第19話 神の名を持つ男

【注意】

今回は主人公の僕の話ではないので何も語らない。


(現)マーシャリアン歴

元年の7月14日 

午前07時05分頃

新国家・タラーナ・パメラン魔導連合王国、

王都・マーシャリナの空の戦いから10日後


(旧)グランド・エリアス歴5年7月14日 

午前07時05分頃(タラーナ時間午前03時05分頃)

ユ・エリアス宗教国首都、マエプ市

勇者専用宮殿


この国の最高権力者の一人、赤の枢機卿、フォリオ・ガヨーソ枢機卿が勇者専用の宮殿に堂々と入った。

枢機卿の副官たちであるフランシス神官と女性のキャルーロ神官のガルグレービチェ兄妹が同行していた。


「フォリオ枢機卿閣下、勇者様がまだお休みになっておりますため、申し訳ございませんがお昼頃に再度訪ねていただくことが可能でしょうか。」


宮殿の比較的最近執事業務を行うようになった神官、ウエリアム・コンドーレが土下座する勢いで必死の謝罪していた。


「コンドーレ神官、フォリオ枢機卿閣下に失礼でしょうが。」


キャルーロ神官が怒りの表情と声でコンドーレ神官を叱った。


「フォリオ枢機卿閣下、まことに申し訳ございません。この時間帯では勇者様を起こせません。」


「コンドーレよ、貴様、何言っているのはわかっているのか?」


フランシス神官が更に怒鳴った。


「フランシス神官、キャルーロ神官、貴殿たちも勇者様のご性格の欠点を既にご存じでしょう。」


コンドーレが恐怖混じりの声で答えた。

ガルグレービチェ兄妹は怒りを堪えて、上官であるフォリオ枢機卿を見た。


「コンドーレ神官、わが国の勇者、エリアス・ウィリー殿を起こせ。」


赤のフォリオが業務的な口調で命令した。

コンドーレ神官はこの命令で自分の置かれている絶望的な状況を悟り、泣き出した。


「仰せのままに、フォリオ枢機卿閣下。」


コンドーレは声をしゃくりながら答えた。


フォリオ枢機卿たちはコンドーレ神官が重い足取りで勇者の部屋へ赴くのを目で追った。それが最後の彼の生きた姿だった。


「キャルーロよ、必要はないかも知れないけど新しい執事業務を行う神官をすぐに呼び寄せよ。あの木偶のぼのチーキ・グラン・マリーカス神官でいい。」


相変わらず業務的口調で何の感情もこもってない声で枢機卿が命令した。


「仰せのままに、フォリオ枢機卿。」


青い目とサラサラの黒い髪の女性神官、キャルーロ・ガルグレービチェが返事した後、近距離転移魔法で教会の本部へ戻った。


彼女が去った直後、大きな斬撃音とコンドーレの恐怖に満ちた断末魔の叫びが宮殿に響いた。

それからすぐ、宮殿の豪華な大理石の階段から勇者、エリアス・ウィリーが下りてきた。既にフルプレートアーマーと勇者の大剣を身にまとっていた。


「新しい執事が必要になったぜ。」


性格の醜さがよく表れているゾッとする笑顔と他人事みたいな口調で言い放った。


「既に手配している、エリアス・ウィリー殿。起きていっらしゃるなら、コンドーレ君をそのまま生かしても良かったではありませんか。」


無表情で業務的口調のままで枢機卿が話した。


「あのバカが俺は普段寝ている時間に部屋へ来やがったので死刑は妥当だろうよ。」


「確かに、エリアス・ウィリー殿。わが偉大なる唯一神、エリアスの啓示があったので早めにお呼びに来た次第ですがね。」


「フォリオさんよ、俺が神の名を持つ男だぜ。お前さんたちより先にその啓示を知っていた。」


「これは、これは、大変失礼いたしました。」


無表情で業務的口調のままで枢機卿が謝った。


「あれ、バカ兄貴いるのに可愛いキャルーロちゃんいないの?」


フランシスが心の底から激しい怒りがこみ上げてくるのは感じた。


「エリアス・ウィリー殿の新しい執事を呼びに行かせましたので、次回お目にかかるように手配します。」


相変わらずの口調で枢機卿が返事した。


「な、フランシスよ。お前の妹を俺の妾にするぜ。文句はないよな。」


