失恋したら、宇宙レベルに可愛い美少女を拾ってメロメロに懐かれた。

空豆 空(そらまめくう)

プロローグ リルアとキスと、お買い物

「おやおや、クウガくん。今日は珍しく可愛い女の子連れて。まさか、彼女?」


「え、違いますよ」


 俺は今、とんでもなく可愛い美少女と、ふたりでドラッグストアに来ている。

 声を掛けてきたのはこの店の従業員の木村さん。何回か通ううちに親しくなった。


「へー? 彼女じゃないのに手なんか繋いで、お揃いの服なんて着ちゃってるんだ?」


「こ、これは!! もー木村さん、からかわないでくださいよ」


 さすがに恥ずかしくなって繋いでいた手を解くと、手を解かれた彼女は不安そうな顔をした。


 俺の名前は 空閑くうが 碧依あおい。そして彼女の名前はリルア。銀髪に緑の目をした色白な子で、一見外国人かハーフに見えるけど、実は宇宙から来た宇宙人らしい。


「リルア、そんな顔するなって。この店の中にいる限りははぐれる心配はないから。ほら、虫よけ探そう?」


「……うん。……なぁクウガ、これはなんだ?」


 不安そうなリルアに声を掛けると、リルアは店内に陳列されていた棒状のお菓子、プリッチュを指差して聞いて来た。


「ああ、それはプリッチュって言うお菓子。なんだ、食べてみたいのか?」


「うん。リルアこれクウガと食べたい。端っこと端っこを一緒に食べたら真ん中でチューできるやつ。ふふ、リルア知ってる。えらい」


 リルアは得意のドヤ顔をしながら言ってきた。


「……宇宙人のクセに、なんでそんなこと知ってるんだよ。却下」


「えー。リルア、クウガとちゅーしたい」


「だから却下なの! 家帰ったらさっき買ったマシュマロあるから、それ食べよ」


「ああ、クウガとちゅーした時みたいな触感がするやつ!」


「……リルア、もう少し声のトーン落とそうか」


 俺が周りの目を気にしてリルアを促すと、リルアはへへっと笑いながら舌を出しておどけて見せた。


 はぁ……リルアはただでさえ可愛い見た目をしているのに、時々とんでもなく可愛いなと思ってしまう瞬間があるから困る。俺とリルアは今日知り会ったばかりだというのに、思いがけない理由でキスすることになって、そして懐かれてしまった。


「あ! これハダカにして食べるやつ!」


 少し目を離すとリルアは他のお菓子を見ながらそんな事を言っている。リルアは宇宙人のクセに流暢な日本語を話すが、ところどころおかしな日本語だし、いろいろなものの認識も、時々おかしいのだ。


 このまま店内にいてはまた知り合いにあっても面倒な気がする。


「リルアー。ほら、虫よけあったぞ。これ買ってさっさと帰ろ?」


「やったー! ……帰りはクウガと手繋げる?」


「……はいはい。店出たら手繋いでやるから。さっさと帰るぞ」


 木村さんの視線が気になって早く店から出たくなった俺は、リルアに小声でそう答えると、急いで会計を済ませてリルアと共に外に出た。



 するとリルアは店を出た途端にそっと手を繋いできて。


「へへー。クウガの手、おっきい。好き」


 嬉しそうににこにこし始めたから、なんかもう、何も言えなくて。


 くっそ、リルアのやつ。無駄に可愛い。でも、俺、絶対リルアに惚れたりなんてしないんだからな。そう自分に言い聞かせつつ。手を繋ぎながら帰り道を歩いた。




 しばらく歩いていると、リルアの足がだんだん遅くなって来た。


「リルア―? どした?」


「……ちょっと、疲れちゃった。……ちゅーしたら、ダメ?」


 答えるリルアの声は弱々しくて。


「……仕方ないな。少しだけだからな」


 俺は物陰に隠れてそっとリルアとキスをした。


「へへー。クウガのちゅーきもちいい。リルア復活!」


 俺は『はぁ』と静かに溜息を吐きつつ。


 くっそ。リルアの唇、なんでこんなに柔らかいんだよ……と、まだ自分の唇に残る感触を感じつつ思う。


「はいはい。ほら、帰るぞ」


 そして俺はやっぱりリルアと手は繋いだまま、家路を急ぐのだった。

 心臓が、人知れずドクドク脈打っているのに気付かないふりをして。


――――――――――――――――――――――

ここまで読んでくださりありがとうございます。

宇宙から来たちょっと変わった美少女リルアと、リルアに惹かれつつも惚れまいとする主人公クウガの、振り回されつつ甘いドタバタラブコメ、お楽しみいただけましたら幸いです。


そして、少しでも面白いと思っていただけたら、ぜひ★をいただけると

とても励みになります。


では、次のページから、どうぞ本編をお楽しみください。


★7月10日18時10分頃完結予定!

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