変身
パンチ太郎
第1話
「坊ちゃん。新記録ですぞ!!」バイクに乗っていた男に話しかけた老人は、そう言って、男に近づいた。
「そうかい。もうちょっと早く行けたと思ったんだがなあ」ある財閥の御曹司の男はスポーツ万能で頭脳明晰、おまけに美男子と絵にかいたような幸運の持ち主であった。
「坊ちゃん。もうすぐ講義の時間ですぞ」
「そうだったな。急ぐとしよう」男はバイクで大学まで走っていった。男は大学で生物学、特に生物の運動能力についての研究を行っていた。
「であるからして、本日の講義は以上とする。」エフ博士の講義の後、研究室に尋ねた。
「エフ博士。今度は何の実験ですか?」
「ああ。筋繊維の回復を速めるための成分についての実験じゃよ。」
「これが完成すれば、人類に新たな光が見えるわけですね。」
「まあ、小さな一歩じゃがな」ひとしきり会談をおえて、男は自宅に帰ろうとした。
バイクを走らせていると、一本道に三人列を組んで道をふさいでいた。
「何かね、君たちは!!道を開けたまえ!!」男は言ったが、道を開ける気配はなかった。そして、真ん中の男が言った。
「こいつを拉致しろ!!」そう言って、2人の男はバイクから降り男にとびかかった。
「何をする!?こんなことしてただで済むと思っているのか。」2人の男の手を振りほどこうとしたが、男は気絶した。
「手間かけさせやがって。後ろにのせろ。くれぐれも落とすなよ。」
男は目を覚ますと、知らない天井がそこにはあった。縛られているらしい。気を失う前の記憶は、2人の男に進路を妨害され、そして、一人が、私に向かって、光線銃を向けてきた。そして、私は気を失った。すると、どこかから声が聞えた。
「お目覚めかね。」
「だ、誰だ。どうせどこぞの蛮族だろう。身代金を要求したところで無駄だ。私の正体を知っているならなおさら分かるはずだが。」
「そんな拝金主義に見えるかね。」
「金が目的でないのなら、何かな?何かを手伝ってほしいなら、こんな手荒な真似をしなくともよいだろ?」
「ふふふ。生意気な口調は後でしつけるとして、キミにはある手術を施させてもらった。その報告をさせてもらった。あとは、脳手術だけだ。麻酔がキレてしまったので、もう一度させてもらう。」すると、ものすごい爆発音がした。
「何者だ?」
「エフ博士!!」エフ博士は見事な手際で、男を拘束からといた。
「逃げるよ。」2人は爆破した穴から逃げた。
「おい、被検体が脱走した。げったいに逃がすな。」謎の声の主は、部下に追いかけることを命じた。
「エフ博士。なぜここに?」
「詳しい話はあとだ。」男はエフ博士のバイクの後ろに乗っていった。
「待て!!」後ろから追ってきたが。
「サイクロン号。全速前進!!」後ろのエンジンからものすごい勢いで火を噴き、追っ手をまいた。
2人はエフ博士の別荘についた。
「どういうことです。これは。」
「まず、キミは今日から本郷武として生きなさい。」
「え?」
「戸籍などは、キミのお父様に手配していただいた。それが、キミのためでもある。幸い、名前はバレていないらしいから。」男改め本郷は状況を飲み込めずにいた。
「キミの体は、奴らによって、変えられてしまった。鏡を見たまえ。」するとそこにはこの世のとは思えないバケモノの姿があった。
「これが、私か?何かのいたずらじゃないのか?」
「これが、彼らの正体さ。つまり、頭脳明晰でスポーツ万能なキミを一つ上の存在として改造させられたのさ。」
「何でそんなことを?」
「分からん。だが、私が長年苦戦している研究を奴らは、かなり高度なところまで持っているらしい。」
「それって?」
「君も知っての通り、細胞の回復、及び強化さ。私の研究では、将来にわたって医療の役に立てようとしていたのだが、まさか、こんな連中がいたとは。」
「では、先生も奴らに狙われて?」
「そうだ。あと、助手の緑川君も狙われた。私たちは神に誓ってもあんな奴らに手を貸したりせん。例え、命を狙われようともな。」
「ということは、先生が奴らの手先になったら....」
「基礎理論は知ってるからな。おそらく、細胞の流布に手を貸すことになるだろう。」
「そうなったら人類は...」
「終わりだろうな。」二人は今後のことについて話し合った。
「おそらく、また、奴らの刺客が送られてくるだろう。あと、また、犠牲者が増えるかもしれぬ。そうなればおしまいだ。我々は力を合わせて、戦おうぞ。」
「はい。先生。」すると、窓ガラスが突然割れた。
「ち。もう察知されたか。本郷君。ここを離れるぞ。」2人はバイクを出した。
「しっかり捕まっていてください先生。」再びバイクチェイスが始まった。
「撃て!!」敵は本郷の乗っているバイクを狙って撃ったが、エフ博士が光線銃で撃破した。
「何で、察知されたんですかね?」
「奴らは、動物の本能を引き出す力を持っている。野生のかんってやつだ。」
「どこに向かいましょう。」
「そうだな。その姿では市街地には行けまい。かといって、大学はやつらが張っている可能性がある。とりあえず、キミの父に船を手配してもらう。そこのラボに血清があったはずだ。」エフ博士は、本郷の父親に連絡をした。
「もうすぐ弾切れだ。これ以上動くと、船までたどり着きそうにない。本郷君。あそこの親玉と一騎打ちをしてくれ。」
「え?」