「勇者様の意のままに。」


怒りで唇を噛みながら、フランシス神官が答えた。


「フォリオさんよ、お前さんも文句ないよな。」


「わが偉大なら唯一神、エリアスより勇者様の意思を最大限に尊重するように明確な啓示を承っています。誰も反対いたしません。」


「そうか、そうか。遠征終わったらキャルーロちゃんを俺の部屋に待機させとけよ。」


「勇者様の意のままに。」


フォリオ枢機卿とフランシス神官が同時に答えた。


「とこれでよ、タラーナの森の入り口にある町、辺境のバヒアに行けばいいんだな?」


「はい、エリアス・ウィリー殿。今回の遠征でカンク公国の勇者と共同で魔族どもを一掃するように、神の啓示のままに。」


「わかってるよ。しつこいぜ。あまり言うと殺すぜ、枢機卿。」


「大変失礼いたしました。申し訳ございません、エリアス・ウィリー殿、失礼、神の勇者様。」


「俺の護衛は?」


「ユ・エリアス聖騎士団、フォリオ枢機卿配下の赤部隊100名とチューウェン労働者連邦共和国の技術を改良した自動人形(オートマトン)軍団200体。既に首都の外れに待機しています、勇者様。」


フランシス神官が説明した。


「わかった、義理の兄貴よ。」


勇者がその醜い笑顔でフランシスをからかった。


「カンク公国の勇者、シマ・ジュンキチが1000名の大隊を引いてバヒアの町で勇者様を待っています。」


フランシス更に報告した。


「では行ってくるよ、フォリオよ、義兄(アニキ)よ。」


エリアス・ウィリーは近距離転移魔法で首都の外れへ向かった。


フォリオ枢機卿がため息をした。

すべてのことが上手くいけば、この勇者と永遠にさらばだができると思った。

彼には人間国家連合首脳陣営の決定がばれないことだけが懸念だった。


「すべては偉大なる唯一神、エリアスの計画のうちである。」


フォリオ枢機卿は一人でつぶやいた。



同日

午前05時55分頃(タラーナ時間午前03時55分頃)

ペイルネ王国首都、レーマン市


裏切りの勇者、ダハラ・ロベルは自分の部屋のソファの前に飾ってあるモニターの役割を果たしている鏡を見ていた。


「そうか、エリアス・ウィリーはバヒアに向けて出発したか。後は魔王君が綺麗にそのゴミを片付けてくれることだけを待つのみか。」


独り言をつぶやいた。


「ね、ね、ロベル君、ベッドに戻ってよ。」


ロベルが後ろへ振り向いた。部屋のキングサイズのベッドで彼のシャツを着ていたアオキ・シェルが座っていた。


「起きたか?ごめんよ、シェルちゃん。」


「ロベル君がいないから、ぼく起きちゃったよ。」


「わかった。今行くよ。我々側の最大の汚点であるエリアス・ウィリーが排除されそうで嬉しい。」


「あの勇者が排除されるの?」


「ああ、人間国家連合首脳陣営の最優先の決定だ。」


「でも神が怒らないの?」


「怒らないよ。実を言うとこれも偉大なる唯一神の計画のうちさ。」


「ぼくはわからないの、説明してくれる?」


アオキ・シェルがそう言いながら、ベッドの上で背中を向けて、四つん這いになり、シャツを少し上にあげて、お尻と下半身を露わにし、顔を後ろへ振り向き、恥ずかしそうにロベルを見つめた。


チューウェン労働者連邦共和国の最高指導者である第一市民、プー・ジンヘンに一番最後に召喚された勇者であるアオキ・シェルを戦闘強化するため、ペイルネ王国で一時的滞在させていることを人間国家連合首脳陣営会議で既に通知していた。多少の抗議があったものの、最終的に同意した。


「喜んで説明してあげるよ、シェルちゃん。」


ダハラ・ロベルは着ていたパジャマのズボンを脱ぎ捨て、ベッドに向かった。



次回:辺境の町

日本語未修正。
































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