ラスト・ホープは闇にくゆる

藤原くう

7月10日未明に発見された変死体についての追記

 先日検死解剖した遺体について、新たに判明したことを報告いたします。






 先の報告書に記載した通り、死亡の直接的な原因は「大量のタバコを飲みこんだことによるニコチン中毒」で間違いないかと思われます。


 しかし、同時に奇妙な物質が見受けられたことも、やはり事実のようです。胃から発見された黒い粘々した物体はタールかとも思われましたが、研究所によると未知なる物質のようなのです。


 私どもでも検査を行いましたが、一切不明。これに関しては、遺体が食したと思われる手巻きタバコを、ミスカトニック大学のピッグマン原子力研究所に送っていますので、その報告待ちとなるでしょう。


 その物質が死に至らしめた――それどころか、肉体を変容させたという可能性すらあります。頭から突き出したツノらしき物体、後ろに曲がる膝、足の指は足袋を履いているかのようになっている……まるでヤギのようです。


 調査によれば、彼女は野球部のマネージャーとして人気を集めていたそうですから、先天的なものではないでしょう。となれば、後天的にそのような性質を獲得したとしか考えられません。




 また警察の方々が関心を向けられていた、遺体に遺る複数の噛み傷ですが、ヒトの歯型と一致しました。

 ですが、これまた奇妙なことに、大小さまざまなのです。老若男女、多くの人間が遺体へ噛みついた……素直に受け止めるのであれば、そういうことになるかと思われます。

 残されていた唾液は、すべて別人のものであるという事実もその裏付けとなることでしょう。


 唾液のDNAという点においては、そのすべてが現在にいたるまで行方が分からなくなっている人間のものである、というのは特筆すべき部分かと思われます。


 さらに付け加えるならば、そのDNAたちは、遺体の右手から検出された血液のDNAとも違うということでしょうか。

 もちろん遺体のDNAとも一致いたしませんでしたので、重要参考人物のものという可能性はありますが、今のところは断定はできません。






 新たに判明したことは以上です。進展があり次第、また報告します。


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