オマケ話:ふふ……おやすみなさい……

 とある日の土曜日。


「よし、今日は一緒に引越しの荷解きを頑張っていこうか!」

「うん、ありがとう! 今日は一日よろしくね!」

「うん、こちらこそだよ!」


 今日はいよいよ四条さん達の引越しの日だ。という事で俺も今日は四条さん達の引越しのお手伝いを全力で頑張ってやっていくつもりだ。


 ちなみに妹の朱音ちゃんは実家の片付けをしているらしいので、今日の引越しの荷解きは俺と四条さんの二人で行う事になっている。


「それじゃあまず俺は何からやれば良いかな? 重い物を持ち運んだりする作業とかを優先的にやるよ」

「うん、ありがとう! それじゃあまずはここに積まれている段ボールを朱音の部屋に全部置いていって貰えるかな? ちょっと重たいモノも入ってると思うから持ち運ぶ時には十分気を付けてね」

「わかった。朱音ちゃんの部屋に運ぶって事はここに積まれてる段ボールに中身は全部朱音ちゃんのモノなの? それに重いモノもあるって事は結構貴重なモノが入ってる感じかな?」


 四条さんが指差した所には結構な数の段ボールが積まれていた。中身がちょっと気になったので俺はそんな事を尋ねていってみた。


「えぇ、そうね。ここに段ボールの中身は朱音が大学で使っている電子製品関連ね。パソコンとか電子工作品とかプリンターとか……あとは自分で作ってみた工作品も入ってるらしいわ。まぁそんな感じのモノが沢山入っている段ボールよ」

「あぁ、なるほど。流石は理工学部だね。うん、わかった。それじゃあ精密機器も入ってそうだし丁寧に持ち運んで行くね」

「うん、ありがとう!」


 朱音ちゃんは理工学部に入っているので、この段ボールの中身は理工学部で使うための道具が沢山入っているようだ。


(はは、勉強を頑張りたいって思う朱音ちゃんの気持ちは本物のようだなー)


 俺はそんな事を思いながらリビングに積まれている段ボールを一つずつ丁寧にゆっくりと朱音ちゃんの部屋に運んでいった。


 でも段ボールの中身が想像以上に重かったので、朱音ちゃんの部屋に全て持ち運ぶのに結構な時間がかかってしまった。


「ふぅ、ちょっと時間がかかっちゃったけど、全部朱音ちゃんの部屋に段ボールを置けたよー。次は何をしたら良いかな?」

「ありがとう! えぇっと、次はね……あ、それじゃあ今度はこっちに置かれている小さい段ボール達をどんどんと開けていって貰えるかな? その中に入ってるのは全部食器類だからどんどんと開けて貰って構わないわ」

「うん、わかった。それじゃあ早速開けていくね」


 そう言って俺は四条さんに指示された段ボールをどんどんと開けていった。すると中からは四条さんの言う通り食器類が出てきた。


「これは全部台所の食器棚に入れていっても良いのかな? もし良いのなら俺が代わりに食器棚に収納していこうか? 四条さんも他の荷解き作業で忙しいでしょ?」

「あ、うん、そうだね。それじゃあお手数だけど台所の方に持って行ってくれるかな?」

「うん、わかったよ。それじゃあこっちは俺がやっとくね」


 という事で俺は四条さんの指示の元どんどんと引越しの手伝いをしていった。そしてそれから程なくして……。


「……ふぅ。これで荷解きは全部済んだかな?」

「うん、これで全部終わりだよ! 本当にありがとう! あ、それじゃあ沢城君へのお礼に今から私が紅茶を入れてあげるよ。それと朱音が作ってくれたお茶菓子もあるんだ。だからそれを食べてちょっと休憩しましょうよ」

