靴下を脱いだら

市瀬まさき

靴下を脱いだら

半顔のバイキンマンが倒れ伏す線路の先にアンパンマンも


「捺印をお願いします」との君に嫁ぐつもりで決裁の赤


空を突く赤い鉄塔 棒グラフたちも負けずに逞しくあれ


丁寧な言葉遣いでやってきた太い眉毛がか黒く燃える


「終わるまで力合わせて頑張ろう」プロポーズなら喜べたのに


孤島から会社の明かりを見守る ぬるいミルクを抱えたままで


玉ねぎを痛めつけては予習する涙を零す目の使い方


臆病なランドルト環が震えて0.1の出口も消える


バスタブに沈んでいると思い出すエラ呼吸すらできないジブン


「ありがとう」と伝えたくて向き合えば世にも奇妙なちっぽけな「あり」


濡れながら震える声に会いに行く「愛してるよ」とルビを被せに


地下鉄のドアが開けばガンダムに乗る意気込みでつり革を噛む


子どもたちをターゲットと呼んでいる静かな君にアサシンの影


神様に問い合わせして二十年 毛穴の息がまずは途絶えた


奪われた2mlに気づかない体重計はいますぐ首だ


新橋の補給基地にてカラフルな燃料積めばオールグリーン


種無しは能無しなのか確かめる黒く熟した葡萄の味で


ミサイルが飛び交うニュースを眺める腫れた瞼にビールを当てて


握り込む爪の先から蘇る海苔の香りが導く家路


靴下が丸まる音をジングルに家族を守る親に変身

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

靴下を脱いだら 市瀬まさき @ICHiNoSE_Ux_xU

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