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あひる隊長

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束の間のチャイルドシートの空席に軽自動車は翼へ変わる


夏雲をその背に負えば信号は立つよりも立ちはだかるに近い


踊り明かそうって歌詞が本当に踊るものかを考えて、青


からっぽのバックミラーのしずけさに眉を見るのはもう三回目


やさしさは美徳でしょうかいつまでも右折レーンに留まったまま


好きな曲、好きだった曲、ラジオからどちらと呼ぶか迫られている


誰ひとり私を知らぬスタバにてそうであるかのようにグランデ


チョコチャンク 自分に何かゆるすときいつでもひとりなのはどうして


ブレーキは早めに越したことはなく飲み込んできたいくつかのこと


続くとはどこまでひかり撃ち終えたかたちで給油しつつ見る空


さいあくの想像をする心地よさ雨が上がってそれでどうなる


間違っているとは言わずカーナビは別のルートに切り替えてゆく


満、満、満、満 さまよえば六月の晴れ間のように燦然と空


ずっとずっと褒められたいなまだ乗せたことなき母へ捧ぐ車庫入れ


好きなものを好きでいてねと言う歌が流れるたびにすこし謝る


帰るべき街の名ひとつ海よりも空よりも濃い案内標識


色水が水には戻らないように独り言にも混じる幼児語


海へ行く道をひとつも知らず持ついつでも海へ行ける免許を


生きていくことは秘密を増やすことあなたにあげる粘土のうさぎ


国道の朝へ続いてゆくだろう窓を開ければため息も風


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