「え、本当に? はは、それは嬉しいなー。うん、それじゃあ御言葉に甘えてちょっと休憩させて貰おうかな」

「うん、わかった!」


 そう言うと四条さんは満面の笑みを浮かべながら台所の方に移動していった。そしてそれから数分後。


「はい、お待たせ。私特製の紅茶と朱音特製の手作りクッキーだよ。良かったら味の感想とか教えてくれると嬉しいな」

「うん、わかったよ。それじゃあ早速いただきます!」

「うん、どうぞ召し上がれ!」


 俺は早速四条さんの淹れてくれた紅茶を飲みつつ朱音ちゃん手製のクッキーも頂いていった。


「もぐもぐ……うん! すっごく美味しいよ! 紅茶もクッキーも凄く美味しいよ!」

「え、本当に? ふふ、それなら良かったー! それじゃあ紅茶もクッキーもおかわりは沢山あるからどんどん食べていってね!」

「うん、ありがとう! それじゃあ遠慮なく!」


 四条さんは嬉しそうな笑みを浮かべながらどんどんと紅茶とクッキーのおかわりを持ってきてくれた。


 なので俺は四条さんの好意に甘えて持ってきてくれたおかわりの紅茶とクッキーをどんどんと頂いていった。でもそれからすぐに……。


「ふ……ふぁあ……あ、あれ……? 何だろう……何だか……眠く……」

「うん? どうかしたの? 沢城君?」

「え……? あ、えぇっと……な、何だかちょっと……眠くなってきたんだよね……ふ、ふぁあ……」

「ふぅん? そうなんだ? あ、もしかして今日の引越しのお手伝いで疲れちゃったのかな? ほら、だって今日は重たい物とか沢山運んでくれてたでしょ?」

「あ、あぁ……う、うん……もしかした、ら……そう……かも……ね……すぅ……」

「うん? 沢城君? ねぇ、どうしたの?」

「すぅ……すぅ……すぅ……」


 気づくと……俺は微睡みの中に落ちていってしまった……。


「……ふふ。おやすみなさい……沢城君……」


◇◇◇◇


 それからしばらくして。


「……はっ!」


 俺は目を覚ました。もちろんそこは四条さん家のリビングだった。窓の外はオレンジがかった空になっているのでおそらく夕方になってしまったようだ。


 そして俺の身体にはタオルケットがかけられていた。おそらく四条さんがかけてくれたのだろう。


「あ、おはよう、沢城君」

「えっ? あ、おはよう、四条さん。え、えぇっと、もしかして……俺ガッツリと寝ちゃってた?」

「うん、それはもうグッスリとね。ふふ、すっごく気持ちよさそうに寝ちゃってたわよー?」

「そ、そっか。い、いや、それはちょっと恥ずかしいなぁ……」


 どうやら俺は凄く気持ちよさそうにグッスリと眠ってしまっていたようだ。そんな俺の様子を四条さんに見られていたと思うと流石に恥ずかしいな。


「ふふ、別にそれくらいいいじゃない。だって沢城君は引越しのお手伝いを物凄く一生懸命にやってくれたから疲れちゃって寝ちゃったんでしょ? だから私は沢城君にはすっごく感謝しているのよ。私の代わりに力仕事を沢山やってくれて本当にありがとうね」

「そ、そっか。うん、まぁそれなら良いんだけど」

「うんうん、そうよ。って、あ、そうだ! そういえば沢城君さ……貴方の部屋の鍵開けっ放しだったわよ?」

「え……って、えっ!? ほ、本当に!?」

「うん、本当本当。沢城君が寝ちゃった後にそういえば沢城君の部屋ってちゃんと鍵がかけられてるのか心配になって、ちょっと沢城君の部屋に行ってみたのよ。そしたら鍵が開けっ放しになってたからビックリしちゃったわよー」

「えっ!? そ、そんな……急いで鍵を閉めなきゃだ……!!」


 四条さんにそう言われて俺は盛大に慌てふためいてしまった。流石に部屋の鍵が開けっ放しだったって言われたら誰だって焦るはずだ。でも……。


「あ、そんなに慌てなくて大丈夫だよ。鍵が開けっ放しなのに気が付いたらから、だから私……沢城君の衣服のポケットに入ってた鍵を借りて、そのまますぐに沢城君の部屋の鍵を閉じといてあげたからさ」

「え、本当にっ!? そ、それはすっごく助かるよ! ってか、そんな迷惑をかけちゃってごめん!」

「ふふ、そんなの気にしないで大丈夫だよ。というか私の方こそ寝ている沢城君の身体をペタペタと何度も触っちゃったから……だからもしも何度も身体を触られて気持ち悪かったり不快に思わせちゃったら本当にごめんなさいね……」

「えっ!? いやいや、そんな事全然思わないよ! 本当にありがとう四条さん!」

「うん、それなら良かった。あ、それじゃあ鍵は返しておくね。はいこれ」

「うん、ありがとう!」


 そう言って俺は四条さんに自宅の鍵を返して貰っていった。


「よし、それじゃあ流石に長居しすぎちゃったし、今日はそろそろ自分の部屋に帰るね。あとは来週の引っ越し祝いのパーティも楽しみにしてるよ!」

「ふふ、そうね! それじゃあ来週は朱音も一緒に三人で楽しみましょうね!」

「うん、わかったよ。それじゃあ今日は紅茶とクッキーありがとう。凄く美味しかったよ。それじゃあまた学校でね」

「うん、こちらこそ。それじゃあまたね……ふふ」


 そう言って俺は四条さん達の部屋から出ていき、そしてそのまま隣の自分の部屋に帰っていった。


―― ガチャッ……


 という事で俺は早速鍵を開けて自分の部屋の中に入ろうとしたんだけど、でもその時……。


「ん? 何かちょっと甘い匂いがするような?」


 でも玄関を入った瞬間、何だかちょっと甘い匂いがふわっと感じた気がした。これはもしかして……香水の匂いかな?


「うーん……って、あ、そうか! そういえば今日は四条さんが俺の部屋の鍵を閉めてくれたんだっけか」


 おそらく四条さんは鍵の施錠の確認のために一度俺の部屋のドアを開けてそのまま中に入ったんだろうな。だから俺の部屋から甘い匂いがふわっと感じたのは、多分四条さんの香水の匂いなんだろうな。


「うん、それじゃあこの甘い匂いについては別に何も不思議な事じゃないよな」


 という事で俺はそう結論付けて何も気にせずリビングに戻ってきた。そしてそのまま俺は大きく欠伸をしていった。


「ふ、ふぁあ……うーん、でも何で今日はこんなに眠いんだろう……? さっきも寝てたはずなのになぁ……」


 何だか今日は眠気が全然止まらない一日だった。さっきも四条さんが言ってたけど、もしかしたら今日は想像以上に疲れちゃってるのかもしれないな……。


「ふぁあ……ふぅ。仕方ない、今日はこのまま一旦寝る事にしようかな……ふぁあ……」


 という事で俺はすぐに寝巻に着替えてそのままベッドの中に入っていった。それにしても何だかわからないけど今日はグッスリと眠れそうだなぁ……。


「ふぅ……それじゃあ……おやすみなさい……すぅ……すぅ……」


 俺はそう一言だけ呟いてからすぐに微睡みの中に落ちていったのであった。


……

……

……


「ふふ、おやすみなさい……沢城君……♡」


【オマケ編 完】

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ノリが悪くてウザいという理由で大学サークルから追放されてしまった。仕方ないので一人で大学生活を謳歌してると元サークルのヤンデレ美人姉妹が俺の家に入り浸るようになっていった話。 tama @siratamak

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