フルーツポンチ

白雨冬子

フルーツポンチ

浮かぶ種をふたりでつかみ底知れぬ西瓜の海の沖を漂う


オレンジのつぶつぶ雨が焼け肌にピアノを鳴らすみたいに跳ねた


なにもかも忘れた夢のあと残るグレープフルーツジュースの苦み


奥行きを作りたくって切り分けるりんごの種の向き合い方を


ストレスをぶつけあってもさくらんぼの振り子のようにぽむぽむ止まる


おしゃべりでリズムを合わすお互いのいちごの種を数えるように


真っ黒になったバナナにじわじわと黄色の点を浮かべる笑い


鈴なりのマラカスを振る枇杷の木でいますねきみに聞こえなくても


眠れずにぶどうの皮を夜空から丁寧に剥ぐようにすごした


やさしさを盗んだような気がしてて桃の擦り傷をそっと隠した


雨宿りはメロンのような夕雲がジュースになってしまうときまで


言わなくてよかったことだザクロから固形の光をきみがこぼした


パイン缶のパインの穴の容量をきみに残して帰れそうです


お互いを枕にすれば洋梨のくびれのような場所を知り合う


けむくじゃらのくせにとつぜん純粋なキウイフルーツの果汁をもらす


少なくともきみのフルーツランキングに柿がランクインするときまでは


暮らしとは別のリズムを打つきみのドラゴンフルーツの音を聞く


きみの手もゾンビでよかった冷凍のブルーベリーが元凶でした


ゆれながらころがるレモン、包丁でふたつに割れば止まってしまう


週末はマンゴスチンの真っ白な果肉のように眠ってようね

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