第21話 勇者の進軍

エリアス・ウィリーがいた元の世界

西暦1997年7月20日

冬の南半球、南米大陸、某共和国某市某区


ギジェルモは妹のソニアと派手に喧嘩した。

妹は1年前に日本へ帰国した元隣人のリュウイチと電話と手紙のやり取りをしていたのは気に入らなかった。

あのハーフ日本人の青年が大嫌いだった。ギジェルモはアジア人、特に東アジアの人間が大嫌いだった。


「ウィリー兄さんにはわからないわ。彼はとても優しく、気配りもできるのよ。」


「あんな中国人野郎はどこがいいのかよ!!黄色猿の血で欧州人系の高潔な血を汚すな、ソニア!!」


「中国人じゃないのよ、リュウイチ君は日本人だよ、この国の人間でもあるのよ。」


「汚いアジア人であることに変わりねえだろうが。。俺に口答えすんな!!」


ギジェルモはソニアに強烈なビンタをした。


「ウィリー兄さん、ひどいよ。」


妹は泣きながら、家の2回に上がり、部屋に閉じこもった。


ウィリー(ギジェルモの愛称)はずっとあのハーフ日本人を目の敵にしていた。

そして嫌がらせすれば、するほど自分自身の評判が落ちるのは耐えられなかった。

兄妹の母親もアジア人蔑視思想を持っていたものの、息子と違い、恐怖と無知からくるものだった。彼の蔑視は純粋な憎しみ、悪意からくるものだった。


3つ違いの妹はあの青年が大好きだった。隣人が母親の母国である日本へ帰国した時には飛び跳ねるように嬉しかった。やっと大嫌いな輩が自分の目の前から消えたから。そしてその喜びが砕け散った。ソニア、彼の妹はその猿と手紙のやり取りをしていて、時々あの猿から長距離電話をもらっていたのは先ほど知った。


ウィリーの母もその事実を知っていたが、可愛い娘の恋を応援していた。母親は旧ユーゴスラビア連邦系の欧州人の2世で父親はスペイン人2世だった。

父も母も妹の恋を認めて、兄である自分には教えなかった。たまたま父親の紹介で嫌々している仕事から無断早退したため、妹があの猿と電話で話しているのを聞いたため、すべてが発覚した。


