静謐の池。潔し紅き椿か、首一つ

静謐を湛える池の滸に、紅椿の花が
一つ、ふたつ、次から次へと散る様は
くるくると天手古舞って水の中へと落ちて
行く。恰も見事な 打首 の如く、視線を
外した一瞬のこと。

潔し、紅き椿は独り池へと落ちて行く。
道連れも同情も要らぬ、来てはならぬと。

翠色の水の下には、善からぬ何かが息を
潜める。只その 予感 だけが幾重にも
波紋となって広がってゆく。
 
恨んでいるのか、それとも警告なのか。

せめてもう一度だけでも顔が見たい、その
想いすらも一刀両断に。 


静謐の池に、紅椿。