冒頭を変えてみました

※公募用に変更した冒頭約1000文字のみを載せます。すみませんが、何か変じゃね?みたいなところがあったらご指摘いただけないでしょうか。

※三人称から愛美一人称に変更してあります。


 明日になんか、ならなければいいのに。

 明日になったら体が成長してしまっているかもしれない。ママはあたしの体が大きくなると嫌がるから。

 明日になったら学校に行かなければならない。学校では給食が出るけれど、一食と引き換えにみんなに見下されなければならない。

 明日になったら生理が来るかもしれない。生理になったら、片道徒歩二十分かかる役所の出張所にもらいに行かなければならない。保健室でももらえるけれど、保健の先生も担任の先生と同じようにあたしをかわいそうにという目付きで見る。「妹さんも連れてきたら?」なんて、よけいなお世話。きっと制服が臭うから何か察知されて……ううん、前にママが職員室で怒鳴ったからかもしれない。

 明日なんか、来ないでほしい。


 こども食堂でよく出てくる野菜炒めには、肉が入っていない。あたしはそれを無表情で口に入れ、咀嚼する。とにかく何かしら食べないといけないと、食堂のパイプ椅子に座るといつも思う。生きるために食べないといけないと。

「今日はデザート付きだよ」

 食堂のオーナーの中年女性が、腹の肉を揺らしながら大きなトレイを運んでくる。脂身が多そう、まあ何の肉でもいいんだけど、という穏やかではない考えが浮かんだ。

「ありがと」

 隣の席に座る妹の麻里衣まりいは、ほんの少しだけ改まった笑顔を作って受け取っている。あたしもそれにならって紺色のプラスチックの容器を受け取り、再び箸を手に取った。

 とろりとした透明の液体に包まれた丸い黄桃は切り口を下にして盛られている。いつ見てもただの丸い物体にしか見えない。こども食堂で教わった箸使いを駆使し、黄桃の真ん中に箸を刺す。そのまま箸を動かして半分に切ると、透明の液体がぎざぎざの断面を滑り降りていくのが目に映った。

「お姉ちゃん、何だか怖い顔してる」

「そんなことないよ」

 麻里衣に指摘され、慌てて表情を和らげる。麻里衣は守っていかないといけない、汚い人間から――そう思うと、自然と気合が入る。

 通っている中学校はつまらない場所だ。クリーニングに出すこともなくずっと着続けている制服のせいで、友達もできないのだから。

「麻里衣」

「ん?」

 トーンを落として、麻里衣に声をかける。

「一緒に逃げよう、ここから」

「……うん」

 思っていたより素直に、麻里衣はうなずいた。

「もう家には戻れないかもしれないよ。……いいの?」

「うん、お姉ちゃんと一緒にいたいから」

「……わかった」

 普段はあまり表情を動かさない麻里衣が見せた深い笑みは、あたし以外誰も見ていないみたいだった。


※このあと家出シーンになります。お読みいただきありがとうございました。ご意見お待ちいたしております。

※恐れ入りますが、このエピソードは一週間以内に非表示にする予定です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

穢月祓 ―ミナツキハラエ― 祐里 @yukie_miumiu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