9
もうすぐ務めが終わる。
そう思う。と不思議な程に名残惜しく。
なんて、なるか帰ったらお風呂入って寝る。と思いつつルチアはマイクに力をこめる。
「大変お待たせしました。最後にまだ幼き女神に変わり、人の身でありながらもイビルディア帝国をおさめて……」
ぶっつけ本番で違うパターンを持ってくるのは止めて。と脳内で婚約者をぶん殴る程度に少女は絶句。
そう思わせるほどにワガママな本日の、もとい乱世の主人公がおっぱじめるは予想外の動き。
本当にイビルディア人は奇をてらうのが好きね。とつぶやきながらも機先を制されたグレテンの王子同様世界は未だ勘違いをしている。
──人の目を引く程度でいいのならば奇をてらうだけでできる。だがそれは長続きしない。──
事実、壇上の中心を目指すは仮面をつけたモードレッド。
彼のしょうもない一発コッキリネタに全員の目は集中。
何故か目線を切られない。という事実に世界が気づくのはもう少し後である。
それを感じ取った世界の中心たる少年は、クルっと世界全土を見据えるように動き、執事たる従兄弟にマイクを持ってくるよう合図を出す。
動いているモノに目線を持っていかれるのは、生物の性。
そして、その隙に漬け込むかの様に、右手にある六本の指がいっきに仮面を外す。
突如、として顕になる異形。
綺羅星の如き才が集まる乱世。
そんな暗黒の時代に突如太陽が顕現した。
モードレッドの天賦に理由を求めるなど、一目惚れの理屈を探す並の馬鹿げた話。
すなわち美しき者に人が集まる。という常識はいくらでも叩くことができるし、ごまかしたり話をそらす事ができる。
だが、この場に存在するモードレッドが発する魅力は、全てを捻じ曲げる負の信頼感によって肯定されてしまった。
──端正な顔という追加点どころか、異形というハンデすらもねじ伏せるは魔性のカリスマ。──
「無理だ。あんな人外のモノには誰も勝てん、王の時代まで持ちこたえても……そこから先に見えるは打倒されたグレテンの旗。征ってきなさい己の真価を現世に知らしめるため」
悲観の未来を次点が国家に見せつける程に、傑物が持つ天倫、すなわち人の上に君臨する者としての才は突出している。
事実、文武高低強弱雌雄老若問わずして、余すことなく視線と興味を引きつけているのだから……ただソレに抗う者がいてしまった。
「よくも僕に嫉妬させたな。王になるために作られた存在故絶対に君だけは認めん。」
器が小さすぎて怒り溢れる美少年は、目的をはたすために、運命を変えるために世界の中心を目指す。
はわわ、モードレッド様一生ついていきます。と月に恋い焦がれし少女は、あっさりと太陽の引力を振り切って見せた。
──醜いモノは一瞬だけならどんな綺麗なものより視線を集め、普通ならすぐに視線をキられる。そんな事実や常識は聖帝に通用しなかった事を歴史は
「あぁ、私は今まで猿と変わらない価値観に生きてきた。ルッキズムこの世に存在してはならないもの。即ち害悪なり」
「美しいものを見る。その行為が如何に不純で浅ましくおぞましい事だと教えていただいた。何故なら見る。という己が行為に主題がおかれていないのだから」
「あぁ、このお方はまさしく天の使い……我らの上に浅ましくもふんぞり返る愚物とは雲泥の差も甚だしい!」
外見も今知ったばかりの、名前すら知らぬソンザイのアクションを期待する。という何事かの力が関与しなければ絶対に不可能な暴挙がこの場を牛耳っていた。
どこまでもモードレッドの重瞳に写る世界はただ美しく、観客は好き好きに主役に対する感想を述べる。
これは世界の中心にとって、退屈とは真逆の良環境。
故にそれ以上の熱を作り出すために、より強い灼熱でこの場を焼き切るために、機を待つは未来の聖帝。
「僕には夢がある。全ての人間が同じ価値観、同じ文化、同じ尺度で生きる統一国家の実現。」
いつ話すんだ?という期待のピークは見逃されず。
それは澄んだ風の様に耳へと入り、心地よく脳を揺らし、ずっと聞いていたくなる程の美声によって紡がれるモードレッドの夢。
