【閑話】名無しの権兵衛

ジェーン・ドゥは、【フルメタル・オンライン】と呼ばれるVRMMOゲームにて、トッププレイヤーとして君臨していたプレイヤーである。


しかし、その【フルメタル・オンライン】がサービス終了したため、彼女は新たな居場所を求めた末に、【ユートピア・オンライン】というゲームに辿り着いた。


【ユートピア・オンライン】は、彼女が追い求めていたゲームそのものであり、彼女はあっという間に【ユートピア・オンライン】にハマるのだった。


「はぁ.....楽しかったな」


そして、今現在のジェーン・ドゥの中の人こと、カタリナは、【ユートピア・オンライン】の第一回イベントのことを思い出したのか、ベッドの上にて、そう呟いていた。


「にしても.......ハチ、だっけ?まさか、アイツが七つの大罪シリーズの一つの持ち主だったとはねぇ」


ニカッと笑いながらそう言った後、ベッドから起き上がり、近くのテーブルに置いてあった瓶ビールを飲むカタリナ。


ちょうどその時、カタリナのスマホから着信音が流れ、彼女はその電話に出るのだった。


「はぁい、私よ」


電話の相手に対し、そう言うカタリナ。


一方、電話の相手は


『よぉ、元気か?名無しの権兵衛』


彼女を揶揄うようにそう言った。


「この電話に出ている時点で、すでに元気だと思うけど?」


カタリナがそう言うと、電話の相手はガハハハと笑った後、こう言った。


『あ、それもそうだな』


その言葉を聞いたカタリナはふぅとため息を吐くと、電話の相手に向けて、こう言った。


「それで?の私に何のよう?」


カタリナがそう言うと、電話の相手はさっきの雰囲気とは打って変わり、真剣な様子でこう言った。


『.......君の死を疑う者が出始めている』


電話の相手の言葉を聞いたカタリナは、ピクリと反応した後


「それは嫌なニュースね」


と言った。


『今の君は我々の管理下にあるが.......警戒しておいて損はないと思うぞ』


電話の相手がそう言うと、カタリナは窓の外を見つめながら、彼に向けてこんなことを言った。


「一応、裏切り者を探すのも手かもしれないわよ?」

『もちろん、洗い出しはするつもりだ』


カタリナの言葉に対し、電話の相手はそう言った後、続け様に


『俺からの報告は以上だ。くれぐれも警戒は怠るな。いいな?』


と言うと、電話を切るのだった。


「......流石は業界人。私の死がデタラメだって勘付いてきてるってわけね」


そう言った後、再び瓶ビールを飲むカタリナ。


「でも.......私は死ぬつもりはないわよ」


カタリナはニッと笑った後、再びベッドの上に寝転ぶと、ゲーム用のヘッドギアを装着し、ゲームし始めた。


彼女の名はカタリナ。


またの名を『名無しの権兵衛』。


かつて、彼女は裏社会でその名を馳せていた女傭兵なのだが......その話は、また別の機会に話すとしよう。

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【仮面使い】のVRMMOプレイ記〜巷で流行りのゲームで遊んだら【仮面使い】とかいう職業になったんだが〜 @marumarumarumori

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