第47話 人探しのテア

Side:テア

「よう、人探しの」

「あっ、義賊王さん」


「この間の人身売買組織は美味しかったぜ。子供を親に返したら感謝されることと言ったらなかったぜ。子供が行方不明でそういう奴らが関与してたら、報せろ」

「違法奴隷にされた子供達も親に返してあげたいな」

「ぬかりはないさ。奴ら顧客名簿を持っているから、善人にしちまえば芋づる式よ。死んでなければ何とかなる」


 ポイントカードが光って、ファンファーレが鳴った。

 猫が見つかって飼い主に戻されたみたい。


 作ってもらう魔道具は迷子の親探しの魔道具を頼もうかなとも思ったけど、特殊な場合しか使えない。

 うーん、難しい。

 召喚の魔道具なら、大抵の場合はシナグルさんが使ってくれる。


 人の居場所を探す魔道具?

 召喚したほうが手っ取り早い。


 召喚の魔道具を貰うべきかな。

 これなら猫探しでも対応できる。


 よく考えないと。


「テアちゃん、考え事」


 生地を千切って、パンの形に整えていたらスイータリアちゃんにそう言われた。


「うん、シナグルさんにどういう魔道具を作ってもらおうか考えてるの。人探しは召喚が便利よね」

「ええ」

「もっと便利な物がないかなって」

「召喚の魔道具でいいんじゃない。そうすれば猫探しも効率アップして、またポイントが溜まるよ。何も一生でひとつというわけじゃないんだから」

「それもそうね」


 召喚の魔道具を作ってもらった。

 もっぱら、その用途は、猫探し。

 人探しは色々な事情が絡む。


 大人がいないと色々と対応できないことが多い。


「行方不明の父を探して下さい」


 20代ぐらいの女性に頼まれた。


「居なくなったのは?」

「1年前です」


 悲しい報せをしないといけないのかもね。

 亡くなった人は召喚すると、骨とか土が召喚されてくる。


 女性が召喚の魔道具を使って父の名前を呼ぶ。

 反応がない。

 お父さんの記憶がないってこと。

 嘘を言っている?


 でもその必死さは演技とは思えない。


「考えられるのは。分からない」

「そんな」

「大丈夫、久しぶりに3人に尋ねる作戦をすればいいだけだから」


 行方不明の人の過去の情報が次々に集まる。

 そうよね。

 この街で暮らして来たんだから、知り合いも多いはず。


 その中の情報で気になる物があった別の街で見かけて違う名前で呼ばれていたと。

 そう言えばレイラちゃんの時にママという名前では反応しなかった。

 家族にまで偽名を使うなんて。

 これは大事件になりそう。


「義賊王さん、行方不明の人が偽名を使っているみたいなんですけど」

「そいつはきっと裏の者だな。俺が調べてやる」


 本名は分からないけど偽名のいくつかは分かった。

 相変わらず、どの名前でも召喚魔道具には反応なし。


 猫を召喚する、ポイントカードが光って、ファンファーレが鳴った。

 交易都市は人口が多いから飼われている猫の数も多い。

 依頼はしょっちゅうある。

 見つかるとみんな大感謝する。


 名前探しの魔道具を作ってもらおう。

 そうすれば偽名のお父さんも見つかるはず。


 名前探しの魔道具を作ってもらった。


「お父さんの名前を教えて」


 依頼人が使って本当の名前が判明。

 お父さんが召喚された。


「はっ、魔法で拉致されたのか」

「お父さん、私の顔も見忘れたの」

「娘の顔を忘れるわけない」

「酷いよ、今まで本当の名前を隠してたなんて」

「本当の名前を知られてしまったか。俺は犯罪者だ。いつ捕まるかビクビクして過ごしてた。結婚したが、恐くて本名は名乗れなかった」


 うん、まだ成人してない私には難しい話ね。

 罪が消えることもないし、このまま自首したらたぶん刑務所ね。


 義賊王さんの決死隊にはいれたくないような気もする。

 こういう難しい話は大人になんとかしてもらいましょう。


「ええと、シナグル魔道具百貨店でポイントカードを貰うの。良い事をすればポイントが溜まる。ポイントが溜まってファンファーレが鳴ったら、免罪をシナグルさんに頼むの」

「それで父さんの罪が消えるの?」


「たぶん、王様にも貸しがあるみたいだから、手配書を全てないものとしてくれるはず」

「足を洗えるなら、良い事をするよ」


 こんな解決で良かったのかな。

 シナグルさんに丸投げだけど、ファンファーレが鳴る程の善行を積んだのなら、赦されてもいいかも。


 そして、しばらく経ってあのお父さんがお礼にきた。


「頑張ってポイントを溜めて、罪を帳消しにしてもらったよ。次にポイントが溜まったら、世の中のためになる魔道具を願うつもりだ」

「そう、頑張って」


 名前を調べる魔道具は、大活躍した。

 なんでかと言うと、歴史学者が大挙して押し寄せたの。

 ○○王の第3子の名前は何とか調べている。

 いくつかの革命を起こすほどの新事実も判明したらしい。


 こんなことでも善行ポイントが溜まるのね。

 歴史学者さん達が感謝しているってことみたい。


 連日スイーテア・パン店に来て、パンを食べながら、あの王の側室は、腹違いの妹の子供だったとか言って奇声を上げている。

 そんなことが分かって何が嬉しいのか。

 ポイントが溜まったら、召喚魔道具と名前探し魔道具の核石のスペアを作ってもらいましょうか。


 スイーテア・パン店は今日も平和です。

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