「貴方様ならできます。我々も微力ながら協力させていただきます。ガガガうっ、タノシミデシカタナイ。宗主国に反乱をしてこの人に世界を獲ってもらうぞ。」
「あぁ、この方が全てを統べてくださるのならば我々は土地を失う事も無かった。あれ?でも我らを難民にしたのはイビルディア帝国であって……ガガガウウウ……まぁ、いいやそんなくだらない事は、ウオオやってくだされ。」
「理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能。理解不能という事は、分からないもしくは推し量れ無い。ということです。」
ギャップが人の評価や価値観をもっとも揺らす事など説明する必要もないだろう。
事実、異形の容姿からは想像もできない、天上の声がもたらした結果は、モブとギャラリーの価値観を粉砕し、乱世の主人公に都合よく作り変えていく。
モードレッドの転輪に侵食された世界で、グレテンの王子は元凶たる世界の中心へと向かう。
(綺麗事と建前で誤魔化しやがって、早い話が全部自分に合わせろって、本音は世界征服宣言じゃないか。そんな素晴らしい事をしていいのは……世界の頂点たる僕だけだ。)
青い目を鋭くしながら意気揚々と向かう足が突如、止まる。
本当に自分はできるのか?そんな業の深い事をして将来叩かれないか?グレテンの王として豊かに安楽に生きてもいいんじゃないか?と不安や安寧が突如湧いき初め惑わす故に。
(何だ、これはバケモノなはずなのに……ソウカボクハチガウンダ。あの人には遠く及ばない。だって僕にはこんな凄い事できないじゃないか。世界をとるのは選ばれた存在だ。僕は平伏し許しをこえばそれなりの生を謳歌できるじゃないか、それでいいんだ。)
初めて会った自分以上の天賦を持つ存在に対し月は影を帯びてしまった。
世界の中心に向ける嫉妬心を克服したくても、現状の能力差が知らしめる事実は重く。
何の言い訳も妄言も現実は許してくれない。
(ソウダ。そうだ。誰も僕が世界をとる事など期待しない、何なら僕ですらあの人に征服されたいと思ってしまうし……それが正しい事なんだ。年も近いし側仕えの雑務くらいはゆるしてくれるだろう)
初めての挫折はあまりにも重く、自己評価を圧倒的に下落させるには充分だった。
王になるために作られたサラブレッドの足は、運命を受け入れ……止まる。
が、必要以上に萎縮する美少年は後ろからの衝撃を受け、意志とは無関係に一歩だけ前に踏み出した。
──それは本当に世界地図を、歴史すらも塗り替えてしまう一歩──
思い人の予想外な行動に、ハワワ。ごめんなさ……という声をあげつつ謝罪しようとしたライラは見てしまった。
少女の目には自信を完膚なきまでにうち崩され、無様に背中を丸める人間の姿。
少女の目には何かを成そうとする意思すら奪われ、異常な早さで呼吸を行う哀れな異性。
少女の目にはどこまで取り繕っても惨めな……闘争心という本能さえも失ってしまった弱き雄。
この世でもっとも価値の無い存在を見る、ライラの評価は辛辣でありながらも的を射ていた。
「今のモードレッド様は何かかっこ悪いですね。いやもうただ純粋に本当にダサいです。見てるだけで生理的な嫌悪感すら覚えますよ。何でこんなのとの間に一瞬でも子供が欲しいと思ったんだろ?」
負の性欲が導き出した理論は、無価値な格下と断定した存在に対して心のままに罵倒をつむぐ。
──この日、この時、この瞬間をモードレッドは忘れた事が無いだろう。と歴史家は断言する。──
僕がかっこ悪い?と口にしながら、目の前に立つ名前すら知らない少女に対して
「下賎の娘が利いたふうな口を抜かすな。僕はありとあらゆる事を考えた上で、あのお方にグレテンは降伏し統治していただく事こそが幸せだろうにあぁ、イライラする……な」
「格上の殿方に負けた腹いせで、下賎の小間使いに当たり散らす程度の器量をもって思慮なさったんですね。ハイハイ全て分かりました。」
振るわれた怒りは、当然負け犬の遠吠えと認識され鼻で嗤われてしまう。
格下に馬鹿にされた事もあって、臨界点すらも超えるほどに湧き上がった怒りの感情が、絶望の縁に沈んだグレテンの王子にある事を気づかせた。
