第20話 辺境の町
タラーナの森入口付近
チャベースリ帝国・バヒアの町
(現)
マーシャリアン歴元年の7月14日
(旧)
グランド・エリアス歴5年7月14日
午前07時55分頃
【ようこそ、人類最果ての町】
シマ・ジュンキチがここの世界の文字で書かれていた町の正門に掲げてあった寂れた看板を見た。
「確かに人類最果ての町だな。」
バヒアは廃れていくチャベースリ帝国の辺境の町だった。人口は7千人程度で
帝国の行政官、マデゥエロス・ニクライス総督が市長兼法執行者として治めていた。
巨大大陸の中央に位置していたチャベースリ帝国とは名ばかりで、大陸の北部のチュエスン半島にあったカンク公国より面積の小さい国でかつての偉大さは大(グランド)粛清(パージ)よりずっと以前に失われていた。現帝国の皇帝、チェイベス・フーゴス1世陛下はただの無能で傲慢及び自己中心的な酔っ払いで自称”革命的”な法律と経済対策を立て続けた結果、自国を大陸一、貧しい国家にした。
ここに来て、早3日経っていた。彼は少し落ち込んでいた。
インムンの裏切り、転生して間もない魔王に完敗したこと、思い出す度、怒りで狂いそうになる。
「シマ様、東の門、町の外にユ・エリアス宗教国の神の勇者、エリアス・ウィリー様が到着しました。」
新しく副官として就任した女性の魔導士、イル・シンミンが報告した。
「わかった。行こう、シンミン。」
インムンに対して威圧的に接していたが、新しく入った副官に対して柔らかい対応だった。彼女はカンク公国の宰相で貴族代表のイル・コウミンのご令嬢だった。
インムンも貴族出身だったが、両親が既に亡くなっていたのと公然の秘密だったサンノモト人の混血のため、公国の大貴族たちが反感を持っていた。ただし彼女が公国で誰も到達出来なかった超高位魔法を取得した初の魔導士だった。
イル・シンミンは純粋なカンク公国人でインムンはいなくなった今、カンク公国出席魔導士になったものの、前任者に比べれば、おそろしいほどのグレートダウンした感じが否めなかった。
シマ・ジュンキチとイル・シンミンは近距離転移魔法で、正門よりひどく寂れた東の門へと向かった。
「遅かったじゃねか、このカスども。」
神の勇者、エリアス・ウィリーは二人を見るなり、怒鳴った。
「遅れて申し訳ございません、神の勇者様。」
シマが怒りを潜めながら、頭を下げて、謝罪した。イル・シンミンも同様の動作をした。その時だった、ジュンキチは後頭部を思い切り殴られるのを感じた。勢い余ってすぐに倒れて、地面に肘と膝が付いた。
「謝罪はいらねえよ、カス。」
神の勇者、神の全祝福を受けた勇者、エリアス・ウィリーは意地悪そうな面でニヤニヤしていた。
ジュンキチは頭を上げよとしたが、その時、顎を蹴られて、後ろへ飛んだ。彼の後ろに謝罪のためにしゃがんでいたイル・シンミンとぶつかり、二人とも倒れた。
「立って、コラ!!」
エリアス・ウィリーは二人に対して凄んだ。
「はい。失礼いたしました、神の勇者様。」
二人は同時に謝罪した。
「献上品は?」
下品でいやらしい顔でエリアス・ウィリーは聞いてきた。
「はい、ここの総督が捕まえた女性エルフ1人と女性の猫の獣人1人を献上するそうです、神の勇者様。」
イル・シンミンは慌てて、報告した。
この報告を聞いたずっと後ろに立っていたマデゥエロス・ニクライス総督は慌てて前に出て、部下の警備兵を呼び出した。
「献上品を連れて来い。」
1分以内に警備兵の半ダースに囲まれて、二人の亜人の女性が連れて来られた。
下着姿で鎖に繋がっていた亜人二人が泣いていた。
エリアス・ウィリーは下品な眼差しで亜人を舐めるように見た。
そして神から授かった勇者の大剣を抜き、猫の女性亜人を頭のてっぺんから股間までに一気に叩き切った。
「毛深いのは今いらねよ。」
周りにいた、シマ・ジュンキチとイル・シンミン及びマデゥエロス・ニクライス総督、ユ・エリアス宗教国の兵士、カンク公国の兵士、バヒアの警備兵は全員凍り付いた。
神の勇者が女性エルフの髪を引っ張り、東の門に向かって、歩き始めた。
エルフは泣いて、叫んでいたが、勇者が彼女の顔を殴り、意識を失わせた。
「おい、総督、俺の部屋は?」
マデゥエロス・ニクライス総督は恐怖で滝のように汗が吹き出しながら、走り出した。
「大変失礼いたしました、神の勇者様、この私めがご案内いたします。」
「早くしろよ、長旅で腰を軽くしたいぜ。」
肥満体の総督が必死に先回りし、勇者を案内し始めた。
「おい、そこの似非勇者の日本人よ、今度二度と俺を待たせるな。」
地面から立ち上がったジュンキチは町に向かって、ここから離れていく勇者を見た。
「大変失礼いたしました、神の勇者様。」
神の勇者が軽蔑を露わにした笑顔を浮かべた。
「おい、お前、魔導士。」
「はい、神の勇者様。」
イル・シンミンは緊張しながら返事した。
「お前も来いよ。俺の息子を口で楽しませろよ。カンク人はそれをするのは上手いだろう?」
彼女が恐怖と嫌悪感を同時に感じながら、すべての飲み込むように似非の笑顔を作った。
「喜んで行きます、神の勇者様の意のままに。」
イル・シンミンは速足で勇者の後を追った。
ジュンキチの怒りは頂点に立っていたが、これはすべて神のご計画であると無理やり自分を納得させていた。
「後少しであのバケモノ勇者を始末できる。」
怒りで唇を噛んだ後、拳を強く握った。
2時間後、イル・シンミンは泊まっていた町の中央広場の宿の部屋に戻り、2時間以上風呂に籠り、特に口と股間を念入りに体を洗った。
次回:勇者の進軍
日本語未修正
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