第24話 戦う盗賊の道 23
今日から、ダンジョンの二階層に行くことになっている。
ダンジョンの一層と二階層では難易度が段違いに上がるらしい。
モンスターが出る、ダンジョンの部屋も一つ一つがとても広くなり、100m×25m位の部屋になって、部屋には何故か草木が生えており、視界が悪い部屋が多くなる。
又モンスターも、ウルフとオークがメインで、好戦的な性格らしい。
ウルフは狼のような魔物で、草木の茂みなどから、いきなり襲撃してきたり、集団で襲いかかってくるらしく。
オークは180cm~200cmの巨体で、猪の顔をした二足歩行の魔物で、力が強く、武器も鉄性の物を持っていたりする為、かなり強くなり難易度が段違いに上がるとの事だ。
罠部屋に関しては、余り変わらないため基本的に罠部屋を通過するのがセオリーとなっている。
ただしボス部屋で、ハイウルフとハイオークを2体同時に相手をしないといけない為、ダンジョン職の人は、二階層を飛ばして、三階層へ向かうパーティーが多いそうだ。
ちなみに三階層は、コボルトの巣と言われており、数が多いだけで、コボルト自体は強くないらしい。
ではわざわざ行かず、飛ばしてしまえばいいのだが、盗賊はそうは行かない。
ダンジョン職の場合、ベテランの人にお金を払い、ボスの部屋を一緒に入りクリアしてもらう事で、出入りが自由になる。
しかし二階層のボスのハイウルフは、動きが早く変則的な動きをするらしく、危ない為案内人の盗賊は、ボス部屋には一緒に入らず。
戦いが終わると、呼ばれ宝箱が出れば開ける仕組みになっている。
なので盗賊だけダンジョンに潜り続けるには、二階層の突破が必須になっている状況となった。
ダンジョン職には、盗賊ギルドとして一応要請をかけた物の、只でさえ面倒な金にならない仕事な上に、どうやら俺の評判が悪すぎたらしく、もちろん力を貸す人はいなかった。
個人的には、借りを作ると返さなければならない状況になる、可能性もある為断ってくれて良かった。
そんな事を考えながら、ダンジョンの前で待ち合わせに向かう。
今日のメンバーは、カーターさんとククリ、ニャールの4人だ。
このパーティーは、バランスが取れて来ていて、俺とククリが主に短剣で戦う前衛(いわゆる脳筋)、カーターさんとニャールが投げナイフで戦ったり囮役となる後衛になっている。
もちろんニャールもカーターさんもある程度は短剣で戦える。
カーターさんたちと合流し、ダンジョンに入り二階層の階段を登る。
「今日は、様子見だから一番見通しの良い部屋で戦ってみよう。
確かオークが5体とウルフが8体ほどいる部屋らしい。
手前がウルフで奥がオークだから、ウルフを手前に呼び寄せれば、オークはこちらによってこないよ。
ウルフは、投げナイフで始末できるはずだけど数が多いから気をつけ事だ。」
カーターさんが説明してくれる。
罠部屋も解除に時間がかかる物が多くなっており、なかなか手間がかかる。
ようやく部屋までたどり着き、中の様子をみる。
部屋は明るく、情報通り横幅25m 縦100m 位で真ん中に3m位の道があり、道の横は60cm位の丈の草が生い茂っておりウルフが視界には、確認できない。
奥にはオークの集団が木の陰に座り込み休んでいる。
「ウルフは右側に6匹いるね。」
ククリが草が揺れている辺りを指指す。
「あと左側に2匹いる。」
カーターさんが左側も指を指すが、俺とククリはわからなかった。
きょとんととしていると、ニャールがナイフを投げると左側からナイフめがけ、かなりの速度で、飛び出してきた。
「戦ってばっかりだから、索敵ができないのよ。」
ニャールが、ニヤリ笑い謎のマウントを取ってくる。
「索敵は、ニャールがいるから安心だな。
けどあの速さで飛び出してくるなら厄介だな。」
「けど避けれなくはなさそうだからとりあえず突っ込んでみるか?」
ククリは脳筋全開で、そんな事を言い出した。
最近のククリは、完全に戦闘狂になってきて、素早さと器用さを生かしとりあえず敵にナイフを投げ、突っ込んで瞬殺するかカウンターを狙うスタイルだ。
