八朔の呪言、田起こし人を喰むこと
- ★★★ Excellent!!!
中国地方の山深くに存在する朔日村。
瀬戸内海に面した立地の御多分に漏れず、
柑橘である八朔を多く栽培している。
そんな朔日村周辺で古くから祀られる
土着の神『ツイタチさん』
それは「悪い事をした人間を食べる」と
伝えられている。尤も実際に手を下すのは
神の配下の山に棲む動物達。情け容赦なく
人間を喰い尽くす。
助かりたければ只ひたすらに謝ること。
恰も、得体の知れない強制(共生)が
今も脈々と続けられている。
物語は、少女の腹を裂き内臓を咀嚼する
青年が強制連行される場面から始まる。
不穏な空気と衝撃的な描写の中で、只
淡々と少女だった肉塊を喰む青年。
何故、こんな恐ろしい事態に陥ったのか?
青年の友人は次第に呪わしい因縁に呑み
込まれてゆく。更にこの因縁に、ヤクザの
男、その妹と恋人、様々な人々が絡め
取られてゆく…。
古い寒村の因習と、都会へと出ても尚、
決して解放されない、呪い。
人を喰う、という最大の禁忌に於ける
規則性とは。
これ程、怖いと思う作品にはなかなか
お目にかかれない。
けれども決して怖いだけではなく、とても
魅力的な登場人物達に嵌る事、請け合い。
物語はまだまだ続く。
目を覆いたくなる様な、それでいて
一瞬たりとも目を離す事が出来ない様な。
この目眩く世界の目撃者とならん事を。