それは偶然の一歩。
僕は前に進みたいのか?傷つくのは分かってるのに?歴史に名を刻めるかも分からないのに?と己に湧いた疑問に対して、フフフ。と本心からの笑いが返る。
少女の目には完全に自信を取り戻し、真っ直ぐに背中を伸ばす人間の姿。
「あれ?何か急にカッコよくなってきた。何で?ハワワ何なら今まで見た中で一番かっこいいです〜。」
少女の目には成すべき事を見据え、落ち着いた様子で呼吸を行う好みな異性。
「あのバケモノめ、よくもまぁ、世界の頂点たるこのモードレッドに恥をかかせやがったな。イライラが止まらん。」
少女の目にはどこをとっても好ましい……闘争心みなぎりエゴをほとばしらせた強き雄。
この世でもっとも愛しい男性を見る、ライラの評価は盲目でありつつ、完全に的を外していた。
「そうです。モードレッド様以上に世界征服が似合うお人はありません。もうかっこよすぎて私が宮廷画家になれる程の産まれだったら……あぁ、もう無理、子供が望めないならせめて絵を産み続けたい。」
純然たる性欲が導き出した理論は、最高値を更新し続ける存在に対して心のままに好意をつむぐ。
名前も知らない少女が己に向ける感情。
君の名は?と問うモードレッドの目が染まるは性欲等という下卑たモノでは無く、どこまでも自分本位な王族思考。
それに気が付かなかった哀れな踏み台は、ライラです。と嬉しそうに即答。
「そうか。き、ライラのおかげで僕は一番大切なモノを取り戻せたよ。……グレテンに帰り次第世界の頂点たるモードレッドの妻になってくれないか?」
突然のプロポーズに、ハワワ一生ついていきます。といいながらオーバーヒートするは名前の主。
(……ったく、これで下賎の娘に罵倒された恥ずかしき事実は、未来の妻が発破をかけた美談。と歴史家は勘違いしてくれるな。)
残念ながら、モードレッドの小細工は未来に見破られてしまう。
──征服王は歴史家から聖帝以上に間違いなく好かれている。
比べてる相手がおかしいだろう。という評価は隅に置いた上でなお、筆まめな性分が残した日記は現存し、乱世の情報を未来へと伝えたからである。──
そんな未来等露も知らず、ただ純真無垢に宿命が待つステージへ加速。
運命を変えた美少年が携えるは克己心。
自分以上に輝きを放つ存在を受けて、影を帯びた月は輝きを増す。
よく喋るなコイツ。と婚約者の名前を紹介するタイミングを見失ったルチアは、最初こそは真面目に頃合いを伺っていたが……諦めたのか暇潰しにマイクを回し始めた。
「僕は今猛烈に感動している。忙しい中時間を作ってくださった皆さんが……まだ人生経験もろくに……積んでいない……青二才である僕の話に耳を真剣に傾けてくれて……」
緊張等無縁の傑物とはいえ、やはり幼子、感極まって泣いてしまう。
突如の曇天は世界全土に、つけいる明確な隙を与えてしまう。
事実、堂々としていたんだけどな。や泣いてる姿も可愛い。だのうーん男らしくドッシリして欲しかったな。と多種多様な評価。
相手に隙をつくる方法は、こっちが先に隙を見せること。
その実践によって、世界には感情の起伏ができてしまった。
従兄弟がもって来たハンカチの下で、ギャン泣きしているモードレッドはその時を、ベストタイミングを勘で読み取ってしまう。
「そんな皆様に心からの感謝を」
それは全てを溶かし、他人を暖かな優しさ溢れる心へと変貌させる。
紛れもない太陽の笑みであった。
──聖帝がやっている事は、はっきりいて暴君や悪王と何も変わらない。
だが、一つ言えることは何故か世界がそれを許していた事、それも真心から受け入れ、良い方に捉えていたという事実。
そうでもなければ、聖帝の号を許されない程の業を積み重ねているだから──
宿命に選ばれし異形が持つ最強の武器は愛嬌。
まだ清らかな太陽は、輝きを増した宿敵の存在に気づいていない。
えっ、何これ聞いてないんだけど?知らないんだけど?というルチアの疑問が開戦の合図。
力尽くでマイクを奪うはグレテンの王子。
