最終話:さらば、二人の勇士よ! 再び会う時まで
「役目を終えし者たち、次なる世界へ」
「これは一つの終わりであり、また一つの始まりである」
【平和、そして別れの時】
日下敏夫、富嶽武夫。
二人の英雄の名は、日本全土及び全世界に轟いた。
だが――彼らの視線は、すでに次の並行世界を見据えていた。
東京・皇居前、白銀の早朝。
“高天原要塞”からの密使が、彼らの元を訪れる。
【天照大神の言葉、再び】
「日下敏夫、富嶽武夫! 汝らの任務、ここに成就せり。神州は再び光を得た。されど、世界は無限に広がり、捻じれた歴史はなお果てしなく存在する。次なる世界が、汝らを待つが今、暫し激闘による心身の休みを高天原要塞にて過ごすがいい」
【“並行世界遷移”の儀式】
かつて“さがみ”によって運ばれた“次元転移核”が再起動される。
伊400と雪風、並ぶことなく、それぞれの海へと滑り出す。
――静かな朝焼け。
東京湾を見下ろす丘に、二人の艦長が並んで立っていた。
『絆と友情、そして別れ』
沈黙が少し続いたあと、富嶽が口を開く。
「……日下艦長、行くのですね?」
にやりと笑いながら日下は、少しだけ笑みを浮かべたまま、帽子を指で整える。
「……そうだな、俺たちは無数の並行世界の日本を救う使命を帯びているのだ。目的を達せば次へ行く、それだけだ」
風が吹く。
荒れ果てたこの地にも、ようやく穏やかな春の匂いが戻ってきていた。
「……富嶽艦長、本当に君がいてくれたおかげで俺は途中で折れなく此処までこれた。礼を言う」
「い、いえ! こちらこそ日下艦長がいなければ“雪風”は嵐に沈んでた」
「ふっ」
日下は拳を軽く突き出す
富嶽はそれを、迷いなく拳で受け止めた。ごつん。
それは、戦友の証だった。
「お前は次元を超えても“雪風”を守れ。俺はまた海の底から始める」
「はい、日下艦長! いつかまた、どこかの時空で会いましょう」
「……ああ。必ずだ。これは別れではない! 再び会うまでの旅立ちなのだ、富嶽艦長、君のことは忘れない」
最後の敬礼は、儀礼ではなかった。
魂からの敬意だった。
「それでは日下艦長! 壮健で」
「ああ、達者でな! 富嶽艦長」
日下は伊400のハッチから艦内に入り、富嶽は雪風のブリッジに入り間もなく灯がともる。
それぞれの艦が、別の次元への航路に向かって、静かに動き出す。
そして、二人の姿は霧の中へ――
だがその“絆”だけは、時空を越えて決して消えることはなかった。
「きっと、また会える。たとえこの並行世界のどこであろうと」
別れ際、日下が小さく笑って言った。
「また、どこかの海で会おう! 富嶽艦長」
富嶽は静かにうなずき、帽子のつばを少しだけ上げた。
「並行世界がどれだけ歪もうとも……正すのが俺たちの仕事だ」
【神々の記録に刻まれる名】
天照大神の“記録の巻物”に、二人の名が並ぶ――
日下敏夫
【海を統べる者、神命を背負いし“深淵の狼”】
富嶽武夫
【空と雷を切り裂く“疾風の刃”】
「いざ往かん、無限の並行世界へ」
「神州の魂を、次なる時空へ届けるために!」
次元の彼方へ、艦影は消える。
水平線の彼方。
再びその姿を見ることは、誰にもできない。
だが、人々は信じている。
いつかまた、危機が訪れた時――
あの艦影が、霧の向こうから現れると――。
完
大東亜戦争に敗北して分断統治された日本国を救え! 時空戦士、集合せよ @vizantin1453
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