そしてウィリーは聞いた。


「リュウイチ君、待っているよ、もちろん、喜んであなたと結婚するよ。」


妹のソニアのその言葉がずっと木魂のように頭の中に響いていた。


「あの猿、必ず殺す。」


ウィリーは再び車のキーを取り、父親が自分にあげたアウディ 90に乗り、街中へ繰り出した。


「猿め、猿め、殺してやる、殺してやる!!ソニアとの結婚は認めねえぞ!!クソが!!」


海沿いまで車に乗って、猛スピードで飛ばしていたが、街中の速度制限を守れず、パトカーに追いかけられることになった。


「振り切ってやる!!捕まっても、親父のコネで出てやるぞ!!」


怒りと傲慢さに身を任せて、自暴自棄になりながら運転していたウィリーは急なカーブを曲がり切れず、ガードレールを突き破り、海沿いの崖に車ごと落ちていった。


海と砂浜の間に落ちると思い、腕で顔をガードしたが、自分自身でもそれは無意味な行為であることを知っていた。


「助けてやろう、私の世界に来てくれたら。」


男か女かわからないような声が頭の中に響いた。


「私の駒になり、私と敵を蹴散らし、人外の者をすべて駆逐してくれたら、助けてやろう。」


ウィリーにはもう迷いがなかった。


「やるから、俺を助けろ!!」


ウィリーはそのまま意識を失った。車が崖の底、海と砂浜の間に衝突し、炎上した。



同時刻

ユ・エリアス宗教国首都、マエプ市


赤の枢機卿、フォリオ・ガヨーソ枢機卿は数十人の神官たちと神殿の中庭に立っていた。神の啓示を聞いて、神の名をもらった勇者を待っていた。


中庭の中心に光の柱が現れた。太陽以上の光を放ち、枢機卿は目がつぶれそうに感じた。すぐにその眩しい光が消えた。中庭の真ん中にある青年が横たわっていた。


枢機卿たちは急いで走り、敬意と畏怖をもって、ゆっくりと丁寧に青年を持ち上げた。


「勇者様、神の勇者様!!」


ウィリーはゆっくりと目を開けて、枢機卿たちを見た。


「俺は唯一神の名前をもらった男、神の勇者、エリアス・ウィリーである。」



ギジェルモ・”ウィリー”・アリアス・ミロセヴィック、改めてエリアス・ウィリーが神エリアスの世界に転移した瞬間だった。



ウィリーの元いた世界。


長男の事故死を受け、アリアス・ミロセヴィック家は1年を喪した。

彼が死んだことにより、家の重苦しい雰囲気がなくなり、無意味な偏見が消え、

彼が毎回持ち込んでいた問題や争いごと、嘘のようになくなった。

ウィリーは悪で偏見に満ちた精神異常さを持っていた。


実際、彼以外、偏見や他者への蔑視を持っていた者がいなかった。

彼の母はウィリーの頭の中にだけ、アジア人蔑視していた、それは彼がその偏見が自分一人だけのものではないことを自分で自分を欺いていたためだった。


1998年11月6日、某国に一時帰国した25歳のリュウイチ・ムニス・ヤマナカ(日本名:山中竜一)と22歳のソニア・アリアス・ミロセヴィック(結婚後名:山中ソニア)は結婚した。結婚後、二人は夫であるリュウイチのもう一つの祖国である日本へ移住した。




タラーナの森入口付近

マーシャリアン歴元年の7月15日 

(旧)

グランド・エリアス歴5年7月15日 

午前11時30分頃


大軍がタラーナの森へ進軍し始めた。

ユ・エリアス聖騎士団、フォリオ枢機卿配下の赤部隊100名と邦共和国の技術を改良自動人形(オートマトン)軍団200体、カンク公国のシマ・ジュンキチが率いる1000名の大隊がゆっくりと進んでいた。


4体のバイコーンが引いていた豪華な馬車に乗っていた神の勇者、エリアス・ウィリーは馬車の窓を開けた。


「おい、似非勇者の猿、お前の部下の魔導士をここへ呼べ。」


馬車の隣で黒い馬に乗っていたジュンキチが振り向いた。


「早くしろ、猿め!!」


「承知致しました、申し訳ございません、神の勇者様。」


怒りを噛み殺しながら、イル・シンミンのいる後方へと向かった。


彼女はカンク公国人女性だけの百人隊の前に戦闘用の白い馬に乗っていた。


「シンミン、神の勇者が呼んでいる。」


ジュンキチが怒りと屈辱を噛みしめながら、イル・シンミンに声をかけた。

彼女の顔に絶望、怒りと屈辱の表情を浮かべた。


「わかった。今すぐ行くよ、ありがとうございます、ジュンキチ様。」


二人は先頭に走っている豪華な馬車へと向かった。


シンミンは馬車のドアを軽くノックした。


「イル・シンミンです。」


「入れ、早く。」


馬車の中からウィリーの声が聞こえてきた。

イル・シンミンはドアを開き、馬から馬車へ素早く移った。


「神の勇者様、御身の前に。」


イル・シンミンは勇者の前にしゃがんだ。

神の勇者、エリアス・ウィリーがしゃがんでいる彼女を見下ろした後、ズボンを少し下げた。


「しゃぶれ。」


彼女が勇者の要望を必死に応えた。


「四つ這いになれ。」


しばらく時間経った後、ウィリーがシンミンに命じた。


「仰せのままに。」


彼女は勇者に背向け、彼の希望した体勢になった。

神の勇者が彼女のローブを持ち上げ、下着を下した。


シンミンは強い痛みを感じて、唇を噛みながら、静かに泣いた。


勇者の大軍がタラーナの森へゆっくりと進行していた。




大軍から3キロの地点。


諜報担当のミスルが魔法の双眼鏡で勇者の大軍が進軍しているを見た。

新しく支給された通信端末を使ってマーシャリに連絡した。


「マーシャリ様、勇者の大軍がマーシャリナへ進行中です。」


「わかった、ありがとうミスル、すぐに合流地点に戻ってきて。」


「かしこまりました、すぐに戻ります。」


超(ハイパー)人間(ヒューマン)であるミスルは跳躍で至急に合流地点へと戻っていった。



次回:奇襲攻撃

日本語未修正






























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この世界で天涯孤独だった僕は異世界へ転生し魔王となり、救世主となった。 マックス一郎 @maxichirojp715

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