(ほぅ、なかなか端正な顔じゃないか。そうだな僕のサインを服にでも書いてやれば家宝にします。といって下がるだろうし、それでいいだろう。)
宿敵の乱入があっても、主役たるモードレッドはどこまでいっても泰然自若。
事実大人の介入を止める余裕がある程に、それを察するは従兄弟。
「この下郎が!帝を前にしてなんだその不敬極まりない態度はどういうこ」
熟成された憎悪が虐待紛いの鍛錬を纏うは遺伝子調整をされた肉体。
それは当然の結果とばかりに一撃でアーロンを沈めた。
本能がもたらす圧倒的な暴力に、同系統なのに建前を重視するモードレッドは大人を呼ぼう。として……しまった。
宿敵につけられたのは一生消えない傷。
何をしようにも疼くそれが、雄としてのコンプレックスを刺激し傑物を悪意が染め始める。
それは太陽と月の邂逅。
突如、始まるは月の時間。
それは冷たく、暗く、恐怖と悪意を駆り立てる。
「全ての人間が僕の下僕だ。世界の頂点たる僕だけが顎で使う権利を持っている。」
確固たる決意のもとに、世界征服宣言をするは端正な顔の王子様。
引っ込めー!死ね!見た限りグレテン人だ!という叫びが征服王の幼体には心地よくて仕方ない。
イビルディア帝国の文武官達が目を血走らせ睨もうが、世界の頂点にはどこ吹く風。
理由はシンプルにしてベスト。
背を丸め目標を見失った弱者になるよりも、殺気向けられし茨の道を堂々と胸をはって歩く覇道の方が、簡単だと知ってしまたから。
だが、天倫の差は絶対だった。
違うよ。と美しい声が……だが続かない。
勝てる勝負に怖じ気つくという不思議は人の特権。
タイミングを読めてしまうが故に、異形の帝はダマッテ、しまった。
(僕がひいた?違う。違う違う。じゃあ何故今言わなかった。口で駄目なら腕っ節で……あぁムカつくな。)
男として勝てても、雄としては勝てないかもしれない。と一瞬でも思わされたが故に湧き上がるは負の感情。
一生拭えない後悔が太陽を真っ黒に染めた。
「バケモノはイケメンの王子様に負けるのが役割だろ。そういえば君の名前は知らないな……あぁ、名乗らなくていいよ。そっちの方が、醜いバケモノには名無しが相応しいだろ。」
(ハリボテが……僕が主役の舞台を汚しやがって!何だよその目はおかしいだろ?絶対に名前すら覚えてやらない、仮に覚えても秒で忘れてやる!あぁムカつくな。)
後の聖帝と未来の征服王はここで初めて目をあわす、事すら無かった。
「何この乱入者?聞いてないんだけど、モードレッドは主役だけど、あぁボクの経歴に傷がついたじゃな……」
「これは男の問題だ男にしか分からない!だから女は黙ってろ!……しかも世界の頂点たる僕を呼び捨てにしたな。不敬罪で獄に繋いでやる!!!」
話を遮り、吠えるモードレッドに対して、何コイツ?初対面の女子にここまで怒鳴るとか器が小さ。と、強さを履き違えているな。と素直に思うはルチア。
「ハワワ、本当に凄かったです。モードレッド様の言葉は心底胸に響きました。私は感動が止まらなくて、妻になれる自分が誇らしくて……」
「うん待ってね。ここまでスピーチを褒めてくれるのは嬉しいが、名前も知らない君を妻にするというのは流石に……」
初対面の少女が訳のわからない事を言い始めたので、何とか制止しようとするのはモードレッド。
「何を言っているんですか?私は自分で言うのも変ですが超がつく程の面食いなんです。しかも何かビビってるのか腰が引けてるし……新帝さんはモードレッド様と違って男性ホルモンが足りてませんね。」
いきなりの罵倒で名前の持ち主は、最悪な事情を察する。
君もほらイビルディアの帝と同じ名前じゃ不便だろ。と、綺麗なハリボテに対して改名を請求するは、式典の主役にして乱世の主人公たるモードレッド。
「えー、かの聖王を超える存在が同じモードレッドという名前だから格好いいのに……えっ、同じ名前なの?最悪なんだけど改名してくれない。」
「母モーリン・マモンと父アルドレッド・アモンからあやかり伯父上がつけてくれた大切な名前だ。変えるくらいなら死ぬ。」
