第23話:朝の登校中に四条姉妹と出会う
翌週のとある日の朝。
「んー、今日はまだちょっと疲れてるなぁ……」
俺は腕をグルグルと回しながら大学に向かって歩いていた。実はここ最近は毎日のようにバイトをやっていたんだ。
サークルを辞めて暇になっている今の内にお金を貯めれるだけ貯めておこうと思って単価の高い単発バイトを沢山入れていたんだけど……でも流石にここ最近は働き過ぎてしまったなぁ……。
という事で疲れもだいぶ溜まってきてるし今週はバイトはせずに家でゆっくりと休み感じにしていこう。
「あっ! おはようございます、先輩!」
「あぁ、おはよう、沢城君」
「んー?」
そんな事を考えていると唐突に後ろから声をかけられていった。俺は誰だろうと思いながら後ろを振り返ってみると、そこには四条さんと朱音ちゃんが並んで立っていた。
「あぁ、四条さんと朱音ちゃんか。うん、おはよう。今日は二人で一緒に登校してるんだね」
「えぇ、そうなのよ。今日は久々に朱音が寝坊しなかったから一緒に登校してみたのよ」
「ちょ、ちょっとお姉ちゃん!? 先輩にそんなカッコ悪い事言わないでよね!」
「ふふ、そんな事を沢城君に言われたくないんだったらこれからはちゃんと早起きしなさいよ?」
「えっ!? う、うぅ……そんなぁ……」
四条さんと朱音ちゃんはそんな感じで姉妹仲良くじゃれあっていっていた。
「あはは、そうなんだね。それにしても四条さん達って姉妹仲がすっごく良いよね。それだけ仲が良いのは普通に羨ましいよ」
「ふふ、確かにそうね。私達って凄く仲が良い姉妹よね?」
「うんうん、そうだよね! だって私たちは好きな物も嫌いな物も全部同じだしね!」
「へぇ、好き嫌いまでも同じなんだ? それは凄いね。でもそれだと好きな物が一個しか無い時は大変そうだよね。そういう時は取り合いの喧嘩とかになっちゃうのかな?」
「ううん、そんな事は絶対にしないわよ。ふふ、だって好きなモノが一つしかないときはね……その時は姉妹で仲良く一つのモノを二人で共有しようって子供の頃からずっと決めてるのよ」
「そうそう。だから私達って全然喧嘩とかしないんですよー。好きなモノは二人で仲良く一緒のモノにするし……逆に嫌いなモノがあったら一緒に消しちゃうって決めてるんです!」
「へぇ、そこまで徹底的に好き嫌いを共有しあうってのは本当に凄いね。あれ? でもさ、そもそも四条さん達ってそこまで好きな物って何かあるんだっけ?」
「え? うーん、それはねぇ……ふふ、それは秘密だよ」
「うんうん、そうですよー。流石にそこは乙女の秘密ってやつですよー。だから先輩にはまだちょっと教えられないですねー」
俺がそんな事を聞いていくと四条さん達はあははと笑いながら答えをはぐらかしていった。
まぁ秘密にされるとちょっと気にはなるけど、でもそういう事を聞くのはマナーが悪いと思うから俺は無理に聞くような事にしないようにした。
「あはは、確かに女の子の秘密を聞こうとするのは良くない事だね。それじゃあ違う話をしていこうか。って、あぁ、そうだ。そういえば先週の金曜日に久々にサークルの飲み会があったんだよね? 久々のサークル飲みは楽しかったかな?」
「え……?」
という事で俺も笑みを浮かべながら全く違う話題を振っていく事にした。でも……。
「あ、あぁ、その事ね。えぇっと、実はね……サークルに久住君と鳴海君って男子生徒がいたでしょ? あの二人さ……今停学処分を受けてるのよ。それで最終的には自主退学する事になりそうなの。という事でサークルの飲み会は急遽全部中止になったのよ」
「え……って、えっ!? あの二人が停学処分!? それに自主退学をするかもって……一体何があったの!?」
「うーん、ごめんね、沢城君……今回の詳しい話は大学側から箝口令が出てるから沢城君にも教える事は絶対に出来ないんだ……」
「そ、そうなんだ……な、なるほど……」
学校側から箝口令が出るなんてよっぽど酷い事をしなきゃ起きない事だろ……何かヤバイ事件でも起こしたのか?
「う、うーん、流石にそれは気になりすぎるけど……まぁでも大学側から箝口令が出てるって事ならそれは絶対に聞かない方が良い事だよね。うん、わかった。それじゃあこの話もここまでにしておこう」
めっちゃ気になる話ではあったけど、流石にそれは聞く事は憚れそうなので俺は聞かない事にしておいた。
「はい、お心遣い本当にありがとうございます先輩……って、あ、そうだ! それじゃあここからはもっと楽しい話をしましょうよ!」
「うん? 楽しい話って?」
「はい! 実はなんですけど……近い内に私達、先輩の住んでる学生向けアパートに引っ越す事が決まったんです!」
「えっ、そうなの? うん、それは確かに楽しいニュースだね! って、あれ? でもそんなに四条さん達ってそこまで大学から遠くに住んでる訳じゃないよね? それなのにわざわざアパートに引っ越してくるの?」
俺の実家は地方の田舎だから学生向けのアパートに引っ越したけど、でも四条さん達は普通に都内に住んでいるはずだ。
だからわざわざ朱音ちゃんが学生向けのこのアパートにわざわざ引っ越す必要もないと思うんだけどな……?
