最終話 一緒に寝よ?
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――タンタンタン……
アパートの廊下に二人分の足音が響く。
――ガチャ
「はーただいま我が家! あー疲れたー」
俺とリルアはドラッグストアでの買い物を終えて帰って来た。
「リルアも疲れたー。ねぇクウガ、一緒に寝よ?」
「なんでそうなるんだよ」
「リルアがクウガと一緒に寝たいから。ダメか?」
「……ダメ」
まったく。リルアの好意もどこまで本気なのか分からない。おおよそ俺が思うような恋愛的な好きではきっとなくて、俺が惚れたら『そんなつもりじゃなかった』とか言われて振られるんだから。
「えー。リルア悲しい。クウガと寝たかった」
なのに『俺と寝たかった』とか、聞く人によれば意味深な言い方。これだから宇宙人は。
とはいえ、なんだか今日はやけに疲れた。身体が鉛の様だ。
……ああ、思えば今日は朝からいろいろなことがあった。それに帰りにリルアとキスしてエネルギーを分けてやったからなおさらか。
見ればリルアはもううとうとし始めていて、床に座った状態でこっくりこっくりと舟漕ぎを始めている。
「おい、リルア。寝るなら布団で寝ろ。風邪ひくぞ」
「んー? リルア寝てない。クウガ一緒に寝てくれないから」
「なんだよそれ。……とはいえ。俺も疲れた。もうこのまま雑魚寝するか」
なんだかすべてが面倒くさくなって、俺はごろんとそのまま床に寝転んだ。
するとリルアもコロンと寝転んで、俺の腕の中にすっぽりと収まってきた。
リルアの身体は小さくて、柔らかくて、ひんやりとしていて、気持ちいい。
「ん、クウガのからだ、おっきくて、あったかくて、きもちい……」
リルアはもう寝ぼけた様な声でそう言うと、俺に抱き着いたまま寝息を立て始めてしまった。
なんだよ、リルアのやつ。幸せそうな寝顔して……。こんなの起こせないじゃないか。
そしたらなんかもう、俺まで眠さが極限に達してきて。何より俺に抱き着くリルアの身体はひんやりしていて気持ちが良くて。俺もそのままリルアを抱きしめて眠りに落ちてしまった。
――しばらく寝た後、まだ寝ぼける意識の外側で、うっすらとリルアの声がした。
「あ、リルアさっきクウガとちゅーした時、もらいすぎちゃったかも。少し返す」
そして俺の唇にふにゃっと柔らかい感触がしたと同時に、また俺の心臓が勝手に脈を打ち始めた。
あーあ。やっぱりリルアにとってのキスは、ただのエネルギーの受け渡しでしかなくて、ドキドキするのは俺だけなんだから。
起きたらちゃんと距離を保ってリルアの好きって言葉は真に受けないようにしよう。そう思った時。
「……リルア。やっぱりクウガとちゅーしたらドキドキする気がする。気のせいかなぁ。確かめちゃお」
また。俺の唇に柔らかい感触がした後。
「……やっぱり、リルア、クウガのこと好きだ」
恥ずかしそうな声を押し隠すように、リルアは俺の胸に自分の顔を押し付けながら抱き着いた。
無理だろ。寝てる間にこんな可愛い子に2回もキスされて。
こんな恥ずかしそうに抱きつかれて好きとか言われて。
……でも、これで俺が好きだと自覚してから振られたら、それこそ俺が立ち直れなくなるだろ。もう失恋はこりごりなんだ。
そう思うと、ふと、俺の頭に ある考えが過った。
――そうだ。リルアをもっと俺が安心できるくらいまで惚れさせたらいいんじゃないか。
ならばどうすれば……。そんな己惚れた事を考え始めた時。
「リルアばっかり好きなのやだ。早くリルアに惚れろ、クウガのバカ!」
リルアはそう言いながらぎゅーっと俺に抱き着いてきたから、俺とリルアの胸が重なる部分から伝わる鼓動は、リルアか俺の、どちらのものなのか分からなくなった。
ただ、現時点で確かな事は。
――リルアはたまらなく可愛くて、好きだと言われて悪い気はしない。
そして――、まだ、ここに居て欲しいと思ってしまっている俺がいる。
そしてこの日。
クウガに惚れて欲しいリルアと、リルアにもっと惚れて欲しいクウガの、静かな惚れさせ合戦が、幕を開けたのだった。
失恋したら、宇宙レベルに可愛い美少女を拾ってメロメロに懐かれた。
(完)
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最後まで読んでくださりありがとうございました!!
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次回作はさらに楽しんでもらえるように書きたいと思いますので
その時はまたご縁がありましたら嬉しく思います。
そして、過去作たくさんありますので、よろしければそちらもお楽しみいただけたら嬉しいです(コレクションにおススメ順でまとめています。総合ランキング入り作品複数感謝!!)
空豆 空(そらまめ くう)
失恋したら、宇宙レベルに可愛い美少女を拾ってメロメロに懐かれた。 空豆 空(そらまめくう) @soramamekuu0711
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