第48話 悪い子は?
Side:サーバン
フーリッシュ侯爵の密偵。
ほんとは使用人なんだけどね。
偉大なグルメ評論家だと思っている。
コーヒーフロートの生みの親サーバンを讃えよ。
シナグルに作り方を聞いたのは内緒。
フーリッシュ侯爵から、シナグルさんに依頼を出すから、その品の核石をすり替えろと命令が来た。
すり替える核石を起動してみた。
「控えおろう!」
なに、この魔道具。
子供の玩具。
これをシナグルさんの神魔道具とすり替えろって。
いや、無理だから。
密偵だけど、工房の中に潜入するなんて技術はないから。
仕方ない。
ぶっちゃけよう。
洗いざらい喋るんだ。
ええと、誰に話そう。
一撃のソルと、殲滅のマギナは除外。
ピュアンナさんもちょっと冷たく見える。
となるとスイータリアちゃんか。
君に決めた。
「僕はシナグルさんの敵のフーリッシュ侯爵の密偵なんだ」
「知ってたよ」
「えっ?」
「だって呟いてたじゃない。みんな知っていると思うな」
独り言を聞かれてたのか。
いや距離がある聞かれてないはず。
「素晴らしい推理と言っておこう」
「ソル姉さんの得意技は聞き耳って知ってた? 身体器用化との合わせ技で小さな音を常に拾うの」
「なんだって」
「シナグルお兄さんのスキルは傾聴。音を聞くスキルだよ」
密偵だって知られていたのか、もっと早く報せてくれれば、苦労しなかったのに。
ヒヤヒヤして損をした。
そうだ、命令だ。
「それで核石をすり替えるように言われている」
「うん、罠を仕掛けましょう。あなたはただすり替えに成功とだけ言えば良いわ」
スイータリアちゃんが、シナグルさんの所から核石を持ってきた。
そして、スイータリアちゃんが溜石と導線を繋いで使うと、跪かないといけない気になって、自然と跪いていた。
スイータリアちゃんが偉大な人物に見える。
これは凄い魔道具だ。
王が使うべき魔道具だ。
「これを渡して良いのか」
「うん、侯爵から宮廷魔道具長の手に渡って、王様の所に行くから。それにその魔道具を打ち消す魔道具も作ってあるの」
「じゃあ安心だ」
ポイントカードが光った。
これで良いってことなんだな。
後は知らない。
僕は言われた通りにしただけだから。
コーヒーフロートを飲んで忘れよう。
Side:ホロン・フーリッシュ
宮廷魔道具師長であるホロン・フーリッシュである。
遂にシナグルの評判を地に落とせる。
どうだ思い知ったか。
シナグルの所からすり替えて持ってきた核石を王冠に付ける。
威圧の魔道具に相応しい外観だ。
「ふふん♪ふん♪」
鼻歌が出る。
実にいい気分だ。
そして、納品の日がやって来た。
王の前で片膝を付いて、王冠の魔道具を差し出す。
そしてお付きの者がそれを王様に渡した。
大臣はペンダント型の魔道具を持っている。
「顔を上げるが良い。さて、注文した威圧の魔道具は二つある。比べて優劣を決めたいと思う」
「ははっ」
王冠の魔道具を使うと、皆が跪いた。
やった。
ペンダントの魔道具を使うと控えおろうと声がした。
「流石、シナグルが作った魔道具ですね」
大臣がそんなことを言う。
いや、シナグルが作った王冠の魔道具の方が、悔しいが凄い。
だが、だがー、今は俺の功績。
大臣が王様にメモを渡す。
「確かめろ」
メモを受け取った騎士が、ナイフを使って核石を外す。
「王冠の方の核石にシナグルのサインがあります。ペンダントの方にはホロンのサインが」
「ふむ、シナグルは見事よな。後で褒美を渡すとしよう」
俺はこそっと退出しようとして、騎士に首根っこを掴まれた。
「ホロン・フーリッシュ、悪い子はどうなるか知っているか?」
王が穏やかな口調でそう言った。
「ええと、罰せられます」
「巷では義賊王が迎えに来ると言われておる」
そう言って寝ない子供を脅すのだとか聞いたような。
「聞いたことがあります」
「おう、呼んだか」
この場に場違いな盗賊風の男が入ってくる。
盗賊風の男は、十字架を出すと、俺の額に押し付けた。
逃げたいが、騎士に羽交い絞めにされている。
「善人になっちまえ」
あー、良心の痛みが俺を襲った。
「ケアレス殿から、不正の証拠も預かっている」
大臣が帳簿を見せた。
「分かってます。俺はなんて罪深いことを。全財産を差し出します。足りない分は働いて返します」
「善人ならこいつは使えるな。絶対に裏切らないんだろう。わしの下でこき使おう」
王がそんなことを言った。
はい、こき使って下さい。
善良にお勤めします。
宮廷魔道具長の肩書はそのままで、王から回される色々な帳簿をチェックする係になった。
ふむ、ここに改ざんの痕跡がある。
さんざん、帳簿を弄った俺だから分かる。
改ざんの手口は嫌というほど知っている。
不正の証拠は一目瞭然だ。
従弟の、ファットには上手くいっていると手紙を定期的に書いた。
これでいい。
俺は善人として生きる。
あとで、ファットも善人にしてもらおう。
――――――――――――――――――――――――
コンテストは10万字なのでここで終りです。
たぶん、あとで取り下げて、『魔道具は歌う』の後にくっ付けようと思います。
なので再開は来年か再来年頃になるかと。
魔道具は客を招く~魔道具の呪文を唯一理解している俺を、宮廷魔道具師長と、魔道具大学教授から解任だって? もう国がどうなろうが構わん。解任ざまぁしながら、のんびり魔道具百貨店をやるよ~ 喰寝丸太 @455834
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