・・」剣一君の手から何かの瓶が滑り落ちる・・・・































あれから5年・・・・・未だに剣一君は目を覚まさない・・・・私は剣一君の家に移り住み未だに昏睡してる剣一君の身の回りの世話をする


部屋に医療機器を設置してもらい剣一君の自宅で療養している、横に設置してる規則的に動く波形だけが私の心をこの世に留めてくれる




あの日、薬を飲んで自ら昏睡状態になった剣一君の懐には、【澄恵へ】と書かれた手紙が入っていた


そこには今まで剣一君のしてきた復讐のすべてが書かれてあった、私の知ってることも知らない事も・・・


そして別の紙には


【俺の為に、君が手を汚す事はない・・復讐は俺の為の俺だけの物だから・・君の罪も俺が連れていくから】

【君に被害が及ぶ前に、先の手紙をしかるべき機関に持ち込み黒羊は俺の指示でやっていた事にしてくれ、君が俺の救いの無い復讐の物語から解放される事を望む、ありがとう澄恵、どうか幸せに】


























「剣一君・・・お誕生日おめでとう・・・今日で26歳だね・・・私も24歳になったよ・・・」



そっと剣一君の頭を撫でてると少し眉が動いた気がした

私は剣一君の手紙を陽香さんの墓前にて燃やした


もし剣一君が裁かれるなら、私も同罪として裁かれるつもりだった

しかし、一連の事件は全て事故や無理心中として処理されて終息を迎える

剣一君は、一命は取り留めたが、大量の薬の影響で昏睡が続き未だに目を覚まさない


「ふふ、おめでとうって言われるのが、恥ずかしいのかな?」


食べては貰えない手作りケーキをテーブルに置いて、先ほど体を拭いたタオルを片付ける


「早く起きて、私の作ったケーキ食べてね・・」


そうして部屋を出ようとした・・・・・・





























『ありがと・・・・澄恵・・・・ただいま・・』













番外編 完結








      【   FIN   】





----------------------

最後迄読んで頂けて嬉しいです。

有り難う御座いました


           nayaminotake

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【330万PV感謝 完結済】幼馴染みをネタに脅されてイジメを受け入れたが、俺をイジメてた奴と幼馴染みが出来てたと知って思いやりと言う感情を捨てた俺は持てる全てで復讐する nayaminotake @nayaminotake

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