第80話 告白――細雪舞ふ白け時
【前回のあらすじ】
# ♪ ♭
今度こそ完膚なきまでに叩きのめすつもりでいた
とはいえ、数日経てば心の整理もつく。
部活が休みの今日、
「
「その話はもういいですって。オレもいい加減、気持ち切り替えてますんで!」
金獅公騙し討ちはぴあ
当然、
『あなた一人で始めた戦いのつもりかもしれませんが、わたくしたちだってとっくに当事者ですのよ? ご自分だけで背負い込まずに、もっと堂々と頼ってくださいまし!』
こう言い返されては引き下がらざるを得なかった。
何より、仲間たち共々標的にされるのはわかりきっているのだから、前もって応戦の準備をしておくほうが危険は少ないといえる。
「それじゃ私、レもんちゃんと勉強頑張ってくるね!」
「はい。じゃあまた後で」
庭で待っていたのは、同居歴三週間の眼鏡っ娘カンフーファイター。
「
「大丈夫だ。テスト範囲は丸暗記してるからな」
ミナの指導のもと、
「左腕はもう少し早めに引くアル。右肩は指一本分低くして」
「おっ、いい感じだぜ。スムーズに力が伝わる気がするな」
関節を曲げ伸ばしする角度やタイミング、重心の位置などは技の威力に直結する。基礎だからこそ、おろそかにはできない。
「
「だろ? でも記憶っていや、何か忘れてる気がするんだよな……何度も聞いて
しつこいとは思ったが、
「……じ、実は……」
周囲を気にしながら、ミナは過去の行いを白状した。レもんの居場所を尋ねた際、
今になって
「ビルの壁ぶち抜いた時のあれか!? 衝撃で記憶が飛んじまってたとは驚いたぜ」
「誠にごめんなさいアル……」
ミナは心苦しそうに頭を下げるが、元はといえば
「いや、オレこそ早とちりして悪かったよ。それよりあのすげぇカウンター技、オレにも教えてくれよ!」
「お安い御用アル!」
そうして二人で稽古を続けていると、ガレージに車が入庫してきた。
エンジン音が止まり、庭へ顔を出したのは、家主の
「あら、また二人で訓練してるのね。仲良しさんだこと」
娘たちの様子に顔を
「ま、まぁな。バイト辞めちまった分、身体が
「……あなたたち、何か大変なことをしようとしてるみたいね」
案の定、母は娘の言動に潜んだ異変の匂いを嗅ぎ取っていたらしい。
「ママさん……」
「しゃあねぇ。面倒がらずにオレの口から話しとくべきだよな」
ミナと別れた
リビングへ向かう傍ら、
魔王エムロデイの降臨。
その予測日は一月後の十二月二十五日。前回もジュンセリッツの出現場所や時間を割り出したシアティの試算に間違いはない。
来たるべき日のため、仲間たちと力を蓄え、魔王軍本隊と決着をつける。
たとえマキナたちが介入してこようとも、
娘の話を聞き終えた母は、あきれたような安心したような面持ちでソファに背中を預ける。
「やけに張り切っていると思ったら、まさか魔王だなんて。もし
「母さんも一応、錬金術師なんだろ? 何かこう、秘伝の術式みたいのでオレの身体をパワーアップしたりできないか?」
「そうねえ……」
考え込む母の後ろで、廊下を近づいてくる足音が聞こえてきた。
リビングの入口に姿を見せたのは、神妙な顔つきをした
お邪魔してます、と頭を下げた二言目に、
「お母さまに折り入ってご相談があります」
(おかあさま? ……お
「
(やっぱり!?)
にわかに張り詰める
*
十二月初めの放課後。
他校のセーラー服、くるぶし丈のロングスカート、何より180cm超の背丈は嫌でも目立つ。
だが同時に、待ち人にとってはいい目印ともなる。
優雅に波打つ薔薇色の髪をなびかせ、愛しのお嬢様がまっすぐに駆け寄ってくるのが見えた。
「お待たせいたしましたわ。さ、参りましょう」
「恐縮です。貴重な時間をアタシと過ごしてくれるなんて」
「
ぴあ
「ですから、それまでは
「こ、光栄です」
少し肌寒くなってきた。二人は急ぎ足で行きつけの喫茶店へと向かった。
温かい飲み物とケーキをお供におしゃべりを楽しんだ後、
「お誕生日おめでとうございます」
「まあ、可愛らしい!」
ブランドロゴがさり気なく入った、ローズピンクのミニポーチ。実は恩人からのアドバイスを受けての選択だった。
先月、ネルの誕生日にメリケンサックを贈った際、笑いながらたしなめられてしまった。
『
そんなネルの協力もあって、ぴあ
「ありがとう。大切にいたしますわ」
「それはよかったです」
店の外へ出ると、雪がちらつき始めていた。予報ではこの後もしばらく降り続くようだ。
名残り惜しいが、あまり長い間ぴあ
「バス停まで送ります」
人のまばらな公園を横切っていく。束の間の放課後デートは終わりを告げようとしていた。
(せめて雪さえ降らなければ……)
今日こそは、と心を決めてきたはずなのに、これではまた時機を逃してしまう。
(……いや。そんなのはただの言い訳だ)
「……
振り返ったぴあ
「ぴあ
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雅致(ガチ)百合学園トンデモニウム 真野魚尾 @mano_uwowo
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