第14話 リルアと手を繋ぎながら……
「ところでリルア、武器は手に入ったの?」
うまく話をまとめられてしまったまま、ラルカがリルアに別の話題を投げかけた。
「え? ああ、手に入ったぞ! これだ。すごいだろ? 敵に向けてここを押すと煙みたいなのが出てくる。それはとても臭いから注意だ」
そしてリルアはいつの間にか持って来ていた殺虫剤をラルカに見せて説明している。
「そう。臭いのは気になるけど……武器が手に入ったならさっさと持ち帰って研究機関に渡したいところね。けど……困ったわ。リルアのメロメロナルル号も私のカキクエバ号も壊れてしまったし……今あるのは予備で持ってきた、この、イチジシノグー号だけ……」
するとラルカは、俺から見れば果物のイチジクでしかないものをどこからか取り出してそんな事を言っている。
まさかあれも宇宙船だと言うのか。
「それならラルカが持って帰ればいい。リルアはまだチキューに残りたい」
「え、いいの? それは助かるわ。私、今日は見たい配信があるから急いで帰りたいのよ」
「うんうん。それならラルカ、急いで帰っていいよ」
「じゃあ、リルアの無事も確認できたし、私帰るわね。急がなきゃアイドル戦隊イケメンジャーの配信始まっちゃうもの。カキクエバ号の中なら配信キクことは出来たのに、イチジシノグー号は
「うん!!」
そんな会話の後ラルカは殺虫剤をリルアから受け取ると、足早に元の小さなサイズに戻ってイチジク型宇宙船に乗り込み俺たちに手を振りながら飛び立った。
そんなラルカの姿を見送った後、なんとなく『ふう』とため息を吐いて一息ついた時。リルアがそっと俺の顔を伺いながら不安そうに聞いてきた。
「なぁクウガ。……クウガはリルアと結婚するの、イヤか?」
俺はその表情に、嫌だなんてとても言えなくて。
「……だってまだ知り合ったばかりじゃん」
それしか言えなくて。するとリルアは。
「そっか。じゃあ、これから知り合い続けよ?」
おかしな日本語を言ってきた。
「……まぁ、とりあえず今日はリルアは元の星に帰れないしな。ひとまず虫よけ買いに行くか」
「うん!!」
俺の言葉に、リルアは嬉しそうに返事した。
リルアに初めて会った時、威圧的で無茶苦茶なやつだと思ったけど、悪いやつではないんだろうなと思う。……見た目はめちゃくちゃ可愛いし。
◇
そしてリルアとドラッグストアに向かって歩いていると、そーっとリルアが手を繋いできた。『え?』と思ってリルアの顔を見ると、少し不安そうな顔をしていて。
「クウガと離れたら、リルア行くとこない。リルアの人生が終わってしまう」
そんな事を言い出した。考えてみればそうかと思う。他の星からやってきて、俺の他に知り合いもいなくて。地球の事は何もかも分からないはず。そう思うと手を振りほどく気にもならなくて、俺はそのままリルアと手を繋いでいた。
その手は小さくて、ひんやりしていて、か弱く感じる。
「なぁ、リルア? リルアはなんで地球に来ようと思ったの」
「……それは、武器を手に入れるため」
「じゃあ、なんでそれがリルアだったの? お前、怖がりじゃん。他の人に頼めばよかったのに」
気になって聞いてみた。
こんな、泣くしわめくしすぐ不安がる女の子じゃなくてもよかったはずだと思う。
「……リルアが、お姉ちゃんだから。リルアの方がお姉ちゃんなのに、ラルカの方が大人っぽくてしっかりしてて頼りになるから。リルアだって、出来るもんって示したかった」
「……そっか」
言われてみれば、ラルカの方が随分落ち着いていて大人っぽいなと思った。
「……でも、いざチキューに来てみたらうまく着陸出来なくて。服がアンテナに引っかかって降りられなくて。怖くて、不安で、でも、知らないチキュー人に話しかけるの怖くて。リルアずっとあそこにぶら下がってた」
「……そうなの? 他にも通りかかった人いたんだ」
「うん。クウガ二人目だった」
「意外と少ないな!」
「うん。でも、こいつだ! って思った。だからリルア頑張った。めちゃめちゃピコット撃ちまくってやっと当たった」
……そういえば、『やっと当たった』って言ってたっけと思う。
「なんで『こいつだ』って思ったの?」
「それはリルアの勘だ」
「……そっか」
でもまあ確かに。変なやつだったら、助けてくれなかったり、逆に危険が及んだりしたかもしれない。そう思うと、リルアの勘はあながち外れてもいなかったのかもしれない。そんな事を思いながらリルアと手を繋いだまま歩いて行く。
しばらく無言で歩いていると、リルアがチラチラと俺の顔を見ながらまた話掛けて来た。
「……なぁ、クウガ。そろそろリルアと結婚する気になったか?」
なんでだよ、と突っ込みたくなる。
「まだ。俺達まだ知り合ったばかりじゃん」
「むー。じゃあ、リルアの事、好きにはなったか?」
「まーだ。まだ今日のうちは『知り合ったばっか』だろ」
「……そうなのか。じゃあ、このままリルア、クウガと知り合い続けて、いつか絶対惚れさせる……絶対。リルアだけ好きなの、やだ」
その言葉を聞きながら、知り合ったばかりなのに俺の事好きとか本当かよと思う。けれど途中からリルアの声は独り言のように小さくなっていたから、俺はあえて何も言わなかった。
ただ。繋いでいるこの小さな手を解く気にも、ならなかった。
――――――――――――――――――――――
本日18時10分頃完結予定です!!が、
14話と15話の間の話をプロローグに追加しました!
お楽しみいただけたら幸いです。
プロローグ リルアとキスと、お買い物
https://kakuyomu.jp/works/16818093079482137285/episodes/16818093080794246556
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