「バイクは敵から奪う。このまま逃げても、爆弾を仕掛けてくるだけだ。目の前のトラックが多分親玉だろう。やれ。」
本郷は、トラックから降りてくる男を見た。そいつも本郷と同じく、バケモノに変身していた。
「やれやれ。おとなしく捕まってくださいよ。」
「そうはいかない。お前たちはいったい何者なんだ?」
「仲間になれば教えてあげますよ。」
本郷は向かってきた黒ずく手の男たちに囲まれたが、パンチを繰り出した。すると、そいつの体は吹き飛んでいった。
「これが、俺の力?」本郷は複数人の男を次々の倒していった。
「ふふふ。見事なモノでしょう?どうです?人を殺した感想は?」
「おい!そいつの言葉を聞くな!!」本郷はハッとした。そして、親玉に攻撃を仕掛けた。親玉は、バク転をしてよけた。そして口からねばねばした糸を出した。
「何だ?」
「私はクモ男ですからね。苦しいでしょうバッタさん」
「バッタ?」それを聞いた本郷は、思いっきり飛び蹴りを喰らわれた。
「ぐはあ」クモ男は、そうして死んだのであった。
本郷はバイクに乗りながら、自分の手に伝わってきた感触について、思いを巡らせた。これは、危険すぎる。あいつらは、脳手術を受けさせようと必死だったが、それは、人を殺すことに対する罪悪感を減らすためだろうと、思われる。
「そういえば、緑川助手は?」
「彼は、死んだよ。体を改造するときに死んだらしい。おそらく体が弱すぎたんだ」
「そんな....」たしかに、さっきの戦いでとてつもない負担がかかっている。ほとんど運動もしたことのない虚弱体質の緑川助手はそれに耐えられなかったのだろう。
二人は船に乗った。そして、エフ博士のラボで血清を打った。
「はあ....フルマラソンを走った後のような気分です。」
「そうだろう。だが、これで完治したわけではない。君は感情が高まれば、さっきのような姿に変わってしまう。人前でその姿をさらせば、どうなるか分かっているね?」
「はい....」これから、彼には地獄が待っていた。なぜなら、喜ぶことも、悲しむことも、怒ることも、人前ではできなくなってしまったからであった。そのような存在は人間と呼べるのだろうか.....
すると、再び追手が現れた。今度は一人だけのようだ。
「博士!!奥の部屋で隠れていてください。」
「ああ。」
すると、頑丈なカギにかかっているはずの扉をいとも簡単に開けられてしまった。
「豚....?」
「コウモリだよ。バッタ君」
「バッタ君と言うのをやめてくれないか?俺は本郷武だ。」
「どうせ、偽名であろう。」
「お前をぶっ殺す}
「殺す?人間のキミがか?」本郷は再び謎の気持ちに襲われた。さっきの手下とクモ男を殺した時の感触を思い出したのだ。エフ博士は声を殺しながら念じた。「そいつの言葉を聞くな!!」とだが、本郷はさっきのバケモノに変身しようとしていた。体が徐々に変色し、鋭い牙と角をはやし、手も徐々に鋭利なモノになっていった。
「風だ。風の力だ。」
「何の話だ?」本郷は、コウモリ男に殴りかかったが、コウモリ男は空中にとんだ。そして、本郷に宙に浮きながら、銃弾を放った。本郷は全弾よけた。するといきなり後ろから銃弾が放たれ、コウモリ男は地面に落ちた。そして、本郷はコウモリ男を殴り続けた。とどめは刺さっているにもかかわらず。すると、本郷はまた、気を失った。
「本郷君。目覚めたかね。」
「エフ博士。」姿が元に戻った本郷は状況を理解した。暴走していた私を麻酔銃で眠らせたのであった。
「君は虫一匹殺せない、優しい人間だと思っていたんだが。」
「そ、それは。」
「奴らを殺すのは、バイクに乗るときくらい興奮するかね。」
「......。」なにも返す言葉はなかった。
「のんびり逃げながら、戦っている時間はないようだ。急がないと。心までバケモノになってしまう前に。」
彼らはついに、敵側のアジトを突き止めた。サイクロン号を加速させながら徐々にバケモノに変身していった。すると、アジトにたどり着く前に、100体くらいのバッタのバケモノがいたが、そいつらを蹂躙し、ボスの前へとたどり着いた。
「おかえり、今は本郷君かね。」
「ああ。死にたくなければ、俺をもとに戻してもらおうか」
「いや、そうはいかないよ。だって、キミがそれを拒んでるんだから。」
「え?」
「ふふふ。私の部下をよくも、壊してくれたねえ。でも、いいさ。人間などいくらでもいる。君は私の計画に賛同してくれると思うよ。だって、力が手に入ってしまったんだ。今までは弱者も大切だと思っていたかもしれないが、それは君が今まで無力だったからさ。でも、そんなことを気にする必要はなくなったんだ。」
「本郷君!!そいつを早く倒したまえ!!」
「エフ博士。もう十分じゃないですか?」
「そうだな。そう完成したも同然だ」
エフ博士は突然顔が変わった。イカの顔に変わり、そして、声の主も姿を現した。
「緑川助手!!」どうやら、本郷は二人によって洗脳されていたらしい。
我が国は大戦の敗戦後、特需景気やらなんやらで、好景気に持って行った。そして、本郷父によってこの財団が作られ、人間の更に上の存在を作り上げたのであった。
「戦ってくれるな。この国の為に。」彼らは愚かな戦争を再び始めたのであった。世界を征服するために。
変身 パンチ太郎 @panchitaro
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