あっ、そうじゃ死ね。とりあえず殴るけど我慢できなくなったら五体投地しろよ。頭を思いっきり踏んでやるからな。と嬉しそうに本能剥き出しでバケモノへ歩を進めるは、端正な顔をした征服王の幼体。
はぁ、流石に僕の事を舐めすぎたろ。と向けられた狂気に対して、そこまでじゃないかもな。と勝機を見出し構えるは、未だ完全に外聞を捨てきれない異形たる聖帝の幼体。
二人のモードレッドがおこした喧嘩は、世界の介入もあって不完全燃焼。
子供の時間は終わる。
「全ての人間が僕の下僕だ。世界の頂点たる僕だけが顎で使う権利を持っている。」
「違うね。全て人間が僕の奴隷だ。世界の中心たる僕だけが苦役を強要する権利を持っている。」
絶対あの時、完全燃焼させた方が良かっただろうね。と思うのは、圧倒的な有利盤面を放棄してタイマンを望んだ旦那のおもりをする帝妃ルチア。
彼女は、男がもつ馬鹿らしくて下らないがとても大切なモノを知ってしまった。
だからこそ夫にはそれを取り戻して欲しい。と心から女神に祈る。
「ふん、やはり君とは一ミリたりとも気があわないし、醜いバケモノの感情等理解したいと思わないけどね。」
「黙れハリボテ。君と僕が同じ方向を向くなんてあれで最後だ、世界そのものが危機になった時ですら本当に嫌だった。まぁ、そっから一度たりとも同じ事を考えた事は無いと断言的できる。」
ハワワ、流石はモードレッド様。宿敵たる聖帝すらも自分と同じ思想に染めて……あれ?自分色にしたって事は愛してるの?同性愛?と訳わからない事を考えだしたのは王妃ライラ。
彼女は夫がどう考えても生きるのに邪魔な強すぎるプライドと、過剰な程に絶望を引きずる潔さを持っている事を知っている。
だからこそ、その重荷から解放される事を心から願う。
「あの時出し抜きやがって絶対に許さん。良いところも持ってかれたしシンプルに大嫌い!」
「ざまーみろ。本当は僕に憧れてんだろ?サインしてやろか?ぼくぅー!」
「おっ、早く寄越せ!目の前で破ってやるよ。どっちが上か証明してやる。」
「神以外に人より上の者等存在しない。張り倒した後、世界の端っこで見すぼらしい余生をすごさせてやるよ。」
成長した二人のトラッシュトーク。と言うには……あまりにも考えが足りずに行われる幼稚な口喧嘩は当然カット。
「はい、それでは長らくお待たせしました。決戦の場であるラムカンの丘が、グレテン領でありますため戦争法に乗っ取り、イビルディア帝妃ルチア・ルシフェルが開戦の合図を務めさせていただきます。」
単純なる暴力という、老若男女全てが同じ尺度を持ち、理解できる絶対にして究極の真理。
禁じ手無し故に、誰も文句をつけられない……すなわち敢然な決着。
(本当にムカつくハリボテだったよ。歩不相応な二つ名の隣に敗北を刻んでやる。)
(マジでイライラさせるバケモノだな。まぁ、完全なる勝利を手にした後に、聖以外の文字をやるか。何がいいかな〜)
それを背中合わせの二人は想像し、別々の結末を想像し笑う。
始め!!!という号令を合図に、二人は前方へ歩き出す。
双方の動きによって、一秒ごとに二歩分ずつ開いていく距離。
十歩目を踏んだ瞬間、互いの視線がぶつかった。
モードレッドが見た異形の真剣な表情が克己の証明であり、モードレッドが見た美形の必死な表情が実績の証明である。
「「モードレッド!!!」」
その咆哮は宿敵と認めた存在に対し向けられたものか、自分を奮い立たせるために言ったものかは分からない。
この日人以下の領分で持てる全て、即ち世界の覇権を賭けて二人は激突。
──終焉の儀で勝ったのはモードレッド。
残された資料には大事な部分は書かれてない。
でも勝者が誰かを知っている。
ズタボロになった二人が、子役二人を膝に起きインタビューに応じる。
が、そこから先は、上手く行っているヤツの自己陶酔を見る程無駄な時間は無い。と吐き捨てる存在によって遮断。
偏屈な歴史好きが見つけたのは、歴史的にマイナーなとある復讐鬼のお話。
終焉と開闢のモードレッド(先行放送) @yuusho
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