kuro.03

 その後虎の姿を見た者はこの街では誰もいなかった。連続放火も途絶えた。噂とともに消えていった。消えたものは次第に忘れ去られていく。人々の記憶から。人々の認識から。都合よく、都合が良いように。忘れておしまい、終わりである。一つの物語にも満たないで、満ちないで、未満で終わる。誰に語られることもなく、な。




 その日も夜がまた来ようとしていた。夜が始まろうとしていた。夜の時間だ。やれやれ、ようやくだぜ。昼間長すぎ。太陽ばかりじゃ、くたびれちまうよ。



 高いところから落ちるようにダイブし、そして足場を蹴って飛んだ。今日もこの街で何かを探すために。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

CH‐U‐KA 外伝 小鳥遊咲季真【タカナシ・サイマ】 @takanashi_saima

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