33話 気づき始めた気持ち
旅館直通のバスでの移動で1時間ほど移動し、到着したころはお昼を回った時間であった。
旅館の入口前のバス停で降車して背伸びをする4人、すでに見える花畑は写真で見るよりも美しく壮大なものだ、凛はこんなにすごい花畑は見たことがないと興奮している、もちろん他の3人も。
「チェックインしましょ」
「だな、ひとまず荷物は置いて行かないと」
景色を堪能しながら館内へと向かい、チェックインを済ませた4人は部屋へ案内される。
全体的に広々としておりやはり高いだけはあると思わされる装飾、縁側にも小さい花畑がある。
「それではごゆっくりどうぞ」
若女将が綺麗なしぐさでお辞儀をし部屋から出て行く、凛はあらためて部屋を一望してあることに気づく。
「橘くんはどこで寝るの?」
一同が「あ」という声を出す、年頃の男子と女子が同じ部屋で泊まる、修学旅行なんかは部屋が分けられるものであるが、今回は4人部屋のチケットなのだ。
「でも、ここに仕切り用の襖がありますよ」
「寝るときはそれでなんとかしましょう!」
理沙が襖を開け閉めしながら言う、凛はほっとしたように胸をなでおろす。
別に優也が寝ている自分たちに何かをするだなんて考えはいない、ただ優也自身も女子と同じ部屋となると気を遣うだろうし、窮屈化もしれないという不安があったためだ。
「で、どこから行きましょうか!」
「華の都っていう名前がついたこの地域は街の方にでても別世界みたく綺麗みたいだぞ」
旅館の頭についている華の都というのはその土地の美しさからつけられた名前である、そこにくる観光客のために設立されたのが月瀬旅館である。
「私は旅館の周辺を回るつもりだよ」
「それじゃ私も美咲先輩のお供をします!!」
優也が「櫻田はどうする?」と聞いてくる、凛はスマホのマップを開き目的地を見せる。
「アトリエ?」
「花をモチーフにしたアクセサリー作りが体験できるんだって!」
事前に街を調べ行ってみたい場所に目星をつけていた凛、中でも一番きになったのはフラワーアクセサリーのアトリエ、アクセサリー作りを体験できるほか職人が作ったアクセサリーを販売している場所でもある。
「そ、それでさ……」
凛は声を小さくしてスマホで口元を隠して優也に近づき「一緒にいかない?」と聞く、優也は少し驚いた後「いいよ」と軽く答えた。
「ほ、ほんと!?」
「あ、あぁ」
凛は優也に背をむけて小さくガッツポーズをする、ただ観光に誘うだけなのにどうしてこんなに緊張するのか、相手が男の子だからというものもあるかもしれない、
だけどもう凛は気づき始めていた。
優也のことが好きなんだと。
意志導 青井サアノ @kokokomu
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