妍媚なけもの

みつき美希

妍媚なけもの

太陽のフレアでゆがむ夏至の午後ひかる背より扉がひらく


ひまわりの螺旋回廊にげこめばわけあう泥水もほのあまく


卓上には腐りゆく桃 だめなことかたっぱしからあなたと試す


野獣性(フォーヴ) 下唇を、噛んで‘フォーヴ’ とは黒く燃えてるあなたの双眸


煌めけるけものに口づけをすれば心臓で薔薇乱れ咲きたり


妍媚なけものを閉じ込める檻わたくしは つめたい沸点で抱かれている


てなづけたいそのぬばたまの黒髪を なでれば手のひら雷落ちたり


バタフライエフェクト あの朔の夜に鏡をあわせてはいけなかった


その瞳は澄んでいて澄みきっていて痛いから逆さまの街に火を


遠くの街に雨をふらせて きみ語るオルタナティブ論を聞いている


廃駅で往路の列車を待つ二人どこまでならゆるされたのでしょう


わたくし以外触れさせたくないくちびるは花びらにして奪い去るなり


奈落の底をひとりで歩くたましいが雑踏にもまれてくたくた


黄金にたなびく雲に翳のさすあれはだれのものでもなかったわたし


あいなんて(よろしくて?)崇高じゃないのよ 陶器の手はパンをぬすむ


ぜつぼうをするにははやい紙の月まひるの空で嬌笑しおり


まるで正義の味方みたいな顔をして4等分がきれいな食パン


さみしくてホモ・エレクトスわたしたち細胞ぜんぶひからせちゃうの


ほろほろと砂金を落とす指先であてなどなにもなく夏が逝く


つくよみの奪えぬ男をおもいつつ真っ二つに割るアメリカンパイ


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妍媚なけもの みつき美希 @mikilk_mint_min

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