八朔の呪言、田起こし人を喰むこと

中国地方の山深くに存在する朔日村。
瀬戸内海に面した立地の御多分に漏れず、
柑橘である八朔を多く栽培している。
そんな朔日村周辺で古くから祀られる

 土着の神『ツイタチさん』

それは「悪い事をした人間を食べる」と
伝えられている。尤も実際に手を下すのは
神の配下の山に棲む動物達。情け容赦なく
人間を喰い尽くす。
 助かりたければ只ひたすらに謝ること。
恰も、得体の知れない強制(共生)が
今も脈々と続けられている。

物語は、少女の腹を裂き内臓を咀嚼する
青年が強制連行される場面から始まる。
不穏な空気と衝撃的な描写の中で、只
淡々と少女だった肉塊を喰む青年。

何故、こんな恐ろしい事態に陥ったのか?
青年の友人は次第に呪わしい因縁に呑み
込まれてゆく。更にこの因縁に、ヤクザの
男、その妹と恋人、様々な人々が絡め
取られてゆく…。

古い寒村の因習と、都会へと出ても尚、
決して解放されない、呪い。
人を喰う、という最大の禁忌に於ける
規則性とは。

 これ程、怖いと思う作品にはなかなか
お目にかかれない。
 
けれども決して怖いだけではなく、とても
魅力的な登場人物達に嵌る事、請け合い。

物語はまだまだ続く。

目を覆いたくなる様な、それでいて
一瞬たりとも目を離す事が出来ない様な。


この目眩く世界の目撃者とならん事を。