正直者の石工と噓つきの石工

愛内那由多

正直者の石工と嘘つきの石工

 むかしむかし、あるところに石工の見習いがふたりいました。

 ひとりはとても正直者でした。

 もうひとりはとても嘘つきでした。

 あるとき、見習いのふたりは石工職人から石を積み、壁を作る仕事を任されました。石工職人はふたりに仕事を任せたのです。

 正直者の見習いは石工職人に言われたとおりに毎日毎日、来る日も来る日も、石を積んでいきました。

 嘘つきの見習いは全く仕事をしませんでした。いつまで経っても、石は積まれません。

 あるとき、正直者の見習いは嘘つきの見習いが仕事をしていないことを石工職人に伝えようとします。

 嘘つきの見習いは石工職人に仕事をしていないことを告げ口されることを恐れました。

 そこで、嘘つきの見習いは正直者の見習いの積み上げた壁を崩し、自分で新しく石を積み上げました。

 嘘つきの見習いが石を積み上げている所に、正直者の見習いと石工職人がやってきました。

 正直者の見習いの石は崩れています。

 一方、嘘つきの見習いの石は少しですが積み上がっています。

 石工職人はそれを見て、

「お前の壁は崩れている。なのに、告げ口をするとは何事か」

 と、正直者の見習いをクビにしました。

 うそつきの見習いは褒美を出され出世をしました。


 数日後、石工が住んでいる街を地震が襲いました。

 そのとき、うそつきの見習いの壁は壊れてしまい、うそつきの見習いは下敷きになってしまいました。

 石工職人は大急ぎでうそつきの見習いをがれきの下から引きずりだしました。

 しかし、その救助もむなしく、うそつきは死んでいました。


 この時になって、石工職人は、目で見たものだけを信じるのは、よくないと思うようになりました。

 石工職人は、正直者の見習いを呼び戻して、彼を一人前の職人にしました。



  


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正直者の石工と噓つきの石工 愛内那由多 @gafeg

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