「はい、確かに実家から大学までは電車で1時間くらいで到着するんですけど、でもこれからはもっと勉強を頑張りたいと思ったので、大学近くのアパートを借りてそこから通いたいって両親に直談判したんです! そうすれば今までの通学時間が全て勉強する時間に出来ますしね!」
「あぁ、なるほど。勉強を頑張りたいなんて凄く立派な理由だね。うん、それじゃあこれからも勉強をしっかりと頑張っていってね!」
「はい、ありがとうございます これからも頑張っていきます!」
朱音ちゃんはこれからは勉強をもっと頑張りたいという気持ちが強くてそんなお願いを両親にしたようだ。まぁ確かに朱音ちゃんって大学の成績も滅茶苦茶に良いんだよな。だからもっと勉強を頑張りたいというその理由にも納得出来た。
「だけど女の子の一人暮らしなんてよくご両親はよく許してくれたね? お父さんとか朱音ちゃんの一人暮らしには反対しなかったの?」
「え? あぁ、いえ……実は先輩の言う通り、最初は両親から女の子の一人暮らしは絶対に認められないって言われちゃったんですよ。それでも何とかお願いをずっと続けたら、学生向けのアパートでお姉ちゃんとルームシェアをするというなら認めるって言ってくれたんです!」
「へぇ、そうなんだ。って、あれ? という事は……もしかして四条さんも一緒にアパートに住む事になったの?」
「えぇ、朱音の勉強を頑張りたいという心意気を買って、私も一緒にルームシェアをする事をオッケーしてあげたのよ。それで学生向けアパートを探していたらちょうど沢城君の隣の部屋が空いたとの事でそこを契約したのよ」
「え? 俺の隣の部屋? あ、そういえば……」
そういえば俺の隣の部屋に住んでいた住人は最近どこかに引越していったから空き部屋になっていた。
それで俺の隣は角部屋になっていて他の部屋よりも少し大きい間取りになっているんだ。まぁその分家賃もちょっとだけ高くはなっているんだけどさ。
まぁだから部屋の大きさ的には姉妹の二人でルームシェアをするには全然問題はないだろう。
(……あれ? でもそういえば前に住んでた人はなんでいきなり引っ越したんだろう?)
今思い出したけど隣に住んでいた生徒ってまだ学部二年生だったはずだ。まだ大学を卒業してないはずなのに……そういえばなんでこんな中途半端なタイミングで引っ越したんだろう?
「……あれ? どうかしましたか? 先輩?」
「ん? どうしたの? 沢城君?」
「えっ? あ、あぁ、いや、何でもないよ」
そんな事を考えていると唐突に四条さん達はキョトンとした表情を浮かべながら俺の事を見てきた。
(……ま、そんなの考えてもわかる事じゃないし気にしないでいいか)
という事で俺はそれ以上前のお隣さんについて考えるのはやめる事にしていった。まぁ家庭の諸事情で実家に帰ったとかそんな所だろうしな。
「でも、四条さん達が引っ越してくるのはとても喜ばしい事だし、これは何かお祝いをしなきゃだね! あ、それじゃあ今度引越してきたらお祝いに二人には何かご飯でも奢ってあげるよ!」
「えっ!? 本当ですか! それは凄く嬉しいです!」
「え、良いの、沢城君? でもそれは沢城君に迷惑なんじゃ……」
「あはは、そんなの全然迷惑なんかじゃないよ! だって二人とも俺にとっては大切な友達なんだしさ、だから俺にご飯を御馳走させてよ!」
「先輩……」
「沢城君……」
俺が笑いながらそう言っていくと四条さんも朱音ちゃんも何だかトロンとしたような目で俺の事をジっと見つめてきた。あれ、何か変な事を言ったかな?