この前なんかは、一階層のボス二体を、一人で瞬殺する何て事までやってのけた。
元々心が強いだけはあり、ギリギリまで踏み込めるタイプの人間である。
ただまだ子供な為、最近は行き過ぎな部分があり、危うさも見える。
「とりあえず、オレとククリが囮になって、ニャールとカーターさんが、投げナイフで迎撃して貰おうか。」
4人で作戦を立て、部屋にはいる。
オレとククリが、ウルフの前の草むらまで、辺りまで走る。
ウルフが飛び出してきた所で、折り返す。
折り返す瞬間ククリを見ると立ち止まり短剣を抜き迎えうとうとしている。
カーターさんとニャールと目が合い、焦りが見える。
「ククリ作戦通り動け」
俺も足を止め、怒声を上げながら投げナイフと短剣を抜く。
2人でウルフに囲まれ、飛びかかってくるウルフに向かって短剣を指し、投げナイフで牽制する。
部屋の入り口側のウルフはカーターさんとニャールがうまく投げナイフで処理してくれた為何とか、ウルフを牽制し避けれつつ、全部倒しきれた。
「一回部屋をでよう。」
ククリにそう伝え、カーターさんとニャールと全員で、部屋をでる。
カーターさんがククリに何かを言おうとした瞬間、俺がククリに掴みかかり、一発殴る。
「ふざけるなよ。
作戦無視して、死んだらどうするんだ。
全員を危険にさらしたんだぞ。」
ククリの襟元を掴み、睨み付ける。
「いけると思ったし、ビアンキだって無茶する時はあるだろ。」
ククリもこちらを睨み付けくる。
「俺が無茶する時は、自分が危険でどうしようもないか、誰かが危険だから無茶するしかない時だけだ。
お前のは、ただ危険を撒き散らしただけだろ。
もしさっきみたいに動くなら先に作戦会議の時に言うべきだ。」
「でも、もしそう言った所で作戦を変えたりしないじゃん。」
不満そうにククリは口にする。
「当たり前だろ。知らないモンスターだし、舐めてかかって、死んだらどうする。
いいかダンジョンは、遊びじゃない。
今だって、もしウルフが思った動きをしなかったらどうした?
たまたま牽制がきいて、1匹つづ飛び込んで来たから良かったが、牽制を無視して、全部一気に突っ込んできたら死んでたぞ。」
ククリを睨み付ける。
「それは、そうだけど・・」
拗ねた様子のククリが不満そうにしている。
「わかった。
ならククリとは組めない。
俺はダンジョンで命を賭けるつもりはあるが、わざわざ命を無駄に賭けるつもりはない。
お前のやり方で進みたいなら、俺はお前とは組めない。」
はっきりとククリに宣言する。
ククリは年の割りには強いのだ、慢心するのはわかる。
正直俺も少し慢心していた部分はあるが、わざわざ危険に、飛び込んだりはしない。
多分前世の知識や経験などから、安全マージンを取っている。
他の人から見れば危険なのだろうが・・・
「待ってくれ、俺が悪かった。」
ククリは、焦りながらこちらを見る。
「何が悪かったんだ?
不満があるなら言えよ。
ダンジョンは命賭けだ、信用できない仲間ほど怖いものはないかなら。」
試すようにククリを煽る。
「勝手なことしたのは、悪かった。
けど試してみたかったんだ。
ウルフは確かにでかいし、速いけど大したことないように見えたから・・」
ククリは、少し反省している様子になる。
「ククリ、確かに俺たちは、年の割に盗賊の中では強い、けどダンジョンのモンスターも今回みたいに連携して動いてくるんだ。
一匹一匹はたいしたことなくても、数がいると何が起きるかわからない。
だから勝手なことはするな、もちろん俺もしない。
ただし、仲間がヤバいなら別だがな。」
真剣な表情でククリを見る。
「俺が、悪かったよ。」
ククリが本当に反省した様子の為、俺はククリの胸元から手を離す。
その後、ククリはカーターさんとニャールからも説教されて、その日のダンジョンは終わりとなった。
盗賊(アサシン)の罠解除(トラップ・リムーブ)~ダンジョンのある世界で盗賊は不遇職?~ たつぼう @tatubo1237
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