6.序章を読み終えて…

星を操る人たちの序章を読み終えたエリサは

「ふぅー」と大きめのため息を付いた。


「とりあえず序章はここまで。私の小説どうだった?」


アルフは思わず、スタンディングオーべーションした。座っていた椅子から立ち上がり、拍手喝采。でも病室なので少し小さめの音で拍手した。


「すごい!すごくいい!控えめに言っても最高!何か続きが読みたくて仕方なくなったよ!」


「ホント!?良かったぁ。変な小説かな?って自分では思ってたから、そんな風に言って貰えて良かったよぉ」


話し足りなかったのか、アルフは立て続けに話をし出した。


「でも凄くびっくりしたよ。」


「えっ…?どういう所が…?」


「うん。なんと言うか…まさかエリサがこういう感じの物語を書くとは思っていなかったというか…言葉にするのは難しいんだけどね。」


自分を想いを伝えようとしたが、思う様な言葉が出てこない。しばらく沈黙が続いたが、アルフの考えは少しまとまったようだった。


「正直、びっくりした。今まで読んだ小説とは違う。今までにない新しい感じの内容だったから。これは褒めてるんだよ。だから、本当に素晴らしいと思ったんだ。」


アルフは少々、動揺しながらもエリサの顔を真剣に見つめていた。エリサもアルフに目配せしながら、照れたような表情でニヤリと微笑み返した。


「アルフ、ありがとう。初めて自分の小説を人に読んでもらったけれど、その初めてがアルフで良かったって本当に思ってる。」


エリサは少し俯き加減になりながら、口を手で覆うようにして何回か咳き込んだ。


「エリサ、大丈夫か?今日は少し無理をさせてしまったのかもしれないね。小説はまた次回までのお楽しみにして、今はゆっくり休んで。」


咳が治まった所で苦しそうな口調でエリサはゆっくり話始めた。


「ごめんね。こんなはずじゃなかったのに、何故か咳が出てしまって。もうすぐ採血の時間だから、それまではゆっくり休むね。」


アルフは病室に用意してあるミネラルウォーターを持ってきて、グラスに注ぎエリサに差し出した。


「うん。それがいちばん良いと思う。今日は小説を読んでくれてありがとうね。また続きを楽しみにしてるよ。」

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星を操るものたち〜彼女の書く物語〜 柴田 祐佳 Shibata Yuka @yuka0123

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