「……? まぁいいか。それじゃあ何か二人が食べたい物とかある? 食べたい料理とかあれば事前に美味しそうなお店とか調べておくよ!」
「うーん、そうねぇ……食べたい物かぁ……」
「あ! はいはい! それじゃあ私……先輩の手料理が食べたいです!」
「え? 俺の手料理?」
「あぁ、なるほど! それは良い考えね! うん、沢城君の料理って凄く美味しいものね!」
「うんうん、お姉ちゃんもそう思うよね! いつもバーベキューの時に色々と美味しい物を作ってくれるもんね!」
唐突に朱音ちゃんは俺の手料理を食べたいと言ってきた。そして四条さんも嬉しそうな顔をしながらそれに同調してきた。
「い、いや、そう言ってくれるのは凄く嬉しいんだけど……でも手料理を振舞う場所がないからなぁ……」
「あはは、そんなの丁度良い場所があるじゃないのよ。私と朱音の部屋を自由に使ってよ!」
「うんうん、そうですよー! 丁度私達が先輩の隣の部屋に引っ越してくるんですから、もう沢山自由に使っちゃってくださいよー!」
「え? い、いやでも……うーん、流石に女の子の部屋に男が入り込むのはマズイと思うんだけどなぁ……」
「いやいや、それは大丈夫でしょ。だって前にも沢城君はそんな事を言ってたけどさ……でもあれって男女が一対一で密室の空間にいるのがマズイって話だったよね? でも今回はあの時と状況は全然違うでしょ?」
「え? あー、まぁそれは確かに?」
「ね? そうでしょ? だから沢城君の懸念するような事は何もないわよ。だって私達は姉妹で暮らすんだから、絶対に男女が一対一になるような状態にはならないわよ。それなら沢城君が危惧してるようなマズイ事態にはならないでしょ?」
「な、なるほど……うん、まぁそれは確かに四条さんの言う通りかもしれないね」
四条さんにそんな事を言われて俺はちょっとだけ納得していってしまった。まぁ確かに男女が二人きりになるような空間じゃなければ大丈夫なのかな?
「うん、わかったよ。それじゃあ引っ越し祝いは四条さん達の部屋で手料理を振舞わせて貰う事にするね。あ、でも流石に他人の部屋のキッチンを使って料理をするのはちょっと憚れるから、料理自体は自分の部屋でするよ。それで完成した料理を四条さん達の部屋に届けに行くって感じでも良いかな?」
「はい、それで全然問題無いです! むしろまだ私達の部屋の台所は何も調理器具とか揃ってないのでそっちの方がありがたいです!」
「うん、了解だよ。それじゃあそんな感じで引っ越しの祝いをしていこうか。あ、ちなみに引越しはいつ頃行う予定なの? もし引越し関係で力仕事とか必要な所があったら何でも手伝うよ!」
「えっ!? 本当に!? うん、それはすっごく助かるよ! それじゃあ引越しの日程とか詳細が決まったら改めてLIMEで教えるね!」
「わかった! それじゃあ早めに日程を教えてくれればバイトとか絶対に入れないようにするから、詳細が分かり次第教えてね」
「えぇ、わかったわ。それじゃあ引越しについてもお手伝いよろしくね。あとはもちろん三人で楽しく引越し祝いのパーティも楽しみましょうね!」
「うん、そうだね! あはは、今からすっごく楽しみだなぁー!」
「うんうん、俺もすっごく楽しみにしてるよー! それじゃあLIMEで詳細を教えてくれるのを待ってるね!」
「うん、わかったわ」
「はい、わかりました!」
という事で今後は四条さん達の引っ越しのお手伝いと引越し祝いのパーティをする事が決まっていった。はは、四条さん達とのパーティは楽しみだよなー。
「「ふふ……」」
「ん? どうかしたの? 二人とも?」
その時、ふと四条さん達が何やら含みのある笑みを浮かべていた。何だかそれがいつもと違う笑みに見えたので、俺はキョトンとしながら二人にそう尋ねてみた。でも……。
「え? ううん、何でもないよ、沢城君?」
「はい、何でもないですよ、先輩?」
「え? そうなの? ま、まぁ、それなら別に良いんだけど」
でも四条さんも朱音ちゃんも息を合わせたように何でもないと言ってきた。まぁ二人がそう言うなら別に気にしないでもいいかな。
(よし、それじゃあ気を取り直して……今度の引越し祝いのための美味しいメニューを今の内から考えていかないとだな!)
という事で俺は気を取り直して四条さん達のために美味しい手料理を作っていこうと心の中で決めていった。
そしてそれからはいつも通り俺達は三人で仲良く会話をしていきながら、俺達の通う大学に向かって歩いていったのであった。
……
……
……
「ふふ、もう離さないわよ、沢城君……」
「ふふ、もう逃がしませんよ、先輩……」
【第一部:完】
―――――――――
・あとがき
ここまで読んで頂きありがとうございました!
当初の予定通り久住達へのざまぁ展開が終わったので、本編に関しては一旦これにて終わりにしようと思います。
想像よりも沢山の読者様に読まれていたので、これ以降も続けていこうかなと思って第二部の話も考えていってたんですけど……でもここからの展開を考えていくと絶対にノクターンノベルズ(エロ完全OKの小説サイト)でしか書けない内容になってしまうので今回はここまでで一旦止めておこうという決断となりました。
中途半端にエロ描写をほぼ無しにした健全verで第二章をスタートさせちゃうと、どうしてもヤンデレ姉妹の行動とか心理的描写がチグハグになっちゃう気がしたので、それならいつかエロ描写をしっかりと書けるようになってからノクターンノベルズでエロ描写有りの第二章を書きたいなって思ったりしています。でもエロ描写って書くの滅茶苦茶に難しいからなぁ……。
それでも毎日小説を書き続けて実力を少しでも伸ばせるよう日々精進していきますので、これからも応援の程よろしくお願いします!
という事で本作品の総括は以上となります。
ここまで読んでくださって本当にありがとうございました!
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