第14話 王家からの手紙

8月に入った。ニックはワインの販売に向けて準備作業を行うために商会事務所に向かうところであった。しかし、セシルに呼び止められて。


「ニック様、リット様がお呼びです。」


「父様が?なんだろう...」


「どうやら王家より手紙が届いたようでそのことかと」


「なるほど...ついに届いたのか...」


王家からの手紙。教会から報告が上がったのであろう。

ニックが上位スキルを二つも授かったと...


ニックは急いで執務室へと向かった。


「父様、失礼します。手紙が届いたと聞きました。」


「あぁ、届いたよ。」


「中にはなんと?」


「王都に来る予定がある場合、一度必ず顔を見せるようにと書かれていた。」


「えっ!それだけですか?今すぐ来いとかではなく...」


「あぁ、どうやらそのようだ。」


リットも拍子抜けだ。

もしかしたらまだ子供ということもあり、一定の配慮があったのかもしれない。


「ニック、いつでもよいと言われても相手は王家だ。早めに行かなければならない」


「そうですね...近々王都に行く予定はありますか?」


「そうだな、今月末。8月25日に晩餐会が王家主催で開かれる。ちょうど招待されているからこの日にお目通りしよう。」


「わかりました。そうしたら、近日中にローザワインの販売を始めたほうがよさそうですね。」


「ん?何か狙いがあるのか?」


「はい、早めに発売、販路を拡大しておいて、晩餐会でローザ家からとして貴族たちにワインを振舞います。もしここで話題となればローザ商会の名前がさらに広まりますし、王家にも認知されます。」


ニックはこの晩餐会を最大限利用することにした。


「なるほど、ニックはかなりやり手だな。ローザ商会を任せてよかったと改めて思うよ。」

リットは感心する。


「まずは、ローザワインを15日全国一斉販売できるようにします。」


「しかし、ニック。ローザ商会はトランプで大ヒットしたが、まだ小規模商会だ。常設店舗もローザのみ。全国でというのはまだ無理があるのではないか?まずはローザと王都で...」


リットの指摘は的確である。ローザ商会には常設店舗がシムにある本店のみである。トランプの時は全国で露店を出して対応した。売り上げこそあげられたが、負担も大きかった。


「父様その通りです。ですがここも対応策を考えています。まずは父様の言う通り、ローザの本店と王都に新たに作る店舗でローザ商会として販売します。」


「ん?ローザ商会として?どういうことだ?」


リットは疑問に思う。


「ローザワインを他の商会、商店で販売してもらうんですよ。」


「なんと!!」


リットは衝撃を受ける。この世界では前世と違い一つの商品をいくつもの商店商会が販売するのではなく、それぞれの商会・商店がそれぞれの商品を扱っているからだ。他店のものを自分のところで扱うなどありえない。


「しかし、それはむずかしいのではないか...」


「そうは思いません。まずは大手の商会にローザワインの試飲をしてもらいます。そうすればローザワインに必ず食いつくはずです。父様も味はご存じのはず。」


「あぁ、味は間違いない。なるほど、リックはすごい発想をするな...」


「大手商会で販売する。つまりローザ商会としては安定した利益を上げられることにもつながります。まずはセシルに大手の商会をいくつか行ってもらって提案をしてもらおうと思います。」


「うむ、任せた」


こうして、ローザ商会は新たな一歩を踏み出した。


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異世界で商売?革命?〜貴族だけど! Nami @namisan1217

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