最終話 一番大切なもの
「お兄ちゃーん! こっちのウネは全部終わったよー!」
畑の奥から
「瞬也くん、お疲れー! もうお昼だから、ご飯にしよー!」
「はーい!」
彼は体の泥をほろい、結束されたネギの束をジャンプして越えながら、こちらのほうへやってくる。
あのあと、異世界から戻ったとき、なぜか瞬也くんも一緒だった。
そしてなぜか、俺の家に
まあこれはフィクションだから、いいことにしよう。
ああ、「一緒に」と言ったが、そういえば「こいつら」も……
「あーあ、毎日毎日、ネギ
「ほんと、アキタニア
フレインとクレアだ。
なぜかこいつらもついてきたのだ。
居場所がないのはかわいそうだし、瞬也くん同様、
少ないが、給料だってちゃんと払っているのだ。
「うわーっ! このお弁当、すごーい!」
「ははは、おふくろが作ってくれたんだよ」
瞬也くんは昼飯の卵焼きにがっついている。
うーん、なんだかいいね、この光景。
「瞬也あ、
「
まったく、こいつらときたら。
ロクに働きもしないくせに、
「お前ら、一番働いてるのは瞬也くんなんだからな? ダラダラやってる連中は遠慮しろよ」
おお、やつらめ、こっちをにらんできたぞ。
「
「
おいおい、ネギを振り回すな。
人の口に入るものだぞ?
あーあー、ネギの「汁」がこっちへ飛んでくるってば……
「わあー、お兄ちゃん、こわいよーっ!」
「大丈夫かい、瞬也くん!? こらバカども、こんなやさしい子をいたぶって恥ずかしくないのか? 乱暴するとこうだぞ!」
俺は例によって、聖剣キャラタンポを振りかざした。
まばゆい光がほとばしり、フレインとクレアの衣服をズタズタに引き裂いた。
「はっ、はほおおおおおん!」
「はひっ、はひっ、はひょおおおおおん!」
これも例によって、二人の異世界美女はあられもない姿となり、カエルのごとく
なんて無様なんだ……
しかし、しつこいが、この聖剣は服を破るしか能がないのか?
まったく、バカげている……
「お兄ちゃん、ありがとう! その剣さえあれば、
『害虫駆除』ね……
はは、この子もぶっ飛んでるけど、まあ、いい子だし、かまわないか。
(くすくす、いい感じだ。この調子でこの世界をのっとり、支配してあげる。この魔王ガモチョスがね? ふふ、ふふふ、ふはははははっ!)
「
「ひゃん!?」
「
「ひやっ! や、やめてよ、お姉ちゃ……あ、ああっ……!」
またセクハラを始めやがった。
はーあ、めんどくさい……
「やめんか、バカども!」
「はほおおおおおん!」
この聖剣はバカども退治にはちょうどいいな。
それにしても、こりない連中だ。
ま、こんな日常も、悪くはないかね。
ひょとしたら、こういうのが『一番大切なもの』、だったりしてな……
はは、おセンチかなあ。
「しゅ、瞬也……
「
「あははー、お姉ちゃんたち、這いつくばって、虫ケラみたーい!」
こうして俺はまた、ネギを掘るのだった。
日差しがまぶしい、けど、温かい……
これが『幸せ』ってことなのかもな――
(完)
チートスキル(秋田弁)で異世界攻略 朽木桜斎 @kuchiki-ohsai
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